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天然能力者の受難  作者: 岸辺 轍@中二病
天然能力者の受難
19/19

ランク試験に向けて!Ⅲ

ゆっくり更新。

暇つぶし程度に見てください.


 「な、なんだったんだろう…あの大きな音は…?」


 壁一面がガラス張りになっているロビーから外を確認するが、空は曇り一つない快晴。とても雷が鳴るような天気模様ではないことを確認した修一はさっきの轟音は一体なんだったんだろうと深刻な顔をして考えているとホテルの正面玄関から一団が入ってくるのか見えた。


 その一団はスーツ姿の大人を数名が真ん中に陣取る鮮やかな青色のドレスに身を包んだ長い黒髪を揺らしながら歩く少女と紺色のスーツに茶髪の如何にも好青年の二人を護衛するように歩いている。

 だが、誰から見ても、その少女の様相はまさに不機嫌そのものであった。


 「何なのよ、もう! あの馬鹿な連中は! 気分が悪いったらありゃしない! 時と場所とを弁えなさいよ! こんな日にお見合い話を持ってくるなんて……まったく、非常識な奴ら!」


 その独り言のような少女の言葉を隣で聞きながら歩く好青年が呆れた表情で淡々と応える。


 「だからと言って、いきなり張り倒すのはおやめください。確かに先ほどは古原(こばらし)秀雄(ひでお)様が先に無礼を働きましたが……何と言いますか、もう少し穏便に済ませてくれませんかね?(主に後処理がとても大変なものでして…(汗)ボソッ)」 


 「そんなこと言われてもね! 何度も何度も断りを入れているのにしつこく言い寄ってくるあの男が悪いのよ!」


 「だからといって張り倒すのはやめてください。その他大勢の方々に迷惑が掛かります。それにうちの従者も数名、()をやられて病院に運ばれてしまったんですから」


「それはアレよ……そう、仕方ないのよ! ……もう面倒くさいのよ。そうでもしなければ、いつまでもしつこく言い寄ってくるし! 大体、前の見合いの相手は何よ! 大した能力も力も無いくせに自信過剰、プライドばかり高くて」


 「あのお方の性格は兎も角……家柄も能力も申し分ないお方でしたよ?」


 「やたら弱かったじゃない! 貼り手一発で伸びちゃったわよ!」


 「お嬢様が()()()るんです。少しは自重してください。 それと近寄ってくる男性の方を片っ端から張り倒すのは止めてください。柊家の長女としてもう少しお淑やかにお願いします。」 


 「わ、分かっているわよ! それに、ちょっとそこあなた! さっきからジロジロと見て失礼よ! 何か言いたいことがあるのなら言いなさいよ!」


 大きな声で話している少女を見ていた修一は、突然矛先がこっちに向いたことに吃驚して急いで頭を下げて謝った。


 「ご、ごめんなさい。何もないです…」


 不機嫌そうな表情を除けば、黒髪で純和風といった面持ちの少女。怒っている姿でさえ見惚れてしまうほど印象的な雰囲気を醸し出す可愛らしい少女だった。

 僕の頭を下げてる横を「ふんっ!」と言って、その少女がずかずかと通り過ぎていく。ちょっと怖い。

 

 (めっちゃくちゃ怖ぇ……‼ 夏樹のキレた時より怖いんじゃないか?)


 修一は通り過ぎていく一団を少しビビりながら見送っていると、先ほど少女と応答していた青年が僕に話しかけてきた。


 「大変、失礼しました。どうかお嬢様を悪く思わないでいて下さると嬉しいです」


 そう言いながら頭を下げる青年――神林長戸は一礼した後、修一と目を合わせる。


 「ところで貴方は、能力者……と、お見受けしますが…もしかして明日から開催される試験を受けに来られたのですか?」


 「あ、はい。そうですけど……どうして能力者だと分かったのですか?」


 「いや……無粋な事だと重々承知していますけど、内から僅かに漂う霊力に反応しまして、そう思いました。とても上手に隠されててビックリしましたよ。霊力の操作がとても上手なんですね」


 「はぁ…あ、ありがとうございます?」


 「それほどまでに見事な霊力操作を行えるという事はどこか高名な御家出身とお見受けします。失礼ですが、お名前を教えていただけないでしょうか? 私は柊家に連なる御三家の神林家嫡男の長戸と言います」


 「あ、鬼瓦修一と申します」


 僕が自分の名前を言うと長戸さんが考えるような仕草を始めた。


 「鬼瓦…? 能力者の家系にそのような名がありましたかな? ……いや、どこかで聞いたことあるような……おに、瓦…?」


 長戸さんが目の前でブツブツ言いながら悩んでいるとフロントから「早く来なさい! 長戸!」と怒号が聞こえてくる。


 「あ、これは失礼しました。では後程、試験の会場でお会いできることを楽しみにしています」


 軽い会釈をして、長戸と名乗った従者はフレントへと駆け足で向かっていった。

 それを見送りつつ、修一は自分が能力者、それも有名な能力者の家柄出身と間違えられているかもしれないと思い、試験会場で会わない様に気を付けようと思ったのだった。あった時は正直に話そうとも。


 その後、修一はコンビニでサンドイッチを買った後、始めて訪れる東京という大都市に胸を躍らせ、ちょっとくらい観光して帰ろうかと思い、近くにあった繁華街を巡りながら夕食までの時間を潰したのだった。






 ※※※



 ―—最上階〝桜間〟



 一階層全てのフロアが使われている当ホテル最大の客室。他の階層の客室とは違って完全に富裕層専用の客室としてデザイン、設計された部屋である。


 その一室にて、和服に身を包んだ伍大羅(ごだいら)姜十郎(きょうじゅうろう)が手元に置かれた資料持って唸っていた。彼こそが世界能力者管理協会から任命された日本支部の支部長その人である。


 御年七十を超え、肉体的にも精神的にも衰えを感じさせる年齢でありながらも、ちっとも衰えも感じさせぬ仕事っぷりに「鬼十郎」と陰で揶揄されるほど働き盛りな老人である。本人曰く「現場で働く体力はもう無いわい!」と言って事務業務をこなしているが、その仕事量は他の事務員を軽く凌駕するほどの量を一人でこなしている。


 左手で資料を読みながら右手でパソコンに向かう。各地から送られてくる報告書の確認や決済、緊急を要する事項の調査への依頼書発行や活動中の能力者の把握する等と多種多様な仕事を同時並行に進めている。助手の手を借りながらも最終確認は全て姜十郎の仕事であり、記載漏れや報告漏れが無いように姜十郎は最終的全ての仕事を一人でこなしているのである。


 明日から開催される予定の新人試験も彼の仕事の一環であり、姜十郎はより一層の多忙を極めていた。



 「今年は中々の粒ぞろいだと思うんだがな……そうは思わんか――マーカス?」


 姜十郎は資料に目を向けながら、ソファーで座っているマーカスという男に話しかける。マーカスと言われた男は姜十郎と同じ内容が記された資料を読みながら答える。


 「話に聞いていた通り、今年は豊作の一言ですね。新人試験の受験者数が三十人越えとは。さらに受験者の中には、あの〝雷霆〟の娘に神林家始まって以来の麒麟児とまで言われた〝神童〟 京都の女王様のところからは陰陽娘。 ここまででも十分度肝を抜かされる面々……」


 その言葉を聞いて姜十郎の頬が少し緩んだ。どうやら嬉しいようだ。近年では受験者数が右肩下がりの様に減ってきており、去年はついに受験者数が十人を切ったそうだ。


 毎年行われる新人試験では平均して五十人ばかりの新人たちや他の受験者が受けに来るのだが、最近の新人たちは芳しくなかった。能力の質の低下に人数の減少、さらに派遣員不足による依頼達成率の低さ。挙げれば様々な問題がある。どれもこれも人手不足の一言に尽きるのだが。


 そんな状態だったが、今年はなんと受験者数が去年の五倍以上の受験者数が集まったのだ。能力者の質の問題もあるが、それは経験や指導、時間によって解決できるものだが、人手不足は人が集まらない限り何とも言えない問題である。そのため今年はまさしく「豊作」と言えるだろう。そう思いつつマーカスは言葉を付告げる。


 「さらに伊豆の駒馬(こままい)家に京都の阿弥陀宗(あみだしゅう)志摩(しま)家……おぉ、これは十年ぶりじゃないか? 珍しく蟒蛇(うわばみ)家からも新人が参加()るのか! 支部長のおっしゃる通り、今年の新人たちは中々の粒ぞろいのようですね。 それに雷霆の娘の実力は特に素晴らしい。先ほどのいざこざも見てましたが、見事に受け継がれていましたね。さすがは雷霆の娘……支部長も鼻が高いでしょう?」


 「フンッ 儂から言わせりゃあ、まだまだじゃわい!」


 そう言いつつもどこか嬉しそうにしている。やはり柊家に関わりのある家柄ゆえに、幼い頃から見守って育ててきた娘のような存在を褒められたことが嬉しいようだ。


 「そうなってくると今度は婿取りが大変でしょうなぁ。能力もさることながらその美しさは母親譲りで整った容姿ですからね。そりゃ男が死肉に群がるハイエナ如くやってくるでしょうなぁ~」


 「フンッ どこぞの馬の骨なんぞに柊家の大切な跡取り娘をやれんわ! それに……お嬢には既に長戸がおる。長戸の小僧をお嬢の婿に、と本家からの打診が来とるくらいじゃからのぉ……ほとんど決まったようなものじゃ。 あとはお嬢の心一つ……まぁお嬢はまんざらでもないようじゃがのぉ」


 顔がニヤけて普段の姿からは考えられないほどだらしない顔になって話している姜十郎。厳格な支部長という認識が一瞬で瓦解しそうなほどだらしない表情になっている。どんだけ子頭脳なんだよと思うが言わぬが花だろう。


 マーカス自身は柊家と交流があるわけではない。だが、日本支部の支部長を務めている姜十郎とは師弟関係である。姜十郎がまだ若く、現役でバリバリ依頼をこなしていた頃に、当時、同じ地域に派遣された新人派遣員だったマーカスが姜十郎の余りにも凄まじい戦いっぷりに惚れ込み、半場無理やり弟子入りを志願したのが馴れ初めだ。それ以降、マーカスは姜十郎を実の父親の様に慕って尊敬しているのだ。

 戦場では一切の隙を見せず、敵と見るや狂喜を浮かべ拳を振り上げて敵陣に急襲を仕掛けるその姿はまさしく戦神の如き強さ。しかし、今の姜十郎はかつての面影はなく、実の娘の様に柊家の長女の話をする姿は爺馬鹿にすら思える。尖っていた頃が懐かしく思えるほど丸くなったようだ。


 「……時にマーカスよ…」


 ニヤけていた姜十郎の顔がキリッと何時もの厳しい眼つきに変わった。


 「お主に依頼しておいた(くだん)は……どうなった?」


 姜十郎の雰囲気が一瞬で切り替わる。姜十郎の鋭い視線からの無言の圧力(プレッシャー)。先ほどまで爺馬鹿だった姿から一瞬で仕事モード(いつもの姿)に切り替わった。

 御年七十一歳を迎えた高齢な身とは思えぬほど強烈な圧力を感じる。流石は「戦神」の二つ名を持つ魔神殺しの英雄。最終ランクは「S+(エスプラス)」で現役を退いたが当時は最もランクSSに近い存在として知られた英雄。ちっとも衰えてない。さすがは師匠、だと改めてその凄さを再認識させられた。

 


 






 


今度こそ本当に次回から「ランク取得試験」編を開始します!


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