第14話 手を繋ぐという行為の、難易度が高すぎます
本日の予定は、以下の通り。
・学園外への外出
・街の散策
・二人行動
通称――デート。
「……定義、確認済み」
私は、正門前でレオンを待っていた。
「お、待たせたか?」
「いいえ。予定時刻、ちょうどです」
彼は、少し私を見てから視線を逸らした。
「……その服」
「問題がありますか?」
「いや、問題はない」
歯切れが悪い。
私は、いつもより少しだけ違う服装をしている。
機能性は同等。
だが、外部評価を考慮した選択だ。
「……似合っていますか?」
自分でも驚くほど、素直な質問だった。
レオンは、一瞬固まり、
それから観念したように言った。
「……似合ってる」
心拍数、上昇。
「……ありがとうございます」
街は、賑やかだった。
魔道具店。
露店。
甘い匂い。
情報量が、多い。
だが、不快ではない。
「楽しいか?」
レオンが、横から聞いてくる。
「……判断中です」
「即答じゃないのか」
「ですが」
私は、続けた。
「あなたと一緒なので、問題ありません」
彼は、苦笑した。
「それ、もう楽しいって意味だろ」
「……そうでしょうか」
歩いていると、
自然と人混みに入る。
距離が、縮まる。
肩が、触れる。
「……」
胸の奥が、反応する。
「……注意」
私は、自分に警告を出す。
だが、そのとき。
レオンの手が、
そっと、私の手に触れた。
一瞬。
触れて、離れる。
「……っ」
心拍数、急上昇。
「ご、ごめん」
彼は、慌てて手を引く。
「嫌だったか?」
「……いえ」
即答だった。
「ただ」
言葉を探す。
「処理が、追いついていません」
「そ、そうか……」
沈黙。
歩幅が、揃わなくなる。
数秒後。
私は、決断した。
「……再試行を、提案します」
「え?」
私は、彼の手を取った。
自分から。
指と指が、絡む。
温度。
感触。
圧力。
情報量、過多。
「……」
視界が、少し揺れる。
「ア、アリア?」
「……問題ありません」
嘘ではない。
だが、余裕もない。
「……手を繋ぐ行為は」
私は、ゆっくり言った。
「想定以上に、難易度が高いです」
彼は、一瞬黙ってから――
吹き出した。
「はは……」
「……?」
「そんな真顔で言うなよ」
だが、手は離さない。
そのまま、歩き続ける。
「……安定してきました」
数分後、私はそう報告した。
「慣れるの、早くないか?」
「学習能力は、高いです」
「そこ張り合うところじゃない」
店に入る。
飲み物を買う。
並んで座る。
手は、繋いだまま。
もう、違和感は少ない。
「……結論」
私は、内部でまとめる。
手を繋ぐという行為は――
効率的ではない。
移動速度も落ちる。
だが。
「……優先度は、高」
隣を見る。
彼が、少し照れた顔でこちらを見ている。
「なあ」
「はい」
「こういうの、嫌じゃないだろ?」
私は、少し考えてから答えた。
「……嫌では、ありません」
正確に言う。
「むしろ」
言葉が、自然に出た。
「離れる方が、不安です」
レオンは、目を丸くした。
それから、静かに笑った。
「そっか」
その一言で、
胸の奥が、また温かくなる。
私は、理解しつつある。
恋人という状態は――
難易度が高い。
だが。
攻略する価値は、
十分にある。




