序章
趣味作家:岸辺轍 始動!
「就職活動はどうしたって? そんなの内定ゲットしたに決まってんだろォ‼」
就活初めて約六か月、やっと内定一個GETしたので、新しく新作執筆始めました!
「後悔した人生を歩んだ俺は~」の方もぼちぼち執筆を再開するか、前々から言っていた改訂版を執筆していきたいと思います!
もしよかったら是非読んで下さいね!
↓↓↓↓本編スタート↓↓↓↓
鎌倉時代 花の都「京」——大江山
険しく伸び放題に育った山の中を一人の女性が走り抜ける。その後ろを追うように三人の武装した男たちが追いかける。
三人の武装した男たちが追いかけるその女は、老若男女問わず、全ての人が一目惚れするであろうほど美しく、まさに男の理想像を現実に写したかのような美形。女の理想にして憧れの姿。動作一つですべての男の視線を集める。国をも揺るがし兼ねないその美貌——「傾城」とはまさにこの女性のことを指す言葉だと誰もが納得する麗しく気品溢れる美女であった。
この光景を一見すれば、追いかけている男たちがその「傾城」をわが物にしようと画策し、思う通りにならなかった女に腹を立て、執拗に追いかけまわしている様に見える。なんとも嫉妬醜い光景だと、誰もがそう思うだろう。しかし女性を追いかけている武装した男たちの服装や纏う雰囲気から醸し出される香りは、その辺に転がっているような足軽や侍には見えない。
身に着けている鎧兜は派手な装飾はされていないが、黒塗りで凄く上等な鎧兜であろう。それを着込む男たちからは気品が溢れ、高貴な印象を受ける。とてもじゃないが、盗賊や山賊といったひとさらい人攫いには到底見えない。
それに、本来追いかけられ困っているはずの女からは慌てた様子はなく、度々後ろをチラチラとみながら嬉しそうに走っている。何処かこの状況を楽しんでいるようにさえ思えてくる。そんな女に対して追いかける男たちの表情は、まさに必死さそのもの。目の前で少し先を走る女をなんとしても捕えようと鬼気迫る勢いだ。そんな男たちを嘲笑うかのように、女は楽しそうに前を疾走していた。
どうしてそんな奇妙で奇怪な鬼ごっこになっているのかは分からない。
しかし、その鬼ごっこもついに終わりを迎えた。
男たちが女性を切り立った崖に追い詰めたのである。
「わっちを追い詰めるなんて……やるようでありんすな。 ねぇおさむらいさん?」
追いかけてきた男たちを小ばかにするような独特な廓詞で話しかけてくる女。しかし、男たちはそんな言葉に応えることはせず、ただジリジリと女を崖に追い詰め、崖を背にした女を取り囲むように包囲する。
一人のか弱い女性に対して剣を振りかざしている男たちが取り囲むその様は、とても見れたものではない。まっとうな男、否、誇り高き武士であれば尚のこと。とても見ていて不愉快な光景であることに違いはなかった。どう見ても弱い者を嬲り愉悦に浸って楽しむ卑劣で外道な所業である。
しかし、取り囲む三人の男たちの表情からは愉悦に浸っているような印象は受けない。ある者の顔は妙に引き攣ってこわばっており、ある者は相手の動きを逃さないと警戒し、いつでも斬りかかれるぞと力を漲らせている。そんな男たちに対して、女性は飄々としており、時折男たちに話しかけては反応を見て笑い、この状況そのものを楽しんでいるようであった。
この奇妙な光景は、むしろ始めからして可笑しかったのだ。
本来、この状況から考えられるシナリオでは追い詰めているのは間違いなく男たちだ。しかし、追い詰めているはずなのに、いまだに必死の形相をしているのも、また男たちの方であった。
そんな男に対し、女は楽し気。傍から見ても解るほど、この状況を望んでいたのか、凄く楽しそうにしている。そんな余裕な態度を示している女に対して、男たちの表情からは余裕が感じられない。まるで目の前で追い詰めている女性に対して、何かを畏れているように強張った表情をしている。
「そう怖い顔せなんでありんす。わっちには抵抗する気はござりんせん。 …すきにしなんし」
綺麗で眩しい白い肌を晒しながら両手を真上に上げ、ひらひらっと降参のようなポーズをとる。
しかし、その表情は何か企んでいるかのような含みのある笑みを浮かべている。まるでこれが、あの女が仕組んだ状況であるかのように、この状況を楽しみ、嘲笑っているかのような態度だ。
挑発的な態度をとる女性に対し、追い詰めた男たちは一切その表情を崩すことなく警戒を続ける。
降参する、そんな言葉を聞いて安堵するどころか、益々その表情が険しくなっていく男たち。
明らかに目の前にいる女性に対して何かを畏れているようだ。
静寂を辺りが包み込む。
いくらの刻が過ぎただろうか…
ようやく、女の正面に布陣していた男が手に持った刀を女性を警戒しながら腰の鞘へと納刀する。それを二人の男が横目で確かめ、納刀した男よりにゆっくりと、女に刀を向け牽制しながら中央の男の方へと向かう。
刀を納刀した男が背中に背負っていた細長く鮮やかな絹袋を地面に下ろし、紐を解いた。
中から取り出したのは細長い長方形の木箱。凄く高そうで上質な木から作られたであろう木箱だろう。しかし、その木箱には仰々しく呪符や清め札が張りつけられている物々しい木箱であった。
男はその木箱に巻き付く紐と札と剥がしながら木箱を開けていく。
やがてすべての封を外し終え、木箱の蓋をあけ放つ。その中から男が取り出したのは一振りの刀。装飾の付いていないシンプルな黒漆の鞘に権力の象徴である鷲のシンボルが描かれた鍔。その辺の高価な刀や剣が霞んで見えるくらい気品と清浄感溢れる剣であった。
その刀を見た女性は、先ほどまで飄々と余裕の表情をしていた女性の表情が一瞬で真顔な表情へと打って変わり、男に問いかけた。
「………それがわっちを封ずるために造られた宝剣…?」
女は取り出された剣を見つめる。まだ納刀されており刀身部分が見えないが、刀身を纏っている鞘からは尋常ではないほどの霊力と封印呪が感じとれる。
直感的に感じ取った。 この宝剣は本物だ、と。
女は、実は以前にも同じように追い詰められた時があったのだ。その時に取り出された刀は豪華な装飾だけが施された見せかけの宝剣であって、女を封ずる力は無かった。そもそも、女を封じるには普通の宝剣や封印では不可能なのだ。女にとってそれらは全てガラクタも同然のものであり、女を完全に封じ込めるモノなど存在しないと思っていたのだ。
しかし、今、目の前に出された宝剣はただの宝剣ではないと瞬時に悟ったのだった。
(……どうやら、これまででありんすな……)
そう思った女は、フッと笑い……諦めたかのような悲しそうで、そしてどこか嬉しそうな微笑みを浮かべた。
これから起きることを理解しているはずなのに、真剣な表情をしていた女は笑ったのだった。
しかし、笑みを向けられた男たちの内心はとても穏やかではなかった。これから起きることを知っているはずなのに、尚、笑っている女に不気味に思い、恐怖を感じていた。本当に恐ろしい奴だ、と改めて感じさせられる。コイツは只者ではない。自分が置かれている立場を理解して尚、笑みを浮かべるその魂胆は一体何だろうと男たちに緊張が走る。
剣を取り出した男が鞘からスラッと刀身を引き抜いて、女に突き付けるように向ける。
「……拙者が鎌倉殿から鬼退治にと貸し授けられた宝剣……銘を〝鬼滅〟 これで其方を斬り封じるために参った」
刀身二尺六寸五分(約80cm)の大太刀で、金梨地鞘糸巻拵えの陣太刀様式の外装が施されており、惚れ惚れする美しさを醸し出す刀だ。
さすがは鎌倉殿。あちきを封印するために造らせ、この者たちに貸し授けた宝剣だと、女性は内心では感心していた。
「地に落ち闇へと堕ちた悪鬼――朱式部よ! 其方の罪を今ここで禊てしんぜよう!」
そう高々に宣言する男に女はクスッ笑った。それが気に入らなかったのか「何がおかしいのだ!」と男は女性に聞き返した。
「朱式部かえ? ……随分古い呼び名でありんすな」
「何だと…!?」
狼狽える男が面白かったのか、口元を隠すようにクスクスと微笑し始めた。何がおかしいのだ、と男は思ったが今度は口には出さず瞑んだ。やがて笑いを収え、口元から手を放し女性は静かな声をその言葉を発した。
「いまのわっちは〝酒吞童子〟 闇を総べる〝黒鬼〟でござりんす。 不滅の存在…――滅びんせん」
「「「—————ッッ‼‼」」」
「そ、そこまで堕ちたか…朱式部……いや、酒吞童子よ!!」
それが最後の言葉だな、と言わんばかりに宝剣を持った男が目の前で自らを「酒吞童子」と名乗る女性に斬りかかった。振り落とされた刃はすぅと吸い込まれるように女性の首元に迫り、やがてその首を斬り飛ばした。
斬られた胴体からは血か噴水の様に吹き出し、やがてその身の活動を停止させる。しかし、斬り離された頭部は、今だにニヤニヤと微笑みを浮かべていた。
死に際に女性が発したあの言葉。
首だけになっても、その言葉を再現するかのようにいつまでも微笑み続けていたという。
平安時代——京の町を恐怖のどん底に突き落とした悪鬼、その名を酒吞童子。
数多くの鬼を従え、都という都を荒らしまわった最凶最悪の鬼。
越後国の百姓の娘として生を受け、齢十の頃には大人顔負けの知能と体力、そして誰もが見惚れる美貌に育った。その美貌で数多くの男を誘惑し、誑し込み陥いれた。その気性の荒さもさることながら、決して表には出さず猫を被り、人の前では「いい子」を演じ続けたという。そのことに誰もが騙され、誰もがその本性に気づくことなく騙し通した。相手の心を見抜く目に加え、相手の心を読み、言葉巧みに洗脳してしまう、その異常な才覚により周囲から「鬼の子」と疎まれていた。
人を弄び続けた朱式部は人の不幸を啜り笑い、欲望を貪り喰らった。その心は既に「鬼」であった。心が鬼であれば身もまた鬼と化す。一心同体という諺があるように、心と身体はつながっているのだ。心が闇へと病んでしまえば、身体もまた不調となる。
異常な才覚と男を誑し込む美貌。朱式部は鬼と化すのはそう時間がかからなかった。
「鬼」となった朱式部はまさに敵なし。
その力は一振りで大男すら吹っ飛ばし、その口は人を簡単に惑わす堕とす。その美貌は誰もを魅了し、その声は誰もがひれ伏せた。欲しい者は全て手に入る。知恵で奪えぬのなら力で奪う。力で奪えぬのならそれ以上の力を持って奪って見せる。
——もはや彼女を止められる者はいなかった。
彼女はやがて仲間を集めた。自らの手足となって働く駒を作るためだ。
彼女と同じく「鬼」の資質を持つ者、「才」ある者、「力」なき者たちを自分の手足のように動く駒として傘下に収めたのだ。のちに京の都を恐怖のどん底まで突き落とす最凶の盗賊団と呼ばれ畏れられた。
仲間たちは彼女をこう評した。
最強の黒鬼〝酒吞童子〟と。
幾百の刺客に襲われても、幾百の武将たちと刃を交えても、決して倒れることを知らず、敗北すらもしらない。天すらその欲望で飲み込み、地すら見下すその姿――まさしく‶鬼〟
黒く長い髪を靡かせ、都を火の海へと変える。欲しい物は全て分捕る。都から奪ってきた酒を飲み、その美貌は老若男女問わず見惚れさせ、その背丈からは愛くるしさを漂わせる。その姿はまるで童子。
やがて彼女は自らをこう名乗るようになった。
〝酒吞童子〟 最強の「黒鬼」である、と。
旧姓――朱式部
彼女は天から与えられた異常な才覚を己の欲望を満たす道具として使い続けた。
女の武器を使い男を誑かし、貶めた
武才を生かして盗賊として何もかも奪った
配下の鬼を嗾け、都を血祭りに挙げた
大好物の酒を大男の様に頬張った
常に自らの欲望を満たし続け、やがて堕落し鬼と化した。
花の都として栄えた京の町を恐怖のどん底へと突き落とした鬼――酒吞童子を討伐すべく、帝は当時、最強の呼び声高き武士たちを束ねる征夷大将軍である源ノ頼朝へ鬼退治を命じた。
源ノ頼朝は帝の命を受け動いた。
鎌倉殿の命を受けた源ノ頼光、酒田金時、卜部末武ら三名の武士によって酒吞童子はその身を撃ち滅ぼされ、貸し与えられた宝剣「鬼切丸」にその精神を封印された。やがてその鬼を滅し封じた鬼切丸は時代と共に名を変え、鬼と化した童子を撃ち滅ぼした宝剣「童子斬り安綱」として鬼瓦一族によって代々封印され、受け継がれていく
——はずだった。
時は流れ、伝統は朽ち果て、時代は変わり、人もまた大きく変わる。
誰も伝説を信じる者は居なくなってしまった。伝説は迷信に。かつて居た日本各地を荒らし回った魑魅魍魎や妖怪、欲望に取り憑かれた人の末路、人外生物に化物といった存在は物語の中にしか存在しない架空の生物として認知されていた。
それが当然とばかりに疑いすら持たない時代へと変わってしまった。
その時代の煽りは当然のように顕著に表れるものだ。
情報が身近に存在する社会となった今、妖怪や人外生物は物語の中にしか存在しない娯楽のような存在と認知され、現実で口に使用であれば、それは中二病や、アニメ見すぎと馬鹿にされる。そして、それは人に限ったことではなく、かつて存在した宝剣や異能と呼ばれる特殊な能力、古来から語り継がれる伝説の武具や神器と呼ばれる伝統品まで、全てが架空の存在と認知されるようになった。
そして、その煽りは例外なく、時代の煽りを受ける結果となった。
代々受け継がれて来た宝剣「童子斬り安綱」
その宝剣を守護する一族「鬼瓦」
代々と口伝され、言い伝えられてきた「伝説」
護られて来た伝説の宝剣は時代と共に人々の記憶から忘れ消え去られた。
かつて英雄たちが打ち滅ぼし、その刃に封じた黒鬼——酒吞童子の存在すら信じる者はいなくなり、ただの古臭い迷信、架空の存在、書物の中にしか存在しないモノだと、変わってしまった。
やがて時代は平成を終え新たな元号――「令和」へと移り変わる。
「おじいちゃん! これが「どうしきりやすつな」?」
「そうだぞ。それが家に代々伝わる宝剣「童子斬り安綱」だ! なんでも昔のお偉い侍さんが鬼退治に用いた宝剣で、それを代々うちの神社が受け継いできてるんだよ」
「へー! すごーい!」
無邪気に喜びながら神社の宝物庫にあった古びた剣を見ている少年。その後ろにはこの神社の神主であろう白い和服を着た初老の男性が無邪気な少年を見て微笑んでいる。
「ねぇねぇおじいちゃん! このけん、抜いてみたい!」
無邪気に微笑みながら懇願してくる少年――孫の修の姿に孫馬鹿と化したお爺は少し悩んでいた。
(色々と曰く付きだとか、絶対に触っちゃいかん!抜いちゃいかん! とか言い伝えられてきたけど…所詮古い剣だろう。 伝承が本当なのかも真偽が分からない古物だしな…)とか色々と考えていた。しかし、下から見上げて懇願してくる孫の顔が見える。この笑顔には勝てそうにない…
(本当に鬼が封じられている訳がない… そもそも鬼なんて居る訳がないな…)
——所詮は古い言い伝えだ
「おういいぞ!」
気が付いたらそう返してしまっていた。
無邪気な笑みを浮かべる修が「ありがとう、おじいちゃん!」と喜びながら古びた剣を抜こうとその手が剣に触れる。
その刹那―――
《わっちの封印を解いたのは童かえ?》
その日、京都府某所にあった鬼瓦寺院が謎の消失を遂げた———
こんばんは!こんにちは!おはようございます! 趣味作家の岸辺轍です!
就活に追われ追われて…内定が貰えず焦って執筆を断念して読垢と化していましたが、なんと前書きにも書いてある通り『内定』を無事頂きまして…!執筆を再開したいと思います!
就活中に浮かんだストーリーをこの度、執筆を始めました!
もしよかったら、是非読んで下さいネ!
『面白い(かもしれない)!』
『続きが凄く気になる(かもしれない)!』
と感じたら是非ともその清き人差し指で『ブックマーク登録』『評価』してくださると嬉しいです。
次の投稿日予定→12月13日AM0:00 掲載予定!
※注意事項にも書いておりますが、本編に登場する寺院や酒吞童子、そのくだりといったモノは全て作者のオリジナルでございます。ご理解のほどよろしくお願いします。




