第15話 私たちは、隠していたつもりでした
結論から言います。
私たちは、
まったく隠せていませんでした。
「……視線、過剰」
翌日。
教室に入った瞬間、私はそう判断した。
明らかに、注目されている。
観測密度が高い。
ひそひそ声が、多い。
「なあ……」
レオンが、小声で話しかけてくる。
「俺たち、何かしたか?」
「特別な行動は、ありません」
即答。
昨日の行動を振り返る。
外出。
散策。
手を繋ぐ。
「……通常範囲です」
「通常じゃない!」
彼は、即座に否定した。
「一般的には、あれは――」
言葉を切る。
「……デートだ」
「定義上は、正しいです」
私は、淡々と答えた。
席に着く。
その瞬間。
「アリア」
後ろから、声。
振り返ると、クラスメイト数名が、
明らかに興味津々の表情でこちらを見ていた。
「最近さ」
「レオンと、仲いいよね?」
「……はい」
事実なので、否定しない。
「どの程度?」
質問が、雑だ。
「……?」
「付き合ってる?」
直球。
一瞬、教室が静まる。
レオンが、固まった。
心拍数、上昇。
だが、逃げない。
「……はい」
私は、はっきり答えた。
一拍。
そして。
「「ええええ!?」」
教室が、爆発した。
「やっぱり!」
「絶対そうだと思ってた!」
「いつから!?」
情報量が、多すぎる。
「……質問は、整理してください」
誰も聞いていない。
レオンは、顔を真っ赤にしている。
「お、お前ら……!」
だが。
私は、少し不思議だった。
「……問題がありますか?」
そう聞くと、
クラスメイトは一瞬黙り――
次の瞬間、笑った。
「いや、問題はない」
「むしろ、納得」
「お似合いだよ」
その言葉を聞いた瞬間。
胸の奥が、少し軽くなる。
「……外部承認、確認」
そう記録した。
昼休み。
私は、レオンと並んで歩いていた。
周囲の視線は、もう隠されていない。
だが、敵意はない。
むしろ――好意的だ。
「……疲れました」
私がそう言うと、
レオンは苦笑した。
「ごめんな」
「俺、もう少し上手く隠すつもりだった」
「隠す必要は、ありません」
即答。
「あなたと一緒にいることは」
「非合法でも、非合理でもありません」
「そういう意味じゃなくてな……」
そのとき。
「おーい」
聞き慣れた声。
リィナだった。
腕を組み、余裕の表情。
「ついに、ね」
「……何のことでしょうか」
「とぼけない」
彼女は、私を見る。
「確認に来たの」
「アンタ、幸せ?」
核心。
私は、迷わなかった。
「……安定しています」
「ふふ」
リィナは、満足そうに笑った。
「それなら、合格」
「……何の試験ですか」
「心の試験」
彼女は、レオンを見る。
「ちゃんと、大事にしなさいよ」
「もちろん」
レオンは、真剣に答えた。
その様子を見て、
胸の奥が、また反応する。
「……優先度、再更新」
放課後。
帰り道。
私は、自然に彼の手を取っていた。
もう、躊躇はない。
「なあ、アリア」
「はい」
「みんなにバレたけどさ」
少し、照れた声。
「後悔、してないよな?」
私は、歩みを止め、
彼を見る。
「……後悔の可能性を、計算しました」
「結果は?」
「ゼロです」
即答。
彼は、笑った。
「そっか」
その一言で、十分だった。
私は、理解した。
恋人という状態は、
隠すものではない。
誇示するものでもない。
「……共有されるもの」
そして私は、
それを悪くないと――
はっきり思っている。




