第四話
アルクとカトレアは、そのまま何分か見つめ合っていた。
目が離せない何か吸いつくものをお互いに感じていた。
「何者だ?!」
見回りをしていた兵が異変に気づいてやってくる気配がした。
「この状況は、あまり良くない。侵略者かスパイと勘違いされるぞ、こい!」
アルクはカトレアをそっと腕からおろすと、カトレアの手をとって走り出した。
「ドラゴン伝説を知ってるか?」
「ああ、あの嘘話?!」
庭を駆け走りながら、アルクは思いつめたように、厳しい表情をしていた。
「あれは、嘘ではない。もしかしたら、大変なことになるかもしれない」
「え?」
カトレアが怪訝に首を傾げたときだった。オカリナの笛の音が耳に響いてくる。
「あ、サラとランドンが探しているわ。あっちの方向から聞こえる、ここでもう大丈夫。この壁を越えていくわ」
三人がもしもばらばらになってしまったときのために、オカリナの笛を吹き、居場所を知らせる。三人の秘密の音色だった。
カトレアとアルクは、追手の兵を巧みに撒くと、木々の影に隠れた。
「わかった。また会えるか?」
アルクは、カトレアの手を強く握って言った。
「ええ、また会いに来るわ」
カトレアは、顔を赤らめて頷く。
「もしかしたら、ドラゴン伝説が、蘇るかもしれない」
「まだその話?災いなんて、あるわけないわ」
「災いがあろうとも、必ず会いに行く」
アルクは、辛そうな光を目に宿して言った。
「大丈夫よ。考えすぎよ」
カトレアは、明るく笑い、アルクの手を離した。
「またね、アルク王子!」
そう言うと、両足に力を入れ、ぴょんと飛ぶと、木々の枝に捕まり、塀を軽々と飛び越えた。
「またな!」
アルクは、鳥のように軽やかに塀を越えていくカトレアを眩しそうに見ながら見送った。
塀を越えると、ランドンとサラが、飛行船を着地させて待っていた。
「はやく!カトレア!」
サラは、まだ襲ってくる野鳥を打ち落としながら、カトレアを見つけると叫んだ。
「了解!」
カトレアは、風のような早く飛行船に乗ると、操縦機をとった。
「よし!帰るわよ!」
カトレアの号令とともに、飛行船は浮き上がり、メリムダ国へ舵をとり、帰路へと進んでいく。
サラとランドンは、安堵をして肩をおろしたが、無事に城まで帰り着くまで、気は緩められなかった。
機嫌良く笑っているカトレアを見て、二人とも舌打ちしたい気持ちだった。
(まったく、このおてんば姫!)
♢♢♢♢♢♢♢
その夜だった。不気味な声が、アルクの頭に語りかけられた。
一一 城内に入った罪は重い。あのときのように、また、逢瀬を交わすのだろう。そうはさせない。さあ、神とも約束はしている。そなたは、私のもの。一一一
一一 アルク、滅ぼすのです。メリムダ国を焼き払ってしまえ一一
「うううぅぅぅ」
アルクは必死に声に抵抗したが、その力は強く、叶うものではなかった。
♢♢♢♢♢♢♢
「姫様!大変です!隣の国から、戦車や飛行船が!城下町が攻撃されています!」
ぐっすりと眠る、カトレアの部屋に飛び込んできたのは、昔から仕える世話役の婆やだった。
「なに。。?ばあや、まだねむい、、」
寝ぼけながら、カトレアはむくりと毛布から出てくる。
「外を見てください!城下町が、焼けてます。すぐに避難してください!」
婆やは寝ぼけるカトレアの手を引き、部屋から連れ出して行く。
「なに?」
「まだわかりませんか?見てください!」
婆やに言われるまま、廊下の窓に目を向ける。
「え?」
カトレアは、自分の目を疑った。一気に目が覚めて、血の気が引いていく。
婆やの言うように、城下町が焼かれ、あちこちから煙が立ちのぼっていた。




