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神獣の後継者の秘密  作者: 雅樹
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 頭の下にある柔らかい感触と髪を撫でる優しい手を感じ、少女の意識はゆっくりと浮上させた。意識はまだはっきりとはしないものの瞼を上げると此方を見下ろしている細身の穏やかな女雰囲気性の藍色の瞳と目が合う。

 

 「目が覚めましたか?蒼麟。」

 

 「そう、りん…?それにそのこえ…しえる…?」

 

 目が合った女性の声は生前に側で聞いていたもので名前を呼べばシエルは嬉しそうに微笑み、頷く。曖昧でその姿が見えなかったはずなのに今はしっかりとその姿が見えている。快晴の空を思わせる鮮やかな青のくせのないストレートの髪を腰の辺りまであり、絹のようにキメの細かい肌に幾重にも重ねて身を覆う薄物は祭司を司る巫女装束に似ていると生前の世界の人間ならおもうことだろう。そんなシエルの姿は優美でなまめかしく、同性ながら見惚れてしまう。

 

 《蒼麟という名は我がお前に付けた。気に入らないか?》

 

 すぐ近くから聞こえた声に我に返る。慌てて起き上がりそちらを見ようとするが軽い目眩に襲われ、バランスを崩す。すぐにシエルが背中に手をのばし、支えてくれたことで倒れることはなかった。改めて視線を声の方へと向けると獣が何処か安心したような雰囲気を纏っていた。

 

 「あの、ありがとう…ございます。あたらしいなまえをくれて…。」

 

 《気にするな。お前は我の同族(かぞく)となった、故に遠慮はいらん。それにお前の精霊達も目を覚ますのをずっと待っていたのだからな。》

 

 「かぞく…。…ほかのせいれい?」

 

 「そーりん!!!」

 

 獣の言葉が理解できずにいるいるとまたよく知った少女の声が新しく名付けられた名を呼ぶ。獣からまた視線を別なところに移すとそこには3人の人物が立っていた。

 

 「もしかして…せふぁ、りーす、あーく?」

 

 3人もシエル同様嬉しそうに微笑み、肯定するように頷く。

 最初に目に止まったのは大柄な体格に燃える炎を連想させる金髪まじりの赤毛は量が多く肩にかかるくらいの長さだがクセが強い。琥珀色の瞳は安堵の色を宿しながら蒼麟を見ている褐色肌の男。露出の多い身軽な服装ながらも籠手や胸当てなどの身に付けている装備は金の紋様が彫られた深紅。彼が纏う親しみやすさを感じ、“セファ”だと蒼麟は直感的に感じた。

 次に目に止まったのは右前に立つ少女。金髪のカーリー・ヘアに大きな翡翠色の瞳。10歳前後の見た目の愛くるしい容姿をしている。くるぶし丈のシンプルな黄緑色のワンピースの着ており、ブンブンと蒼麟に手を振る。シエルが側にいるため彼女がリースであり、先程声をかけてきたということになる。

 そんなリースを落ち着けというようにたしなめている少年の姿が最後に目につく。リースより幼い見た目ながら元気な彼女より落ち着きを見せていた。さらさらな短い黒髪ながら前髪の一房が明るい茶色になっており、瞳はその一房と似た色の赤みがかった茶色。動きやすさを考慮されたシンプルな上下の黒い服を纏っている。

 

 《彼らはお前が生まれながらに持っていた稀有な能力、地上ではスキルと呼ばれるものによって実体を与えられた。》

 

 「すきる?」

 

 「…人型付与という珍しいスキルです。蒼麟が名を与え、その名を呼んだ者。もしくは元々名をもっているが人型を持たぬ人外者の名を呼んだ際に人の姿を与える能力です。仮に人型を持った人間以外の者には身体強化の付与が与えられますが、人間は対象外であり、対象はそれ以外となりますね。まあ、発動条件は蒼麟となんらかの縁があり、蒼麟の信頼などを向けられた相手にしか発動はしません。」

 

 「???」

 

 「分からねぇだろうし今はそんなのがあるって思っとけ。ゆっくりと俺らがいろいろと教えてやるからよ。前みたいにな。」

 

 「そうそう、そーりんが倒れたのも私達の名前を呼んだことで無意識にスキル発動して魔力枯渇しちゃったんだし。そうならないように教えてあげるわ!」

 

 「共生している我らが今度こそ必ず守る。安心しろ。」

 

 側にやって来た精霊達がそれぞれ言いながら蒼麟の頭を優しく撫でていく。生前に触れることの出来なかった相手に触れられるという体験はなんだかくすぐったい気分になるが、嬉しそうに微笑むのだった。

 

 《それで、蒼麟よ。お前に頼みがある。》

 

 ほのぼのとした雰囲気に淡々とした口調で獣が言葉を放つ。なんだろう?と首を傾げながら獣を見れば先程とは違い、申し訳ないような雰囲気で近づいてきた。

 

 《また魔力枯渇を起こし、苦しめるかもしれぬが我にも名と姿を与えてくれることは可能だろうか?この姿ではお前相手にきちんと対応出来る気がしない。故に我は名と人の姿を望む。…良いだろうか?》

 

 相手の言葉にキョトンとした顔になる。難しい言葉ばかりでほとんど理解は出来なかったが、名前が欲しいというのは理解できた。自分に新しい名前を与えてくれた相手の願いを拒否するという選択はない。

 

 「はいっ!」

 

 元気よく了承すれば獣も何処か嬉しそうにしていた。



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