転生(らち)られちゃった。
おっす。おら誠一。
どっかにつえーヤツいねーかー?
とかふざけて言ってみたけど、今強い奴に出てこられると非常に困る。
何せここらの森には現時点で俺より弱い生物はいないと言っても過言じゃないんだよね~。
何言ってんの?頭トチ狂ったヤツの戯言か。とか言わないでよ!考えたりもしないで!!
俺は、異世界で名状しがたい見た目のドロドロ魔物に転生しちゃったんだから!
少し時間は遡る。
俺がクラブの練習を終えて家に帰る途中のことだった。
信号に差し掛かって、青に変わるまでボーっと待っていたら何と横から居眠り運転のトラックが!
そのまま弾き飛ばされて目が覚めたら‥‥‥って言う妄想していたのさ。
あの時の俺は入り込み過ぎてニヤニヤしてた気がする。
恥ずかしい。
とまあ、正直言って俺の名前が誠一でどっかの学校に通ってたって事くらいしか覚えてないのさ。
死ぬ間際の事は覚えてるんだけどね〜
そして現状は正に意味不明
俺は気付けば何故か泥になってた。
な?何言ってんだコイツってなるだろ?訳分からんだろ?
俺もなった。
気付いたら腕も無く脚もなく、そして身体も満足に動かせないとか、慌てた。
取り敢えずド定番、ドテンプレの鑑定ってあるだろ?
やってみた。
「鑑定!」(口が無いので思考です)
シーーーーーン
「アナライズ!」
シーーーーーン
「我を表せ!」(適当)
シーーーーーン
反応が無い。無いのだ。
何かあってもいいだろが!おい!コラ!責任者出て来いや!
そう思考で文句垂れてたら
『はい。元誠一担当です。よろしくお願いします主様。』と来た。
「は?うん。え?マジで何なの?」
俺はそう返すのが精一杯だった。
そしてその声は俺の質問を無視してなのか?答えたつもりなのか?話を進め始めた。
『ようこそ誠一様。貴方様はこの、【最底辺から這い上がろうぜっ!そして我らの元へ集え!若人よ!】に強制参加させられました。』
何それ。
いや!落ち着け!落ち着け!
俺はステイクールを信条としてる男!
クラスから、お前冷めてるなーとか言われてるほどクールだ。
‥‥‥覚えてないけど。
ふぅ、落ち着いた。
「で?なんで俺はその〜、え〜と?『最底辺から這い上がろうぜっ!そして我らの元へ集え!若人よ!です。』そうそう!それに何で強制参加させられてんの?」
『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥くじ引きです。』
タップリ引っ張った後に端的に答えられた。
ってクジかよ!
因みに確率はどのくらい?
『‥‥‥100年間で地球上で生まれた生物の数分の1です。』
はぁぁぁ?人間だけでも余裕で億超えるだろ!
犬みたいな小動物とか魚とか入れるとさらに増える!
『人間の目には見えない微生物を含めます。』
いや、増殖した1匹1匹を含めたらもうヤバイ確率だろ!
無量大数超えてるだろ!
そんな確率で選ばれるって‥‥‥まいっか。
こういうことは後で文句を言っても無駄だし。
だけど‥‥‥一体どうなってんの?
何?ここって異世界?転生やら転移のほうが分かりやすいわ。
ってかその〜最底辺から〜ってやつはどこの誰が考えたんですか?
『守秘義務によりお答えできません。』
え〜そう来るか〜。
で?俺はこれからどうすればいいわけ?
『それではチュートリアルをインストールします。』
ピーガガガギーーグギューPPPィ〜
異常な音が聴こえて暗かった視界にパッと映像と音声が流れて来た。
パーーパッパっ!パーーパッパっ!
そんなドラ○エに酷似した効果音とともに映像が始まった。
長い。
くそ長い。何時間掛かってんだよ!
まあとりあえず物語を纏めるとしよう。
どうやらその最底辺から~ってやつはどっかの神様が有望なやつを集めて後継者にする試練みたいなものらしい。
これが気の長いこと長いこと。
この身体は寿命とかがなく、初期値が最弱な代わりにどこまでも強くなれる身体らしい。
そして俺と同じ立場、と言っても地球上の生物じゃなさそうだが、そいつらも同じ様な状況で何年掛けてもいいから神と同じ強さになるまで待つというスタンスらしい。
だからと言ってその強さになるまで生き続けるのはかなり困難っぽい。
今の、と言うか俺を拉致った神は大体3億年掛けて神になったらしい。
その際、その試練に多くの世界から参加者がいて、その数優に1億越えだったが、その中から100年まで生きた数は10万人にも満たなかったと。
怖っ!それも世界によっては志願制のとこもあるってよ。
こんなんにわざわざ参加するとか頭トチ狂ってるとしか思えねわ。
そして俺はそれに強制参加だってさ。
‥‥‥ふざけんな!!
『すいません。』
あ、別にあなたに怒ってるわけじゃあ無いので。謝られるとなんか‥‥‥ねえ。
まあいいや。とりあえずここ動こうか。
とりあえず俺は今一体どういう姿なんだ?
『形状は不定形。主様の世界で言うスライムが一番近いですが、ハリもなく、色は土色、生体ピラミッドの最弱に位置しているほど弱いです。』
まじか。んじゃあ転生特典でスキルとかそういうの無いわけ?
『転生特典というものは基本的に存在しません。試練に参加する人にインストールするには手間がかかりすぎますし、ほかの方々は英雄だったり勇者だったり、生まれつきの特殊能力を持っているのであまり必要ないのです。』
え~じゃあどうやったら強くなれんの?
『先ず必ず強くなる方法は2つあります。』
『1つ目は生物を殺してその魂を吸収することで、魂の格が上がります。
そして格が上がる毎にスキルの獲得スペースが生まれます。』
獲得スペースって事はスキルってのも自力で獲得しないといけない訳ねー。ハードモードにも程があるわ。
『そして2つ目が肉体の魔力量。
魂と違って肉体強度を高める方法です。』
うむ。でどういう事だ?
『‥‥‥人間で言う騎士で例えますと、魂の格を上げることは鎧に包まれた身体自体を鍛える事で、肉体の魔力量を増やすという事は身体を包んだ鎧を鍛える事です。』
あーそう言えば魂が強ければ肉体がぶっ壊れても逃げられるってチュートリアルで言ってたな。
『魂が貧弱ならばすぐに消滅します。そして魂の格を上げるのは神格を得るために絶対必要な事でもありますので、魂の格を上げようとする方が多いです。』
へ〜。でも魂の格って生物殺さないと上がらないんだろ?
『肯定です。』
死ぬんじゃねえの?普通。
『死にます。魂の格を上げようとして、他の生物に殺されたのは参加者が死亡する原因top3に入ります。』
ヤダね。それ。
とまあじゃあ俺のスタンスは決まった。
『‥‥‥それは?』
フッ、決まっているだろう!
逃げて逃げて冬眠します!
『‥‥‥ハァ。』
あ!おい!今呆れた!?何だ今の溜め息は!
『何でもありません。気のせいです。』
む、まあ良いや。てかさ!周りが見えないんだから移動しようが無いだろ!
『いえ、恐らく参加者のほとんどは自力で周りの地形を把握するすべくらいは持っているはずです。
空気の振動や心眼という物ですね。』
‥‥‥は〜。どのみち俺には使えないじゃん!
『私がサポートすれば身体の表面で光を識別、目の様にする事もできますが実行しますか?』
え?そんなん出来んの?よっ!流石!
『‥‥‥実行しますか?』
あ、はい。スイマセン。
怖っ!メッチャ冷たい声だったよ!?
『それでは色覚生成を実行します。』
暗かった俺の視界が明るく広がった。
オー明るい。眩しい。
ってここは森か?
俺の視界に映っていたのは緑が生い茂った森だった。
遠くには俺の5倍は背丈が大きい熊が見える。あ、あいつ。こっち見なかった?
やばっ!逃げよう!・・・ってこの身体動かしずれえ!何でこんなスライム型なんだよ!?
『試練に挑戦する生物は千差万別であり、それぞれに得意な身体がありますので、設定が面倒なのです。』
あっ!やっぱそんな理由かよ!
うわっ!来たっ!
俺は刺激しないようにゆっくりまったり移動していく。
『あれは獲物とすでに認識している目ですので、早急に逃げるべきと提案します。』
それを早く言ってくれよ!!
慌ててモゴモゴと動き出すが、この身体遅ぇ!!
ヤベェー!!詰むっ!詰むぅ!!
『命の危機に生前のゲームがしたいと叫ぶ生物も珍しいですね。』
ディ○ニーツムツムじゃねぇー!!
うわぁーー!!掠ったぁ〜!あの熊野郎石投げて来やがった!!
『正確にはメスですので野郎は不適格かと。』
そういう事言ってんじゃないNO!!
もうヤダぁぁ!!へ、へ、ヘルプミーィィッッ!!!!