殺人(200文字)
やだ、やめて!
私のそんな願いなど虚しく、彼の手にしたナイフは深々と父親の胸に吸い込まれていった。
スポットライトが照らすステージの上で、彼は叫ぶ。ついに殺してやったぞ、と。
もう後には引けない。
彼と、そして私は警察に追われる身となったのだ。
父親を殺す事に反対した私も、今では彼と同じく立派な殺人犯。
やがて彼は叫び疲れたのか、ステージを降りた。
今度は私の番か。
父親の血で汚れた両の手を見ながら、呆然とした。
二重人格の主人公が、父親を殺す話。
叙述ものの試作品でした。