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天然能力者の受難  作者: 岸辺 轍@中二病
天然能力者の受難
16/19

不満と悪意、動き出す野望Ⅱ

新年 あけましておめでとうございます。

新年度も、どうぞよろしくお願い致します。

一日からだいぶ日が立ちましたが、投稿します。


二話に分けてしまい申し訳ございません…。

この話だけで約二万字。二話合わせて三万字いきましたΣ( ̄ロ ̄lll)!

加筆に次ぐ加筆執筆で酷い目に合った…Σ(゜д゜lll)


・そろそろ相棒の存在をちらつかせないと思い頑張りました!

・そろそろ事件の前置きと能力者について入れたいと思い頑張りました!

・そのせいでめっちゃ編集長引きました!


 ごめんなさい|д゜)チラッ


 「クソッたれェ…‼ 斬り捨てられる覚悟で円卓会議に乱入したってのによォ…‼」


 蝋燭明かりで照らされた薄暗い廊下の中で若い男が舌打ちをしながら廊下の壁を思いっきり叩く。見るからに不機嫌そうで、全身で不満を表現している。


 この男はつい先ほど重鎮たちが今後の方針を会議する名誉ある円卓会議に乱入し、《委員会(コミュニティ)》を統括する会長に直接具申した若い男であった。


 その名をリカルド・ロドリゲス=ワレットという。


 円卓会議に出席している十二人の幹部の内の一人、ロドリゲス=ワレットの実の息子であり、十五人いる兄弟の中で一番ロドリゲスの血を色濃く引き継いでおり、その実力は幹部クラスに迫るほどだという。ロドリゲスに言わせれば「まだまだちんちくりんじゃ」と言われているが、他の幹部たちからは次代の幹部候補とまで言い表されるほどの認められた紛れのない実力者の一人でもあった。

 リカルドに続いて会議に乱入した友人たちがリカルドを必死に宥めようと声を掛けるが、まだ不満があるのか、リカルドは「クソッ」と壁を殴って悔しがっていた。


 「仕方ないっすよ。ああなった会長は頑固親父っスよ。また日を改めましょうぜ兄貴」


 「そうだぜ、リカルド? あの場で斬り捨てられなかっただけよかったと思おうぜ?」 

 

 「…ザガン……でもよォ…」


 リカルドが壁に八つ当たりをしている姿をずっと静かに見守っていた男、ザガンがいまだ不満たらたらなリカルドに声を掛ける。


 「そりゃ、オレだってお前と同じ気持ちだぜ? それでも、お前のようなバカなマネはしないけどな! お前が円卓会議に乗り込んでいったときは肝を冷やしたぞ。正直、これが「別れ」だとすら思った。それなのに、お前は生きてる! 乱入して生きてるだけでもとても幸運な出来事(運がよかった)ことなのに、その上、幹部の方々もお前の話に共感を示し聞いていただけた。それだけでも十分、凄い事なのに……さらに会長のご子息であるガリル様までお前に味方してくれた。これはもう幸運(ラッキー)と片付けることはできない奇跡って奴だ。これ以上欲張ると、マジでろくなことじゃない。 ……後は上に判断を委ねるしかねェよ」


 周りの友達たちが自分を「兄貴」と慕っている中で唯一、リカルドを呼び捨てすることができる男、親友であるザガンだ。そのザガンが宥めに入ったことにより、さすがにここまで言われてリカルドも納得せざる得なかった。


 リクルドのよき理解者であり、暴走したときのストッパー兼親友のザガン。本名をザガン・ファッカールという。実力はリクルドより下だが、同世代の中でも頭一つとびぬけて強い、それなりの実力者でもある。普段から冷静沈着なクールな男で、感情的になりやすく、すぐ暴走するリカルドを諫め、暴走を止める抑止材(ストッパー)でもある。そんなザガンをリカルドは親友だと思い、実力で勝っていたとしても人望では勝てないと認めており、密に慕っているのだ。


 「はぁー……ザガンにそういわれたら仕方がない、か。後はイグラス会長に考え直すようにご子息であるガリル様の対応に期待するほかないか。 ありがとな、ザガン。おかげで少し冷静になれたわ」


 「おう、気にするなよ。それよりも、お前が不敬罪で処刑されなくてよかったぜ。 正直、俺もイグラス会長のご判断には納得いかねぇけど、それでも俺たちにとっての象徴はイグラス会長なんだ! ……俺は会長のご意思に委ねることにするよ」


 「お、おれも! イグラス会長様のご判断には納得いかないっスけど!し、信じてみるッス!」


 「あ、オレもオレも!」とみんながザガンの意見に賛同する。納得がいかないのはみんなも薄々だが感じている。それでもイグラス会長には何か深い考えがあってのことだと、そう皆は納得しているのだ。自分たちには想像もつかないことを仕出かしてきたイグラス会長の御意思は誰も図ることが出来ない。それ故に象徴。神とすら崇めているのだ。それは反対していた円卓会議の幹部たちも、会議に乱入してまで具申したリカルドも同じ思いであった。


 リカルドはみんなに諭され「わかった…俺もイグラス会長を信じるよ」と納得した。幹部たちも同様にイグラス会長の御意思に沿って人間の能力者組織である《機関》との新たな和平協定を結ぶことを決意したのだ。これが英断であったほしいと淡い期待を抱いて。


 

 幹部と若者たちの承諾を受けた《吸血鬼委員会》の会長であるイグラスは早速、そのことを《機関》に伝え、人間の能力者組織である《世界能力者管理機関》との和平協議をその日のうちに行うことなった。


 会場は《機関》側が提供することになっていた。その理由は送り迎えとして《機関》所属の専属能力者である『転移能力者(テレポーター)』が吸血鬼委員会の本拠地である場所まで転移して、その後、会長と護衛二名を連れて会場へと転移することが可能であるとして、イグラス会長もそれに答えて、迎えに来たテレポーターと共に、《機関》が用意した協議会場へと向かっていった。



 会議は三日三晩続き、そして決議は出た。



 吸血鬼委員会と世界能力者管理機関は新たな和平協定を結ぶこととなった。


 

 機関との和平協議から帰ってきた会長は開口一番に深く頭を下げ、そして「済まなかった…」と一言残し、執務室へと閉じこもってしまった。

 その後、すぐに緊急の円卓会議が行われた。貴族と呼ばれる階級に属する有力者やイグラス会長の護衛としてついていった同志の二人が会議に呼ばれ話し合いが続けられる。しかし、いつまでたっても何も発表されることはなかった。一日、二日(ふつか)三日(みっか)と時間だけが過ぎていく…… 

 未だ円卓会議から、会長から和平協議に何があったのか発表されていない。ただ一つ、だけ分かっていることといえば、和平協議に護衛としてついていった同志の一人が話してくれたことくらいだ。


 『新しく和平協定を機関と結ぶこととなった。これから協議内容を切り詰めるための会議をするため、今はこれだけしか教えられない。 ……すまないな』


 護衛の同志は確かにそういった。つまりは《機関》と《委員会》は新たな協定を結んだという事だけだ。その内容については、未だ発表されていない。それどころか、《委員会》の頂点である円卓会議からの協議内容について知らされてないのだ。肝心のイグラス会長は寝室に閉じこもっており、会議室は前回、ある若者(リカルド)が乱入した為、会議室前に二人の警備兵とその周りに数名の交代要員が在住する厳重警戒が引かれている。会議に乱入するどころか聞き耳すら立てることが難しい状態となっている。




 「クソたれがァ…‼ 一体いつになったら、発表されるンだよ!」


 「……落ち着けよ……気持ちは分からなくもないが」


 「落ち着いてられっかァ‼ もうあれから十日だぞ、十日!! いつまで待ェ言うんだよ!」


 鼻息荒く、諭す仲間の声すらもう耳に聞こえないとばかりに喚くリカルド。非常に興奮した様子で、親友であるザガンの諭しであってもリカルドの耳に届くことはなかった。それほど十日間という時間はリカルドにとっては苦しくて長く、そして耐え難い時間であったのだ。たった十日、されど十日……永遠に近いとまで言われる寿命を持つ吸血鬼であっても、切羽詰まった緊張漂う中での十日間という時間は、リカルドの我慢が限界に達し、狂うには十分すぎる時間であった。


 最早、誰の言葉も届かぬリカルドは、たまりにたまった鬱憤を爆発させたように狂ったように周りに怒鳴り散らしていた。そんなリカルドを止めることを諦めたザガンを含めた三人の友人たちは自然に落ち着くことを願っていた。


 

 「————うるせェなァ‼ 男がみっともなく喚くな‼」



 「「「「———ッ!?」」」」



 突然怒鳴りつけられたような怒声が辺りに響く。辺り一面に響き渡るような声量だ。この場に居た全員の身体が一瞬、驚愕し膠着するほどだ。しかし、さすがは戦闘種族の吸血鬼、すぐに回復し戦闘体勢に入る。突然のことに正気を失って怒鳴り散らしていたリカルドも一瞬、その怒声に怯んだが、すぐに戦闘体勢へと入る。


 「——!? 〝術式〟――展開」


 五人の中ですぐに正気に戻ったのはザガンだった。


 一瞬で委縮した躰を奮い立たせ、戦闘体勢へと入った。すぐに辺りに自身の魔力を放出し、魔力探知と受動探知の二つの魔術を展開する。しかし、何の反応も見られない。この辺り一帯にはリカルドとザガン、そして友人の三人の計五人の気配と魔力反応しか見られないのだ。


 (……? お、おかしい…!? け、気配まで……全く感じない…!?)


 当然の怒声。それもすぐ近くから発せられた怒声だった。そうでもなければ、ここまではっきりと、それも躰の底から恐怖を煽るような怒声は発せられない。しかし、この辺りに人影は愚か、生き物の気配すら感じない。何かの個性か隠匿魔法か、魔道具かとすぐに考えたが、すぐに否定する。なぜなら魔力は消せても生物の気配は消すことが出来ないからだ。だからこそ、魔法を探知する魔力探知と気配を探知する受動探知の二つの魔術を展開したのだ。


 すぐ隣に居たリカルドに視線を送る。ザガンからの視線ですぐに察したようにリカルドもザガンと同じように魔力探知と受動探知の二つの魔術を展開する。



 二人がお互いに魔術を展開しなかったのには理由がある。それは魔術の特性に原因があるのだ。



 精霊や妖魔の力を借りて発動する魔法の類は別として、一般的に扱われている魔術や魔法といった力は術師の潜在的な「力」を使って発動させる力を指している。有なれば誰でも訓練すれば発動できるが、人の素質によって効果が変わる力技のようなものだ。そのため、使い続ければ術師の魔力が枯渇するデメリットが存在する。魔力や霊力は生命活動に必要な力なので、枯渇すれば最悪、死に至るのだ。

 しかし、魔術は魔法陣と呼ばれる特殊な方法を使って展開する。

 魔法円と呼ばれる円形の魔法陣に「紋章(シンボル)」と「魔法文字(マジックスペル)」を刻むことで任意の効果を展開、発動させるのだ。


 紋章(シンボル)とは魔術の効果を大きくさせたり、展開される範囲を指定したり、発現する時間などを定めることができ、魔法文字(マジックスペル)は発動魔術の効果内容を刻む文字だ。それを〝回路〟と呼ばれる魔力の通り道でつなぎ合わせて魔法陣が完成する。


 紋章が力を示し、文字で効果を、回路ですべてを接続する。

 「紋章」と「文字」それを繋げる「回路」 この三つが魔法陣を形作っているのだ。


 魔術のメリットして魔法よりは扱いが良く、低燃費で魔力枯渇の心配がない。

 魔術に主に使われる力の大半は大気中に存在するの力の源である魔素だ。使うのは外部の魔力であり、術者本人の魔力はほとんど使うことがないのだ。そのため、魔力枯渇は魔術をよほど乱発しない限り心配のないことだ。

 しかしながら、そんな便利な力である魔術には、一つだけデメリットが存在している。それは同じ術式が刻まれた魔術陣同士が衝突しあうとお互いに効力を相殺しきってしまうのだ。例えるなら探索波(ソナー)があげられる。

 探索波とは、いわゆる「音」だ。音は障害物に当たると反響する性質を持っている。身近な事で例えると「やまびこ」だ。遠くの山に声がぶつかって声が帰ってくるように聞こえる現象だ。その性質を利用して作られたのが「ソナー」だ。

 音を出して遠方の対象に音がぶつかって反響して音が帰ってくる。その速度から計算して対象との距離が測定する。軍事から産業へと幅広く使われている便利な力だ。

 しかし、音と音がぶつかり合うと無音となるのだ。この技術はいろんなところで見られる。例えば防音壁だ。防音壁はその字の如く音漏れを防止する壁だ。音が壁によって跳ね返り、新たな音とぶつかってお互いに相殺しあって無音となる。この技術はノイズキャンセルのヘッドホンや高速道路の騒音を消す技術として、応用されているのだ。


 つまりいう所の同じ効果の力同士ぶつかり合うと力の大小関係なく相殺しあってしまうのだ。同じ効果の魔術は併用して使うことが出来ない。それが魔術を扱う上での最大のデメリットである。

 

 そのため、リカルドはザガンがすぐに索敵魔術を展開したことを気づき、リカルド自身は魔術展開を少し遅らせて、お互いの魔術効果が相殺しあわない様に時間差を開けて展開したのだ。



 ——なのだが……

 ザガンは隣で魔術展開したリカルドの表情を見て奥歯を食いしばる。


 「…あ、ありえねェ!? ……俺の魔術にも一切の反応が見られねェ…!?」


 どうやらリカルドの展開した魔術にも反応が無かったようだ。


 俺たち五人の中で一番実力があるのはリカルドだ、次いでザガン。その二人の展開した魔術に何の反応も見られないという事は、格上の実力者か、それとも古代遺産(アーティファクト)級の魔道具を使っているかもしれない。どっちにしても、俺たちのような若者が歯向かえる訳ではないとザガンは判断した。リカルドの方はいまだに信じられないのか、先ほどから乱発して魔術を展開している。他、三人は戦闘体勢はとってはいるが、怯えているのが先ほどから巡らせている自身の魔力の揺らぎから手に取るようにわかる。


 (……まずい……まったく状況が読めないぞ…‼ いや…まて……落ち着け、落ち着くんだ…!)


 ザガンは一人だけ戦闘体勢を解いた。それにリカルドも友人たちも驚いていたようだが、何も言ってこない。オレ一人、戦闘体勢を解いてもリカルドたちはまだ戦闘体勢を維持し続けていた。


 横目でリカルドを見ながら考えていく。そもそも、これが攻撃、襲撃だと仮定するのなら間違いなく悪手、失敗だ。これほどまで巧妙に自身を隠匿しておける()()を持っているのなら、わざわざ声に出してまで怒号を発する必要はない。発すれば自身の存在と場所を教えることになる。


 (…先ほどの怒声はまさか幻聴か? …いや、それは…ない……はっきり聞こえた。ならば虚勢(ブラフ)か? …いや、そもそもなんの為にだ。ならフェイクか? クソッ!クソッ!……何が目的なんだ…!?)


 相手の目的が全く分からない。それに、怒号を掛けられた以来、なんの反応がないのだ。


 時間だけが過ぎていく。

 おそらくは大して時間は断っていないのだろうが、緊張した状態で数分間、ずっと臨戦態勢を取っているので一分の時間でも十分、ニ十分と時間がものすごく長く感じる。やっぱりあれは幻聴だったのではないか、と段々信じたくなってくる。みんな背中合わせ手辺りを警戒しているので、後ろから「やっぱり幻聴だったんじゃ…?」とボソボソと話す声が聞こえてくる。


 「…全員が同じ幻聴を聞こえるなんて……そんなバカな話があると思うか…?」


 ザガンは隣で周囲を警戒しているリカルドに話しかける。


 「…………あるわけないだろ」


 「…だよな」


 「…ザガン、お前…この状況をどう見てる? お前は戦闘力じゃ俺に劣るが冷静な分析なら俺より圧倒的に上だ」


 リカルドがザガンに尋ねる。ザガン自身も正直、この状況がまったく理解できていない。ザガンは一応にだが、考えていることはある。だがそれは「仮説」と呼べるほど的を得た推理ではない。仮説はたくさんの情報があってこそ成り立つものであり、この状況では仮設ではなく、ただのザガンの勝手な思い込み、推測に過ぎないのだ。それは一番ザガンが理解していた。しかし、あの怒号以降、まったく反応がないし、コンタクトもない。情報がないので、仮説を立てようがないのだ。果たして、今、ザガンが考えていることを話していいのか迷っていたのだが、横のリカルドを見て決心がついた。


 「今は推測でも構わないから情報が欲しい。話してくれ」とばかりに、力強い目線で訴えてくるリカルドの姿が目に移ったのだ。それを見て、ザガンは迷いを打ち払い話すことにした。


 「……まず、間違いなくあれは幻聴ではない…はずだ。辺り一面に響き渡ったのが何よりの証拠だ。脳内に直接話しかける《テレパシー》系統の異能でもない。 あれは、純粋な「声」によるものだと推測できる。 …今考えられる推測は大きく分けて二つ、だ。」


 ザガンの推測に全員が耳を傾ける。


 「まず…これは攻撃ではないという仮定だ。 オレたちの誰かを、もしくは全員抹殺する任務だと仮定して話を進める。 この場合、間違いなく先ほどの怒声は悪手だ、そもそもメリットがない。俺たちに存在を知られた時点で警戒される。それに声は一つだけだった。一人ずつ抹殺にせよ、全員そろって抹殺にしろ……オレたち全員が雁首揃えて揃ってるところで気づかれるような大声を出すわけがない。そもそも声を発して尚も気配や魔力を完全に隠せるハイスペックな魔道具が大量に量産されているとは考えづらい。ならば純粋に考えられるのはこれは「個性」 ……異能の類だと推測できる。 よほどの腕利き暗殺者だと思うのだが、声を掛けてくる暗殺者(プロ)はいない…」


 「……だからこそ攻撃ではない、という訳か」


 「そうだ。そしてもう一つがこれが攻撃であった場合だ。 この場合…少なくとも相手は超格上の存在だ。 例えバレても全員、抹殺できるということだ…!」


 「「「「ッッッ‼‼‼」」」」


 「……だが、おそらく、それはないだろう。殺せるのならとうに殺されているはずだ。だが、俺たちはこうして生きている。それに、相手からの反応(コンタクト)がない。つまり、俺たちの抹殺の他に別の目的があるという線が濃厚…」


 全員の視線がザガンに集まる。ザガンの推測は実に的を得た推理であった。現状では少ない状況からここまでの仮説を立て信憑性を裏付ける現状と相まってザガンにみんなの視線が集まるのは必然であったのだろう。しかし、全員の意識がザガンに向いてしまった。そのほんの少しの失態にザガンを含め全員が気付いたのは事が起きた後であった。



 『———凄いね、キミ。 実にイイよォ…! うん、凄く良ィ!』



 ふざけたような声が突然、ザガンの耳元から聞こえた。それと同時に強い衝撃が襲い掛かる。衝撃で身体がくの字に折れ曲がり後方への吹き飛ばされてしまう。その勢いが止まることがなく、その勢いのまま建物にぶつかり、ようやく吹き飛ぶ身体が静止した。


 「ガハッ…‼ な、なにが…おき、た…⁈」


 土煙が立ち込める瓦礫に埋もれたままザガンは今の出来事を考えていた。

 ザガンはただ訳も分からず壁に吹き飛ばされた。腹部に受けた衝撃はまさに絶句。風穴は開いてはいないようだが、いくつかの内臓は破裂したようだ。吐血が止まらない。口から溢れんばかりの鮮血がしたたり落ちる。人間であれば間違いなく風穴が空き即死していたであろう今の衝撃。しかし、ザガンは人間にあらず。不死の吸血鬼だ。不死身の肉体と驚異的な回復力を併せ持つ種族。すぐに体の修復が始まる。

 しかし、それでも腹部の激痛が引くことはない。ズキズキと痛み、未だ起き上がることすら出来ないほどの激痛にさいなまれていた。


 身体を両断されても瞬く間に回復できる肉体に、これほどの被害(ダメージ)を与えられるほどの強烈な一撃を受けたのだ。

 

 激痛で意識が飛びそうな中、何とか状況を確認しようと唯一動く首で辺りを見渡す。

 一体誰がこんなことを? と考えながら先ほどまでザガンたちが立っていた場所に視線を向けた。そこには黒い外装を着込んだ人影が一つあるだけだった。あの場所には先ほどまでリカルドや友人たちが居たはずだ。しかしその影はない。つまり、自分同様にあの人影によって吹き飛ばされたのだ、と容易に推測が出来る。


 (……何が目的、なん、だ…⁈)


 黒外装の人影はいまだあの場から動く気配がない。オレたちに気づかれることなく壁へと吹き飛ばしたのにも関わらず、その後の動きはない。追撃も無ければ、話しかけてくることもない。オレたちがさっきまで立っていた場所から動く様子が見られない。黒いフードを深くかぶっており表情も見て取れやしない。同じ吸血鬼なのかそれとも別の種族の者、刺客なのか、男か女なのかさえ分からない。


 少しづつだが、肉体の修復が済んで来たのか痛みが引いていく。いつまでもがれきに埋もれている訳にもいかないので、ザガンは起き上がろうとしたその時。黒外装の人影の後ろに剣を振り上げた人影が見えた。


 (…ッ‼ リカルドか⁈) ザガンはすぐにその人影がリカルドだと気付いた。


 左手で腹部を抑え血反吐をまき散らしながら右手で剣を振り上げ斬りかかろうとしている。黒外装の人影はいまだ動く気配がない。完全に隙をついて裏を取った。その状態からリカルドの剣を躱すことなど出来ない。出来るはずがない。ザガンは反射的に「決まった!」と思った。だが、ザガンの本能は薄々気づいていた。これは失敗する、と。


 「リカルド! だめだァあああ! 攻撃をやめろォ‼‼」


 ザガンは気が付いたら叫んで走り出していた。早くリカルドを連れて離脱しろ。そうしなければリカルドが殺されてしまう。


 だが、遅かった。ザガンの予想は当たってしまった。


 後ろから斬りかかってきたリカルドの振り下ろされた剣を黒外装の男が後ろを振り向くことなく()()で受け止めてしまったのだ。


 「な、なんだ…と…⁈」


 片手で受け止められたことに動揺を隠しきれないリカルド。確かに普段のリカルドの斬撃から考えれば今の斬撃には普段のキレが出せてはいない、おそらく左手で抑えているダメージのせいだろう。それでもリカルドは確実に仕留めたと確信していた。


 奇襲や反撃に一番重要なのは仕掛けるタイミングである。どんなに手練れであっても不意を突かれた一撃を躱すことはできない。よしんば交わしたとしても二撃目三撃目の追撃で確実に()()。今の状況は完全に黒外装の隙をついた斬撃であった。


 万全でないにしろリカルドのあの瞬間の斬撃は本来躱せるものではない。あのタイミングで躱されることなどありえない。いくらダメージを受けていたとしても完璧に隙をついていた、ついたはずなのだ。しかしそれでも黒外装は躱した。否、受け止めたのだ。リカルドの真剣をたった片手で。


 リカルドは動揺しすぎて動けない。そもそもただでさえ重症なのだ。リカルドはもう動けない。ザガンは必死に走った。早くリカルドを出すけて離脱しなければ。


 ザガンは必死に走る中、嫌な物を見たような気がした。

 黒外装の男がゆっくりと後ろを振り向きニヤっとした笑みを浮かべたように見えたのだ。嫌、表情は見えなかったのだが……それでもそう思わされるほど不気味さを感じた。



 ―—ヤバイヤバイヤバイ…‼ 間に合ェえええ!!!!



 腹部の激痛に身体を蝕まれながらもザガンは必死に走った。しかし、間に合わなかった。


 黒外装がリカルドの剣を掴み上げ、尋常ではな腕力でリカルドを地面へと叩きつけた。


 「——————ッッッ‼‼‼」


 リカルドが地面に打ち付けられ鮮血が飛び散る。声が出ないほどの衝撃がリカルドを襲う。


 打ち付けられたリカルドにもはや反撃する気力も体力もない。意識は保っているようだがギリギリだ。次の一撃で間違いなく意識を奪われる。もはやリカルドは激痛による激痛で意識を保つのすら困難だ。


 「う、うァアああああ!! よくもリカルドをォオオオオ!!!!」


 ザガンは走りながら左掌から一本の剣を取り出し黒外装に斬りかかる。紛れもない全力の一撃。なんとしてもリカルドを助けるんだと、限界まで力を引き出した気迫と殺意を込めた本気の斬撃。 


 ザガンとリカルドは幼馴染だ。同じ年に生まれ同じ釜の飯を食って育ってきた親友だ。互いに武を極め合い、知識を学び合い、共に切磋琢磨してきた最高の好敵手(ライバル)だ。


 すぐ直情的になるリカルドを抑えるために、常に冷静であろうと心掛けていたザガンだったが、この瞬間だけは冷静ではいられなかった。


 「冷静が欠けた一撃は致命的なんだぞ?」


 常日頃からザガンが口にしている口癖のようなもので、ザガン自身が自分を戒めていることだ。


 だが、目の前でリカルドがやられたことにザガンは自分を抑えきれなかった。

 つまり、ザガンはまだ若かったのだ。



 ザガンは激情する感情のままに斬撃を繰り出した。




 『……まだまだ若いな。』 そういったように聞こえた。




 背中にドンッと強い衝撃を受け地面に倒れ込むザガン。薄れゆく意識の中、微かに男の声が聞こえた。






 ———寝てろ、()()()()! 





 ザガンは意識を手放した。








 ◇◆◇◆◇

 


 「ウッ……こ、ここは…?」


 「起きたか、ザガン! ふぅう……よかったぜ!」


 目が覚めると目の前いっぱいにリカルドの顔が見えた。どうやら気を失ってしまっていたようだった。どのくらい眠っていたのかは分からないが、周りを見渡すとリカルドの他に友人たち四人がほっとしたような表情を浮かべている。


 (…? 一体、どうなったんだ…?)


 記憶が飛んでいるのか、今自分が置かれている状況を理解するのに手間取ってしまった。そもそもなんで俺は意識を手放してしまったのだろうか、と必死に頭の中で状況を整理する。


 「(ハッ!) り、リカルド! 大丈夫だったか?! それに、あの黒外装の奴は?! どうなったんだ?! オレが意識を失ってる間は大丈夫だったか?!」


 「お、落ち着けってザガン!いつもの冷静沈着なザガンのキャラがつぶれるぜ?」


 リカルドが茶化すようにザガンに言う。友人たちもらしくないとリカルドと一緒になって笑っている。しかしザガンの心中は穏やかではない。未知の奴に、黒外装の奴に俺たちは何も出来ずに意識を奪われたのだ。どうしてリカルドたちは笑ってられるんだ、とザガンは混乱していた。


 「……混乱しているようだな。 まぁ仕方がない、か」


 その声にザガンは一瞬で現実に戻されたような、絶望した表情になった。


 (い、今の声質(こえ)は…⁈ ま、まさかまさか……!?!?)


 ザガンはすぐにその声主の方が見やる。リカルドと友人たちを手で押しのけてその声主を見る。


 そこには黒外装の奴が……否、黒外装のフードを脱いだ()が立っていた。年齢的に三十代後半だろうか。黒い髪を無造作に切り分けた髪型に無精ひげを生やした恰幅の良い男が黒い外装を纏って座り込んでいた。


 (に、人間だと…⁈ どうしてここに人間が!? いや、そもそも俺たちは人間に負けた、のか?)


 ザガンは二つの衝撃を受けた。


 一つ目はここに人間がいることだ。

 いまザガンたちが暮らしているのは世界から隔離された絶海の孤島。世界地図にすら載っていない()()()()()()()()()〝Sandy Island 〟 直訳で「砂の島」だ。

 50年代後半まではしっかりと世界地図に記されていた島だが、ある日を境に世界地図から存在を抹消された幻の島だ。抹消された理由は《機関》によってこの島に吸血鬼が追いやられたせいでもある。吸血鬼の存在は世間的には認知されていない。完全な架空生物扱いだ。そのため、この島は世界から隔離されたのだ。そんな吸血鬼しか居ないはずの島に人間がいるのだ。そのことに驚いたのが一つ目。


 そして二つ目は劣等種である人間に負けたという事実。

 人間は吸血鬼より圧倒的に弱い。異能や能力、戦闘能力といったところから種族としての力まですべてが人間に勝っているのが吸血鬼。先の大戦でもそれは明白であった。人間は吸血鬼に唯一勝っている数の力で大戦を制した。ザガンたち若い世代は大戦を経験してはいないが、人間の能力者とは何度か戦ったことがるのだ。《機関》に所属しない人間側の能力者組織が吸血鬼の力を求めて攻めてきた時に戦ったのだ。その時の人間たちは確かに強かったのだが、もとより負ける気はしなかった。普通に圧勝。しかも、その戦いは当時の会長、現在でいう前会長のたった一振りで()()した。


 確かに中には強い人間も存在しているとは考えていたが、それでも吸血鬼である自分たちに、それも若手世代ナンバーワン・ツーの実力を誇るリカルドやザガンに勝てる人間はいないと思っていたのだ。


 

 「まるで信じられない、とでも言いたそうな顔だな、オイ」


 男が話しかけてくる。胡散臭さマックスだ。とてもじゃないが信じられない現象ではあるが、事実、ザガンたちは何も出来ず負けた。戦いにすらならなかった。その事実だけがある。ザガンはその事実を冷静に受け止めた。そうしなければ話が進まないと直感的に感じたからだ。


 一つ、自分を落ち着かせるために息を吐いてザガンは男に尋ねた。


 「……いいや、信じるさ。オレたちは負けた、アンタは強い……それは紛れもない事実だからな」


 「ほぉ~! 思ったよりも早く冷静になったな……感情むき出しで挑んできた奴とは思えないくらい冷静になったんじゃねェか!」


 男が煽る様に返してくるがザガンは無視するように続ける。


 「オレたちは負けた。 ……だが、オレたちは生きている。それはオマエにとって必要だから生かしたんだろ? そう裏付けるようにリカルドもオレも友人(チェルド)たちも全員、治癒魔法か何かで回復させられている。殺す相手を治すような真似はしない、ましてや話し合いなどするはずがない。 つまりはオレたちに……もしくはオレたちの誰かに要件があってきたんだろ? ここまで話をしたんだ……誤魔化すのなしで単刀直入に聞く——何が目的なんだ?」


 ザガンは睨みつけるように男に詰問する。

 先ほどから身体の調子がすこぶる良い。腹部にあった強烈な激痛も今は消えている。不死の身体が時間治癒してくれたのかと思ったが、リカルドとザガンはともかく友人であるチェルドたちまで元気だ。オレと同じダメージを負ったとして、チェルドたちがこんなに早く回復するはずがない。

 つまりは治癒魔術か回復薬(ポーション)で回復させたはずだ。オレたちの中に治癒魔術や魔法を使える者はいない。戦場に向かう予定もないのにポーションを持っている奴も居ないはずだ。つまりは目の前の胡散臭い男が直したと考える方が妥当だ。


 「クックックック……クハハハハハッハッハッハ‼‼‼ さっきまで激情してたやつが冷静になった途端、コレかよ!! おめェやっぱ、俺が見込んだ通り面白ェ奴だなァー!」


 男は突然、笑い出した。


 「クハッハッハ! その読みは辺りだぜ、()()! そうさ!俺には目的があってお前らに近づいたんだ!」


 「(……やはりな) …で?何が目的だ?」


 「お前らは俺たち人間の能力者《機関》と吸血鬼コミュニティが新しく協定を結ぶってことは知ってるよな?」


 「当然だ。上層部(うえ)が決めたことだからな…。 だが、それがなんだいうのだ?」


 「お前らどうせ、その協定内容にまで教えてもらってないんだろう? さっきのソコの()()が喚いてた感じで何となく察してたぜ」


 そういいながら男はリカルドを指でさす。指をさされたリカルドはムカッとしたようだが、図星なのでうぐぐっと唸っている。


 「まぁぶっちゃけると俺は《機関》の上層部に通じるもんだよ。 で、だ! 俺はな…今回の協定内容に納得がいってねェんだよ。だから、お前らにソレをぶっ潰してもらいたいわけよ!」


 突然のカミングアウトにザガンたちは驚いた。

 オレたちを圧倒した人間だ。おそらく《機関》の相当な能力者だと目星は付けてたが、まさか《機関》の上層部に通じるお偉いさんだとは想像だにもしていなかった。吃驚して固まってしまったザガンに変わってリカルドが男に返す。


 「ちょ、ちょっとまてよ! てめェが《機関》の人間なんだとは分かったが、なんでオレたちに接触してくるんだ!? 接触を図るなら円卓幹部の連中に接触すべきだ! なぜ俺たちのような発言力のない若輩者にこんなことを話しに来るんだ!?」


 「……上層部(うえ)はダメだ、信用出来ねェ。 俺は言ったはずだぜ?お前たちに『ぶっ潰してもらいたい』となァ」


 そういって男は()()()()()()を地面にばらまいた。


 「それが結ばれた協定内容だ。 あっ!『なんでテメェがもってんだ!』の質問はナシだ。ツッコミもなしで頼むぞ?」


 ザガンたちは男がばらまいた紙を持ち上げ衝撃を受けた。

 その内容は思わず二度見したくなるほど絶句する内容であった。始めは信じられなかった。こんな胡散臭い男が取り出した資料の信憑性を確かめるすべはない。しかし、読み続けるにつれて信憑性が増してくる。そして何より最後の方に協定印が押され両者《機関》と《コミュニティ》の代表者の名と血判が押されていた。



 ——吸血鬼委員会【会長】イグラス・(オーギュスト)・スチュワード



 ……血の臭いを嗅げば分かる。この血は本物で会長の血であると。


 

 協定内容を読んだリカルドや友人たちも同じ思いのようだ。リカルドは怒りに顔を真っ赤にさせ、逆に友人たちの顔からは血の気が引いて真っ青になっていた。おそらくオレの顔も血の気が引いて真っ青になっているのだろう。顔から温もりが消えたような冷たい感じがする。


 「なっ! その協定内容は酷いだろォ」


 オレたちが声を失っていると男がしゃべりかけてきた。その問いにオレたちは力なくうなだれるしかなかった。円卓会議の、それも会長が決めたことは絶対だ。それが強い者に従う、それが吸血鬼の「全て」だ。現「会長」が最も強い。つまり、一番偉いのだ。そのことは理解しているのでリカルドも何も言えず黙り込んでしまっていた。


 「……確かに酷い内容だが……これはお前たちにとって()()()()()ではないのか? それを《機関》の、それも上層部に通じるお前が否を唱える必要はないと思うんだが?」


 「確かに人間である俺が否を唱える必要はねェよ、完全に人間側に有利な条件だしな。 でもなァ……違うんだよ! 俺が求めてる()()ではないんだよなァ‼」


 男が急に不機嫌そうになって続ける。


 「違ェンだよ! 俺が求めてる「理想」は吸血鬼(おまえら)を奴隷の様に従わせることじゃねェ! 力で押さえつけりゃあーそれ以上の力で返される! それをあの上層部の連中(ばかども)は理解してねェンだよ! 俺たちの能力者の質も年々落ちてきてやがる!そんな状態で吸血鬼と戦えるかってんだよ!」


 「俺が求める吸血鬼(テメェら)との協定は「連携」だ! 俺らだけじゃ手が回らねぇ案件が増えてきてる。ただでさえ能力者の人口は減ってるし、最近の若ェ奴らの質は落ちてやがる! 使えねぇ若者(ゴミ)よりも、俺たちより強い吸血鬼に頼らざる得なくなってきてんだ! それを平等な関係ではなく「奴隷」「下僕」のように扱おうとしている上層部(クズども)の連中に納得がいかねェンだ! 俺ァ何度も訴えたよ……でもクズどもは話も聞かねェ」 


 そして男はニヤっとした笑みを浮かべながらリカルドの方に馴れ馴れしく手を置いていった。



 「だからよォ~‼ 実力行使するンだよ! そのためにテメェらの力…貸してもらうぜ?」


 

 ※※※



 「で、だ! お前らの実力はさっきので試した。 結論から言うとな…お前ら二人は合格だ」 


 そういって男はオレとリカルドを指さした。


 「実力は物足りねェが冷静な判断力は戦闘能力より必要な素質だ。それを兼ね備えた…えっと名前何だっけか…? あぁ~そうそう……ザガン、だったな? お前は文句なしの合格点だ! そして冷静な判断力はねェけど、それなりの実力と気概を見せてくれたァー……あァ…リカルドだったな。 てめェも及第点ってことで合格だ!」


 そういいながら男はクハハハと笑った。


 「ちょ、ちょっとまってくれよ! じゃ~なんだ! 俺たちは不合格ってことか?!」


 チェルドたち四人が男に焦りながら言っていた。男はそれを予期していたように落ち着け落ち着けと楽しそうに茶化している。


 「まァ正直…ザガンとリカルドが居れば十分なんだがよォ。 お前らも付いていきたいだろうと思ってな!手っ取り早く吸血鬼(てめぇら)が実力着けれるようになる方法を伝授してやろうと考えてる訳よ」


 「そ、そんな方法があるなら……早く教えてくれよ!」

 

 「そう焦るなって!」といいながらクックックと笑い出した。


 「おまえらのような若い世代の吸血鬼どもが知っているのかどうかは知らんがな、手っ取り早く力を手に入れる方法なら……実は、あるンだぜ?」


 力を望む友人たちが男の言葉に生唾を飲む。ザガンもリカルドも自分が実力不足だと今さっき思い知らされたことなので、その方法には凄く興味があったので耳を傾ける。


 男はもったいぶってクックックと笑って茶化すばかりで一向に教えようとしない。

 そんな方法があるなら、さっさと教えろ! とリカルドが怒鳴り男に詰め寄るが「まぁまぁ落ち着け」とヘラヘラと笑ってリカルドをあしらう。その様子はまるでそんなことも知らないのか、と俺たちを小ばかにして煽っているかのような態度だ。この態度にオレたちはイライラが募るが力が欲しいのでグッと堪えた。


 男は怒りに震えながらもグッと堪えている俺たちを見ている。

 男の眼はまるで俺たちを値踏みするような、監査圧するような眼で俺たちを見ている。一人一人じっくりと…その力を確かめるように。じっとりとした目線を向けられるのはなかなか気分のいいことではないが黙って耐えるしかない。やがて見終わったのか、男はクックック…と奇妙に笑いだし…そしてその言葉を発した。



 「でなぁ……この方法はよォ… お前ら吸血鬼の上層部(うえ)()()()隠してる方法なんだかな」と前置きを入れて、男は語った。

 




 「——おまえらよォ……〝生き胆信仰〟って知ってっかァ?」





















 『——Operation(オペレーション) [(ナイト)] 任務成功(クリア)


 暗闇に隠れてリカルドたち若者たちの行動を観察していた男が手元にある無線機に語り掛ける。真っ暗闇の中、男の手には小さな無線機と一冊の手記が握られていた。

 

 “……クリア、了解………ごくろぉさん……早速で悪いが…次の段階(フェーズ)へと移行してくれ………”


 『了解。これより、続けて……オペレーション[騎士(ナイト)]へと移行する、報告オワリ。 ——我ら《NoX》に新たなる騎士(ナイト)を…‼』


 “…定期報告は忘れてくれるなよ?……報告完了…次の連絡を待つ。 ……通話終了(オワリ)‼”


 ブツッ! と無線の切断音が手元の小型無線機から聞こえる。接続は向こうから切られたようだ。男は手に持っていた小型無線機をそっと、懐にあるポケットに戻す。


 「…人間を使っての挑発か。アイツらには効果的な戦法(やり方)ではあるが……同胞を裏切る行為で少々、気が滅入る… しかし、これは致し方ないことだと諦めるしかない。これもすべて御仁様のご意向……私如き小さき誇り、喜んで捨てよう…!」 


 フッと男の口元が少しだけ上がる。


 「それにしても少し納得がいかぬ作戦だ。 新たなる()()の発掘だが、なんだか目的だか知らぬが……そうそういい人材が見つかるとは思えないがな。見つかるともわからぬ人材の為に、同法を犠牲にせよとは…。 ハァ……まあ、やるだけやってみるか。 ……見つかればいいのだがな。」 


 手に持っていた手記に目を落とす。


 「…‶世界の眼はやがて開かれる。それは決して止めることのできない先見である〟……アルマデスの大奥義書(グラン・グリモワール)、第一章一節追記(P.S.) 大預言者アルマデスが書き記して語った必ず訪れるであろう未来…しかし、それは誰も信じようとしなかったため、このような古ぼけた手記に語られている。 まったく()()()()()()()を知らなければ、俺も信じずに一笑にふかしていたところだったんだがな。」 


 『世界の眼』とは? それが『開かれる』とは? 


 その言葉は一体何を示しているのか? 


 【世界の大預言者】とまで呼ばれたアルマデスが態々、手記にて残したこの言葉の意味は?


 「……考えるだけで恐ろしい。 ……だがな。俺は楽しみでもあるのだよ! 世界の眼がまさに開かれた時、一体、世界はどうなる? その時の異能者たちの立場は? 今まで信じてなかった異能者の能力や悪魔や化物といった人外生物の存在を目のあたりにした一般人たちは? ククク……考えるだけでゾクゾクがとまらねェよ!!」


 男は狂ったような笑みを浮かべる。


 「こちらの戦力は乏しい! 対するアチラは万全、いや、全種族が戦闘種族! そもそも勝負にすらなならないだろう! そもそも地が違う!血も違う!戦力も、武器も、知恵も、戦力すらも!そして、そのすべてを成り立たせている常識が通じない! クックック……クハハハ! 本当に楽しくなりそうだよ!」



 「——すべての常識が覆されたこの世界と()()()の世界との()()()()の開幕だ!」


 

 「結末は火を見るよりも明らか! そもそも()()にすら無い! こちらの常識とアチラの常識は全くの別物!そもそも文明のレベルが違う!」 



 この戦争は――〝負け戦〟 



 戦っても無駄。反撃しても無駄。復讐を抱いても無駄。どんな兵器や利器を使おうともすべてを覆す圧倒的なまでの暴力に兵力。無駄無駄無駄ムダムダムダムダ!


 圧倒的な力の前にこの世界は滅びる!


 しかしそうはならない‼


 負け戦ほど燃える戦いないだろう!?


 はじめから負けると分かり切っているのに、そこで投じる逆転の一手‼


 圧倒的武力を圧倒的なまでの暴力で蹴散らす逆転の騎士‼


 そんな最高の物語(ストーリー)をオレは見てみたい‼


 非現実的な物語さ‼

 そんな力を持っている奴なんざいる訳がねェ‼

 たった一人ですべてを変えるなんざ、神の所業‼

 一人の力にァ限界が存在する‼


 ——でもな?


 それでも凌駕していく物語を見てェじゃねェーか‼


 オレたちは飽きてんだよ。負け戦も勝ち戦にも。すべてに飽きちまってる。どうせ負けるならボロッカスに。勝つなら悲劇的までの圧倒的な力で圧勝。


 


 それがオレたちの思い描く――〝STORY‼〟

 



 

 「ククッ‼ ——新たなる盟友(ナイト)が見つかるといいな。 それも……逆転劇の一手となる最強の切り札がよォ…‼」



 男はククク…と笑いながら暗闇へと消えていった。

 

※文中に解説が入ってますが、真偽のほどは保証しかねます。wiki先生と昔聴いたおばあちゃんの知恵袋から解説を作りました。


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