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第21話 あなたが戻った瞬間、世界は安定しました

隔離解除は、予告なく行われた。


「……結界、解除?」


空気が、変わる。


均一だった魔力の流れに、

わずかな揺らぎが生じる。


人の気配。


「……外部接続、復帰」


私は、ゆっくりと立ち上がった。


足は、まだ重い。

だが、意識は明瞭だ。


結界が完全に消えた、その瞬間。


「アリア!」


聞き慣れた声。


反射的に、振り向く。


――レオン。


息を切らし、

こちらへ駆け寄ってくる。


「……確認」


私は、呆然と呟いた。


「あなたは、ここにいます」


「当たり前だろ」


彼は、すぐ目の前まで来て、

私の肩に手を置いた。


その瞬間。


「……!」


魔力が、一斉に反応した。


だが――

暴走ではない。


過剰でもない。


「……安定」


信じられないほど、

自然に落ち着く。


胸の奥の重さが、

すっと消えていく。


「……現象、確認」


私は、震える声で言った。


「あなたが、存在するだけで」

「魔力制御が、容易になります」


「それ、今言うことか?」


彼は苦笑する。


だが、手は離さない。


「……重要事項です」


私は、真剣だった。


「隔離中、私は限界に達しました」

「一人では、完全制御は不可能です」


「……そりゃそうだ」


彼は、少しだけ声を落とす。


「俺も、同じだった」


「……?」


彼は、私を見つめる。


「お前がいない間」

「ずっと、嫌な予感がしてた」


「魔力の流れが、変だった」


――彼も、感じていた。


「だから、無理やり来た」


「……規則違反です」


「知るか」


即答だった。


そのとき。


「感動の再会、邪魔して悪い」


背後から、カイの声。


振り向くと、

彼が、腕を組んで立っている。


「観測は、十分だ」


「……結論は?」


私は、問い返した。


「君は、一人では危険」

「だが、心を切り離す必要もない」


予想通りの答え。


「代わりに」


彼は、こちらを見る。


「特殊管理指定を変更する」


「……内容を」


「君は、単独ではなく」

「特定人物との同時行動を前提とする」


一瞬、理解が遅れた。


「……それは」


レオンが、眉を上げる。


「俺?」


「他にいるか?」


カイは、当然のように言った。


「君が最も安定する要因だ」


胸の奥が、

強く、温かく反応する。


「……確認します」


私は、冷静を装って言った。


「それは、制御補助ではなく」

「信頼関係の公式認定ですか?」


カイは、少しだけ笑った。


「そうとも言える」


「……了承します」


即答だった。


レオンは、少し戸惑っている。


「なあ、それって――」


「一緒にいろってことだよな」


「……はい」


私は、頷いた。


「危険な時ほど」


彼は、少し黙ってから、

私の頭を軽く叩いた。


「最初から、そうだろ」


「……合理性が、追いついていませんでした」


「今さらだ」


カイは、背を向ける。


「次は、もっと大きな舞台だ」


「その時、二人で立てるかどうか」


「楽しみにしている」


彼が去ると、

演習場には、私たちだけが残った。


「……」


沈黙。


だが、不安はない。


「……ありがとう」


私は、静かに言った。


「戻ってきてくれて」


「戻るって言ったろ」


彼は、当たり前のように言う。


「約束ですから」


私は、そう返す。


彼は、一瞬だけ驚いて、

それから、優しく笑った。


「じゃあ、これからもだな」


「……はい」


私は、彼の手を握った。


今度は、

離さないように。


この日。


私は、理解した。


私の心は、弱点ではない。

誰かを信じることで――


「二人分の制御」になる。


それが、

私たちの魔法だった。

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