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活動報告にて更新に関して記述しております。
訂正しました
竜→龍
精霊達から習ったことにドラゴンの話もあった。この世界で最強種と呼ばれ、古き者と言われるリュウ種。リュウ種はドラゴン型と龍型の二つに分かれる。
龍型はヘビのような姿に髭と角を持ち、口の上側から一対の長い髭がのびているのが特徴である。また穏やかな性格のものが多く、人間や他の種族にも友好的なものが多い。故に神として崇められたり、神聖なものとして扱われる。
対してドラゴン型は、四本足で翼があり、鱗で覆われた硬い皮膚と鋭い牙をもつのが特徴でブレスと呼ばれる属性を纏った息を吐く。気性の激しいものも多く、龍型とは違って邪悪なもの、倒すべきものという印象が強い。しかし、亜種などは原初のドラゴン型よりは弱いため人間が飼い慣らし、騎竜として使う国もあるという。
そんなリュウ種の原初のドラゴン型がこんなところにいるとは思っていないかった蒼麟は唖然と相手を見上げていた。
《おい、聞こえてるのか?小娘。聞こえてるなら返事をしろ、愚図が。》
頭に直接語りかけてくるこちらを馬鹿にしたいような口調にムッとする。
「小娘でも愚図でもない。私には父様からもらった蒼麟という名前がある!」
名を名乗りながら少し怒った声でいつもの口調を砕いて反論する。ドラゴンは気を悪くするどころか蒼麟が名乗ったのを聞くとニヤリと口元を笑わせ、してやったりという表情を浮かべた。
《そうかそうか。お前の名はそう言うのか。なら…さっさと家に帰れ、“蒼麟”。》
「やだ。名乗らない奴の言うことなんか聞くか。」
《っ!?》
何やら言葉に力を持たせたようだったが、そんなことも意に介さず即答した蒼麟にドラゴンは目に見えて狼狽える。そんな様子を気にすることなく、蒼麟はスタスタとドラゴンに近づくが、今度は反対にドラゴンが少し逃げ腰になる。しかし、そこからは動かず、面倒だとばかりに近くに来た蒼麟を見下ろしているが、当の本人はそんな視線よりもドラゴンの下に施されている魔方陣に目がいった。
「これは…父様の施したもの?……これ、貴方を封じてるんだ?」
《一目見ただけで見抜く、か。本当に面倒な小娘だ。》
「小娘じゃなくて、蒼麟です。それよりも貴方の名前は?」
《……。》
「ふーん、人の名前は聞いておいてだんまりなんだ、リュウ種って馬鹿なんだ?」
《ふん、勝手にそう思えばいい。》
口調が完全に砕けて話している蒼麟だったが、相手が気にしていないためそのまま話し続けることにした。相手よりも小物の蒼麟の軽い挑発にも乗らないところをみると、相当上位なのだと分かるが、何故こんなところに封じられているのかが分からない。
《さっさと帰れ。でないと、あいつにバレて怒られてもしらんぞ。》
前足を軽く振り、早く帰れというように視線を向けられる。目の前の光景で何故だか既視感が浮かび、また体の奥底で何かが揺らめく。同時に生前にも現在にも見たことのない記憶がフラッシュバックした。
『今よりこのヴェルガ、あなた様の守護者としてこの身を捧げる所存です。改めましてよろしくお願い致します、ーーー様。』
一瞬のフラッシュバックとともに聞こえた敬意が込められた優しげな声。記憶ははっきりと見えなかったが聞こえたその声はあまりにも目の前のドラゴンと酷似していて。
「ヴェル…ガ…?」
《っ!!その名を何処で聞いた!?》
無意識に聞こえた名前を紡ぐ。聞いたドラゴンは怒気をはらんだ声で言葉を発しながら顔を近づけるが見えない壁に阻まれ、舌打ちする。
《…答えろ。何故その名を知る。あいつから聞いたのか?それとも相手の名を知るスキルでもあるのか?答えろ小娘!!》
「っ!?」
今まで感じなかった恐怖が蒼麟を襲う。しかし、逃げようとは思わず、その場にとどまり続けた。
「し、知らない。ただ、何が見えて、貴方に似た声が…そう言った…。」
恐怖で声が震え、涙が目元に溜まるが相手を見上げ続ける。ハッと我に返ったのかドラゴンが怒気をおさめると蒼麟の強張っていた体からもようやく力が抜けた。静寂が辺りを支配するも蒼麟はそのまま相手に背を向けると小走りでその空間から扉を抜けて階段を登っていく。黙ったドラゴンがその雰囲気から帰れと言っていたから。ここで残ればもっと不機嫌にさせてしまうと本能的に悟ったためだ。
階段を登りながら先程感じた恐怖に身震いしながらも、ここにはもう来たくないという感情はなく、またここに来なければ行けない気がすると思いながらもその場から静かに去っていった。