# 3
琴葉、琴葉、たす、けて・・・・・・
こういう時、私の力は何の役にも立たない。
膜の中に酸素があるわけでもない。
どれぐらいもがいていただろう。
気がつけば、膜は消えていた。
「!?」
やばい。
死んじゃう。
諦めかけ、重たい水に抵抗するのをやめた、その時。
私の周りに、無限の小さな泡の粒が現れた。
─な、なに?!
小さな光る粒たちは、水の中に一瞬沈んだと思ったら、私の体をくすぐりながらすごい勢いで上昇していく。
あれー、私もしかして死んじゃった?
そんな綺麗な光景を見て不吉なことを考えていると、私の腕と首の後ろには誰かの手の感触。
頭を支えられながら脇に手を入れられ、力いっぱい持ち上げられる。
ぼんやりとした視界の中で、見慣れた横顔が見えた。
─こと、は・・・・・・?
顔が水面に出る。
「ぶはっ、けっふ、げほげほ、げほっ・・・・・・」
「神谷ー!」
「つばめっ」
「おい、誰か助っ人!」
「琴葉ちゃんっ、こっち!」
一度に色々な声が聞こえる。
飲んでしまった水を出そうと必死で咳き込むが、水の中にいるのでなかなかうまくいかない。
琴葉が必死で私をプールサイドへと運んでくれていた。一生懸命自分で手足を動かして進もうとしたけど、体に力が入らないし、動くと琴葉が私を運びにくくなる。
私はただ、咳き込みながらプールサイドに連れて行ってもらうことしかできなかった。
***
ぐったりした私をマットに乗せて日陰に持って行ってもらう。先生たちが保健の先生と母に連絡していた。
私はその間ただマットに横になり、一人目をそらして佇んでいる命の恩人を見つめていた。