表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/37

第26話 世界は、私たちを待っていませんでした

学園の外は、想像よりも――無秩序だった。


「……魔力密度、不均一」


私は、馬車から降りた瞬間にそう判断した。


舗装の粗い道。

古い石造りの建物。

空気に混じる、微細な魔力残滓。


「ここが、実地任務区域か」


レオンが、周囲を見回す。


「……はい」


ここは、学園管理外。

小規模な魔法事故が頻発している街。


《共鳴魔法》の実戦適性を確認する――

名目は、それだ。


「……警戒レベル、上昇」


私の言葉に、彼は頷く。


「いつも通り、頼む」


「……いつも通り、が定義されました」


少しだけ、冗談めかして言う。


彼は、口元を緩めた。


街の中央広場。


魔力の歪みが、はっきり見える。


「……発生源、地下」


「魔獣か?」


「不明です」

「人工的な痕跡もあります」


その瞬間。


「――来たか」


低い声。


路地の影から、

数人の男が現れた。


装備は粗雑。

だが、魔力反応はある。


「学園の犬か」


挑発。


「……訂正します」


私は、一歩前に出る。


「私たちは、学園の管理下ですが」

「犬ではありません」


「は?」


男の一人が、笑う。


「まあいい」

「魔力の強いのが来たのは、好都合だ」


嫌な予感。


「……彼らは」


私は、即座に判断する。


「事故の被害者ではありません」

「意図的に、歪みを作っています」


「違法魔法師か」


「可能性、高」


次の瞬間。


魔力が、爆ぜた。


地面が歪み、

簡易結界が展開される。


「っ!」


街の人々が、悲鳴を上げて逃げる。


「……レオン!」


「分かってる!」


彼は、即座に前に出た。


「アリア、行けるか!」


「……共鳴、準備完了」


私たちは、同時に集中する。


心を、隠さない。

判断を、共有する。


「《共鳴魔法》――」


まだ、正式な詠唱はない。


だが。


二人の間で、

理解は一致している。


魔力が、重なる。


世界の輪郭が、

わずかに明瞭になる。


「……来ます!」


違法魔法師の放った術式が、

こちらへ向かう。


「右、避けて!」


「了解!」


彼の判断に、

私の魔力が即応する。


術式が、逸れ――

地面に突き刺さる。


「……反撃可能」


「やるぞ!」


彼の声に、

迷いはない。


私は、魔力を一段階上げる。


だが――

学園内とは、違う。


街は、脆い。

人がいる。


「……出力制限、必須」


「分かってる!」


私たちは、

攻撃ではなく――

制圧を選ぶ。


魔力を束ね、

相手の術式だけを切り取る。


「な、何だこれは……!」


男たちの魔法が、

次々と不発になる。


「……心的干渉、成功」


《共鳴魔法》は、

破壊ではなく。


「選択を、奪う」


彼らは、

魔法を使えない自分に混乱している。


「撤退!」


誰かが叫び、

男たちは散っていった。


結界が、消える。


街に、静けさが戻る。


「……成功」


私は、深く息を吐いた。


足が、少し震える。


「アリア」


彼が、すぐ支える。


「無理してないか」


「……問題ありません」


だが。


胸の奥が、

わずかに痛む。


「……世界は」


私は、呟いた。


「私たちを、守ってくれません」


「当たり前だろ」


彼は、静かに言う。


「だから――」


私を見る。


「俺たちが、選ぶんだ」


守るか。

壊すか。

逃げるか。


「……はい」


私は、頷いた。


この初陣で、

はっきり分かった。


《共鳴魔法》は、強い。


だが、それ以上に――


「選択の責任が、重い」


世界は、優しくない。

待ってもくれない。


それでも。


彼となら、

立てる。


この確信だけは――

学園の外でも、揺らがなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ