表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらの空には銀の星が降る。  作者: 越流 涙
花の字を持つ女の子
2/5

#2 2014年 4月20日 『病室』


日が沈む。

橙色の光が真っ白な病室に射し込んでいる。

4月の終わりをすぐそこまで控えた日の午後は、なんとなく肌寒い。

俺の向かいの男は、窓の外を見つめながら微笑んでいる。

その目には、やはり幼かった日の情景が浮かんでいるのだろうか。

数時間前、雨が降ったせいで散ってしまった桜を見ていると、向かいの男が寂しそうに呟いていたことを思い出す。


「桜、散っちゃいましたね」


4月ももう終わりが近い。

たとえ雨が降らなくても、桜はすぐに散っていただろう。

それでも、彼の表情は暗く、悲哀に満ち溢れているように見えた。


「桜に何か思い入れが?」


はい。

そんな風に答えた彼は、ぽつりぽつりと話してくれた。

彼が幼い頃に出会った、“花の字を持つ女の子”の話。


「13年前が小学1年生なんて、やっぱりあんた若いね」


そう言うと、彼は困ったように笑った。


「えぇ、まだ18ですから」


18歳にして、彼の命は残り僅かだという。

詳しい病名は何も教えてくれなかったが、自分の未来は死しかないと、そう言っていたことがあった。

信じられない。

彼にはまだ輝かしい未来があってもおかしくないのに。


「…それで、その出会いからどうなったんだ?」


小学生の頃に出会った彼女との日々は、彼がこの世界に残している唯一の未練であり、今を生きる希望だと教えてくれた。


言わなくてもわかる。

俺の前に座っているこの男は深く、どこまでも深く。

その女性に恋をしているのだろう。


再び、彼は口を開いた。

13年前、初めてその彼女に出会い、そうして人生のほんの一時。

輝いていた青春の日々の思い出を語った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ