気がついたら猫の王国にトリップしてました。
―――チリンっ…
いつものように街を歩いている時だった。
音の方に振り返ってみると、青みがかった灰色毛の、透き通った碧の眼をした猫がこちらを見上げていた。
(猫ちゃんだ。鈴着けてる…)
私はしゃがみこんで、猫に着いている鈴を手に取った。
その瞬間―…ピカッ…
鈴が光ったと思ったら、私はスゥっと意識を手放した。
「ニャァー…」
「んん…」
猫の鳴き声で、私は目を覚ました。
先ほど出会った、碧の眼をした猫がこちらを見つめている。
起き上がって、見渡すと辺り一面に草原が広がっていた。
「…ここは?」
風が吹いてくる方に歩いてみると、崖で行き止まりだ。
下を見ると、綺麗なお城のような建物と街のようなものがある。
自分の住んでいる日本にこんなところはあっただろうか…。
「ここは…どこ?」
振り返ってみるが誰もいない。
いるのは、あの猫だけだ。
「猫ちゃんに聞いてもわかるわけないか。」
私は微笑を浮かべながら少し残念に思った。
すると、下から声が聞こえてきた。
「ここは猫の王国『CATS・PARK・ISLAND 』だよ。」
「えっ!?誰!?」
きょろきょろと辺りを見回してみるが、あの猫以外に人はいない。
昨日テレビの特番で見たお化けを想像し、ビクついていると…
「ここだよ。ここ。猫だよ。」
「エエェェ!?」
猫は私の足元まで歩み寄って言った。
(ね、猫がしゃべった…!?)
「あぁそうだ。貴女の世界では猫は一般的にしゃべらないことになってるんだったね。」
私は猫の言葉が理解出来ず、目を白黒させていた。
「いやいやいや!
い、一般的にしゃべらないことになってる…というか、人間以外の動物は少なくとも人間の言葉はしゃべらないわけでして…!
…イルカとかは言葉あるらしいけど…。」
「じゃあ、貴女はこの世界では猫の言葉がわかる、と言った方がよさそうだね。
あ、申し遅れた。ボクはルーシャ。あの城に仕えてる。」
そう言うと、ルーシャは私に自己紹介するように言った。
私はまだ整理がつかない頭で簡単に自己紹介をした。
「わ、私は、結城咲菜。ち、地球の…学生。」
ルーシャは自己紹介を聞き終えると、崖とは反対に歩き出した。
「え?…ちょ、ちょっと!!どこ行くのよ?」
「サナさん、城に行くよ。付いてきて。」
「えぇ!?」
(え!?お城に行くって…ちょ、私、侵入者で捕まえられちゃうとか!?いやいや、猫ちゃん相手に人間が捕まるワケない…はず。)
そんなことをぐるぐる考えてみる。
少なくともここは私の知る地球ではない様子。
ここで頼りに出来るのは、私をここに連れてきたあの猫だけ。
私は仕方なくルーシャに付いて行くことにした。
しばらくルーシャに付いて歩いた。
しかし、一向に城に着く気配はない。
そのうち段々と辺りが暗くなっていく。
「ね、ねえ、ルーシャ?
まだお城には着かないの?
だいぶ暗くなったと思うんだけど…」
「もうすぐだよ。すぐに城の庭に入れる道を歩いてるんだ。
サナさんをここにつれてきてしまったのはボクの失態だからね。責任もって元の世界に届けないと。」
そう言うとルーシャは何だかよくわからないポーズをした。
「何、そのポーズ?」
「これは大事な相手に了承のときとかにするポーズだよ。」
やがて、重厚な門扉にたどり着いた。
ルーシャは門番らしき猫に耳打ちし、そして、ゴゴゴゴゴ…と不穏な音を立てながら門扉が開いた。
門番に会釈しながらルーシャに付いて中へと入っていく。
「見てごらん。」
ルーシャに促されるまま前方を見ると、そこには文字通り楽園のような庭が広がっていた。
「…わぁ…!!すごい!
これ、全部猫ちゃんたちだけで作ったの!?」
「そう。あの噴水も池も彫刻も全部。この世界の猫の技術は発展してるんだ。
…急がなきゃ。こっちだよ。」
ルーシャが城に向かって走った。
私もそれに遅れないように付いていった。
ルーシャが城よりも前にある植え込みの前で止まった。
そこには地下に続くであろう階段があった。
「ここから中にいくよ。…表は厳しいからね。さぁ、早く入って!」
私は頷き、急いで中に入った。
そんなに長くはない階段を下り、長い道のりを歩いた。
すると、段々前方が明るくなってきた。
「ここを抜けると広間に着くよ。その前にこれを着けて。客であるという印なんだ。」
そう言うと、ルーシャは私に腕章を渡した。
「私は、地球に…元の世界に戻れるの?」
「うん。必ず。私が責任をもってお届けするよ。その前に猫王に会ってもらうから。」
「猫王…」
そうこうするうちに広間に着いた。
その中央には猫王と思われる綺麗な猫が座っていた。
「猫王様。戻りました。
こちらが先ほど申しましたサナさんです。」
「あぁ…おかえり。ルーシャ。
サナさん、ごめんなさいね。うちの息子が失態をしでかしたようで、本来来るべきでない世界に連れて来てしまって。
私はこの国の王、ルナシアです。」
「い、いえ。…ルーシャは猫王様の息子さんだったんですね。仕えてる、って言うから家来か何かかと思いました。」
「まあまあ!ルーシャ、また嘘ついたのね!もう外出禁止にしますよ。
ルーシャはうちの第2王子よ。
あと、私のことはルナシアでいいわ。
…あぁそうだ。サナさんのリターン手続きしないとね。ちょっと待ってね。すぐに帰してあげるから。」
そう言うとルナシアは、さっきルーシャがしたようなポーズをした。
「あ、ありがとうございます、ルナシアさん。」
「いいのよぉ。息子の失態は母の責任ですもの。
ルーシャ、責任もってサナさんを元の世界にお届けするのよ。」
「勿論です。母様。」
ルーシャはまたあのポーズをした。
リターン手続きを待つ間、私は城下街を案内してもらった。
ある市場では私の知っているものは輸入品として売ってあり、私の知らないものがたくさん売られていた。
私はルーシャと護衛に連れられて色んなところを巡った。
そうしていると、手続きが終わったという連絡が入り、私たちはお城に戻った。
そして、ルーシャやルナシアさん、お世話になった人々(猫々?)と別れる時がきた。
「それじゃあ、ルーシャ、ルナシアさん、皆さん。短い間でしたがありがとうございました。」
「いいえ。もう少しサナさんとお話してみたかったわ。王位を退いたら、私もあちらの世界に行ってみようかしら。そのときはよろしくね
、サナさん。」
「はい。私の好きな場所を案内しますよ。」
「まあ、それは楽しみ。
…あ、もう時間がないようね。
それではサナさん、お気をつけて。
帰り方は、さっき教えた手順間違えないで。
じゃあ、ルーシャよろしくね。」
「はい、母様。
それではサナさん、行きましょう。」
ルーシャはあのポーズをした。
「うん。…皆さん、本当にありがとうございました!皆さんに出会ったことは一生忘れません!」
そうして、私はルナシアさんに教わった通りの手順をやり遂げ、無事に元の世界に戻った。
そして、元の世界で元の生活に戻り、いつものように街を歩いていると…
―――チリンっ…
「ニャァー…」
「ふふっ。あなた、外出禁止じゃなかったの?
今度はこんなに大勢で来ちゃって…
しょうがないわねー、ルーシャ!」
元のやつが消えちゃって記憶を頼りに書きました。ショック…
気が向いて書いてたら、かなり続きそうな話がありますが、どーしようかなぁ。
ということで、読んでくださった方、ありがとうございます。
国語力ないからやっぱり読む方に徹した方がよさそうだね笑笑