緑色の恋
好きな野菜はもやしです。
昔、そう俺がまだ小さかった時のことだ。
育ててくれたじいさんが言っていた
「大きく育て」
そうして俺は大きく立派に育ち、じいさんのトラックに揺られこの都会へ出てきた。
「達者でな…。」
じいさんはそれだけ言うとトラックへ乗り込み家へ帰っていった。
ここで俺はひと皮もふた皮もむけた男へ成長するんだ…!
「本日~キャベツ大特価!!!!一玉90円!!90円ですよ~奥さん買ってってー!!!嬬恋キャベツ!!美味しいよ~!」
都会とは恐ろしいところだ。じいさんがトラックを運転しながら言っていた。本当にその通りだと思う…。正直俺は都会を舐めていた。見渡す限りの人・人・人!!!!(主にオバハン)
田舎で陽の光を浴びぬくぬく暮らしてきた俺には、はっきり言って辛い。
「おんどりゃァああああそこどかんかクソアマ共ぉおおおおおこのキャベツは私のじゃぁああ!!」
俺が人の群れに怯んでいたところ一際勢いのあるオバハンがこちらへ突っ込んできた。
「このオバハンだけは無理っ!!!」
「ちょーっと失礼お姉さん!」
あわや、俺をそのオバハンの脅威から救ったのは一人の青年だった。
「レタスもいいけど今日はキャベツな気分。ロールキャベツ食べたい。うむ。」
そんなことを言いながら俺を連れて青年はキャベツ売り場から立ち去った。
今日一日で俺の世界は段違いに広がった。見たことのない仲間(野菜)たち。眼力の鋭いヤクザ共(魚)獰猛さを匂わす若者(肉)そして俺を輝かせるアクセサリー達(調味料)全てが新鮮だった(生鮮食品売り場ですから)
そんな新しい世界に魅了されていると青年がふと立ち止まった。
「キャベツとレタスの食べ比べも楽しそう。レタスお安い…。これにしよう。」
運命ではないか…そう思うくらいの美人が青年の手により俺の目の前に降りてきた。
「なんてみずみずしい方だ!ご出身は!?」
「まあ、なんて高原を吹きわたる風のように爽やかなお方!えっと群馬の昭和村です。」
「俺も!!群馬県です。一緒だ!!嬬恋だから谷を超越えたすぐそこですよ。」
こうして俺たちはレジを通るまでずっと話していた。
「私、あなたのような素敵な方に出会えて本当に良かった。田舎から出てきてこんな都会でやっていけるか不安だったんです。」
「俺も、都会に出てきて早々オバサン達にもみくちゃにされて都会って怖いって思ってたところ君にあえて良かった。」
「私達ずっと一緒にいましょうね。」
「ああ。」
しかし、現実は甘くない。俺は数分前俺を手に取った時の青年の言葉を思い出した。
「ロールキャベツ食べたい」
現に青年は肉コーナーで挽肉を購入していた。 コンソメまで買っていた。確実にローリングされる。
「このままだと彼女と一緒にいられないっ!!!」
「パン粉と~卵を入れると~ふんわりとしたお肉に~なるよ~」
俺がもたもたしている間に青年は肉の準備を始めてしまった。
「私達一緒にいられないの?」
「くそ。俺はどうしたらいいんだ!!!」
すると、困惑している俺を見ていたひとつのオレンジ色の影が話しかけてきた。
「儂が力になろう。なぁに、若者の恋を応援するのも年寄りの役目さ。」
「本当か!?で、でもどうやって。」
「簡単な事さ。コンソメをダメにすればいい。そうすれば青年はロールキャベツを煮込めない。ハンバーグを作るしかなくなるのさ。」
「そ、そうか!!!コンソメを…。ありがとうおっさん!」
「そうと決まれば、コンソメさんのところまで行きましょう。」
こうして俺達はコンソメさんの所までやってきた。
「カクカク云々で俺はロールキャベツになりたくないんだ!!!頼む!協力してくれ。」「今までお前らみたいな熱いカップル見たことないよ。いいぜ、俺らは隠れてる。お前ら仲良くサラダにでもなりな!」
「コンソメさんありがとう!!」
「お肉~キャベツ~玉ねぎ~パン粉~卵~…あれっ!?コンソメがない!!ちゃんと買ってきたのになーおかしい。」
よしっ!作戦どおり!!
「しょうがない。ハンバーグにしよ。キャベツはレタスとサラダね。」
「やった!!!私達一緒にサラダになれるわ!」
「あぁ。これでずっと一緒だ!」
「キャベツさん!」
「レタスさん!」
こうして俺達はサラダとなって美味しくいただかれたとさ。めでたし!終われ!
コンソメは後日発見されて人参とともにコンソメスープになったってよ。




