表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

日常は放課後から

夕方。

物静かな風景、周囲の机や教室がオレンジの光を微かに輝かせていた。

「よっと。」

そんななかで、私はぽつりと置かれた鞄を手に取る。

もちろんこれは私物。

私は朝に置いたままにしたこれを取るために屋上から教室に戻ってきたのだ。

「はやいとこ帰ろう。確か夜の七時から見たい番組があったはずだ。」

いつの間にか途中から授業を抜け出して屋上で休んだり寝たりすることが常習化してしまい、気付くと私が目にするのは、決まって朝の騒がしい教室の風景かオレンジの風景の二つしかない。


ガラリと扉を開けて、教室を出ようとしたその時…。

「ちょっといいですか。」

横を振り向くと、そこには見知った人影があった。

「…こんにちは先輩。」

「……。」

プライドの高さを感じさせるツリ目にブラウンがかった長い金色の髪からはお嬢様のような風貌を感じさせる。

引きつった笑顔を浮かべながら無言を貫いている彼女は水無月 雫。

一見すると、年上のように見える彼女は実は私の後輩だ。

見ただけで彼女が疑問の表情を浮かべているのが分かる。

「もう夕方の五時半ですよ?

どうして、授業がとっくに終わったはずの教室から出てきたのですか?しかも鞄まで持って…。」

「いや、これは…。」

まずい…。

生徒会の役員である彼女にこの場を見られたのは問題だ。

何て言い訳しようと考えていると、そこに慌てたように声を掛ける少女の影があった。

「あぁ、やっと見つけた!!」

まるで、失くしたものをようやく見つけたかのように安堵した声をあげながら彼女は自分に駆け寄る。

「まったく、授業が終わった途端消えちゃうんだから…。探す身にもなってよね?」

「あ、うん…。」

その言葉を聞いて、水無月がきょとんとした表情を浮かべる。

「片桐先輩。そうなのですか…?」

「ごめんね、心配かけさせちゃって…。あとでちゃんと言っておくから…。」

「え?それってどういう…。」

すると、彼女は私の手を握ってそそくさと急ぎ足で歩き始めた。

「それじゃ、私たちはそろそろ帰るから!生徒会がんばって!」

「え…ちょ、ちょっと!!」

混乱した声を背に、逃げるようにして場を後にする。


「ふぅ…。」

校舎に向かう途中、

「まったく、ちゃんと授業を受けないからこうなるんだよ?」

「いやぁ、いつも悪いね。」

「少しはちゃんと授業うけてよ?もう…。」

同じクラスメイトの片桐綾香、丸い窪みに落ち着いたブルーの宝石がはめられたような美しい瞳。

そして落ち着きがかった茶髪からは彼女の性格を感じさせる純粋な雰囲気を醸し出されている。。

何かと仕方ないねといっては私を甘やかせてくれる彼女に何かと依存してしまうのが、昔からの私の悪い癖だ。

「ごめんよ…綾香…。」

「…いいよ。ただ、あまりこんなことしないでね?」

彼女から少し悲しそうな声が聞こえたが、どこか違う感情を浮かべているのではないか。

なぜか不意にそんな気がしたのだが、私の位置から彼女の長い髪に隠された表情を伺い知ることが出来なかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ