レベル8・話術スキルは低めです
「でもバカ兄はどうせ外に出ないんだからお金なんてあんまり必要じゃないでしょ、ニートだし。友達もいなさそうだし」
さらっと言われた。普通に酷い。
「うぐ……でもなぁ……俺だってコツコツ貯めた小遣いで新作ゲームや漫画を買ったり……そんなささやかな幸せさえ許されないのか?」
「む、新作ゲームに浮気するなんて酷いではないか、匠くん。私との冒険は遊びだったのか!」
「頼むからちょっと黙っててくれよ……」
ゲーム内でリジーの性格を設定する際『少しヌケたところがある高貴な美少女騎士』にしなければ良かったと俺は心の深いところで今になって後悔した。
「ま、そういうことで文句なさそうね。あたしイベント周回で忙しいのよ、だからこの話はこれで終わり!」
「ナツキはナツキでなに勝手に纏めようとしてんだよ。文句だらけのありまくりに決まってるだろ!」
『チャリーン』
「めんどくさいからって課金完了の音で返事するのやめろ!」
なんというぞんざいな扱いだ。ニートには人権すらないのか……
「じゃあ、あたしは部屋でソシャゲッティーなんで晩御飯の準備よろしく」
「なんだよソシャゲッティーって……というか、ちょっと待て!」
と言ってみるものの待ってくれるはずもなく、ナツキは俺を無視してさっさと居間を出て行ってしまった。
おそらくこの妹を相手に俺がイニシアチブを握れる日は一生訪れる事がないだろう。そう確信した瞬間である。
……まぁ、いろいろと納得のいかない点が目立つ家族会議ではあったが、ひとまずリジーをこの家に住まわせる点についてはナツキの了承を得た訳なので良しとするべきだろう。
実際そうとでも思い込んで折り合いをつけないとやっていられない。グッバイ、俺の小遣い……
大きな溜息が俺の口から漏れ落ちた。
そんな俺を見て、リジ―はふふっと微笑んだ。
「そんなに面白いか、いまの俺の顔?」
メシウマするには丁度いい感じの表情をしていると思う。
「ああ、いや、すまない。キミの不幸を喜んでいるわけじゃなくてだね、なんていうか少し安心したのだ」
「安心?」
「兄妹で仲が良いのだなと思ってね」
「いいように見えたか?」
本当にそう思っているのならリジ―は眼鏡をかけたほうがいいと思う。
一方的に説教されて小遣いを減額されただけだぞ、俺は……
「キミがなんと言おうと私には仲の良い兄妹に見えたよ」
「そうかぁ?」
「うむ、これで私もあの人に嬉しい報告ができるというものだ」
「なんだよ報告って」
なんとはなしに俺が聞くと、リジ―は慌てて口元を手で覆い隠し、苦虫を噛み潰したような顔を見せた。
しかしそれは時間にするとほんの一瞬で、すぐにまた『間の抜けた美少女騎士』の表情に戻るリジ―。
「私を”ゲート”でこの世界に飛ばしてくれた司祭様に報告するのだよ。匠くんとナツキくんは仲が良いですよ、とね!」
にへらと笑って言う。
「はは、なんだそりゃ、そんな報告されても困るだろ。てかそもそも向こうには帰れないんじゃなかったのか」
「ハハハ、言われてみればそうだったね。ハハハハ……」
笑いつつ、ここではないどこかにフラフラと歩いていく。
「おい、どこ行くんだよ」
「ト、トイレだが?」
「ああ、それならここを出て右いって左な」
「こ、こころえた……」
妙にぎくしゃくとした足取りで廊下に消えてゆくリジ―の後ろ姿を見送りながら俺は思った。
変なヤツだな、と。