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五月の一風景
透き通るような青空が、無限に拡がって街を包み込んでしまった。まことに滑稽。焦げ茶色のマンションが子供の玩具みたいに転がっている。煙の立たぬつまらない煙突が乾いていた。それは一本だけの話。動かぬ景色。だけど車の走る音が流れる、耳のどこか端っこで。でこぼこな家並みが肩をよそあって、窮屈そうである。夏はまだ来らぬが、そうかと言って見れば、日差しは燦々と照り輝いて、アスファルトを真っ赤に焼いている。アスファルトはまた煌々と眩しくて、そこに黒い影が差している。暑さがやってきた五月の一風景。




