第三話
国境を越えた飛行船は、揺らぐことなく真っ直ぐにサンドリア城を目がけて飛んでいく。
「すごいな。まさかここまで来るとは」
クールなサラだが、流石に興奮してくるようで、声が高調している。
「すげえ、すげえ!俺、国から出るの初めてだ!綺麗な星々だなああ」
「騒ぎすぎだ」
サラは冷静さを取り戻すように、少年のようにはしゃぐランドンをたしなめる。
「コツコツ浮遊石を合成してきた苦労が、報われていくわ。ふりかえれば、もう5年になるわ。長い道だったわ」
カトレアは、達成感に酔いながら、自画自賛する。
「余韻にひたる時間はなさそうだよ。あそこ!見てみて!この前襲ってきたガルーラ鳥に見つかった!」
サラは南の方角けら襲ってくる野鳥の大群を発見すると、胸元から銃を取り出し、狙い撃ちの姿勢をとった。
「まじか!ここまでは、見つからずにきたのに、、。しかも、前より数が多いぞ」
ランドンは冷や汗をかきながら、背中にくくりつけた鞘から大剣を引き抜いた。
「サンドリア城付近まで、もう少し!城から少し離れた砂漠の荒野に目星はつけてるの。なんとか追い払って、着地しましょう」
カトレアも腰に納めた鞘から剣を抜いて、戦闘体制に入った。
「了解!」
ランドンとサラは、同時に応答すると、素早く飛び散った。襲ってくるガルーラ鳥を、サラは確実に狙い撃ちし、ランドンは大剣を振り回し、何匹もの野鳥が切り落とされていく。
カトレアが作ってきた飛行船は、五人乗れるか乗れないかの小型船であり、中は剥き出しで壁はなかった。
飛行船の真ん中で稼働し、円炉液という浮遊石を燃やす焼却炉が攻撃されれば、ひとたまりもなく船は墜落してしまう。
それだけは避けなければいけないと、ぎりぎりまでデッキの端まで足を踏み込み、剣を振っていたのが凶とでた。
カトレアは、剣を奮っているときに足を踏み外し、船から落下してしまった。
「カトレア姫!」
サラとランドンが、カトレアの手を掴もうとしたが、遅かった。
カトレアは、真っ逆さまに地上へと落下していく。
(ヤバいわ、このままだと本当に死んでしまう)
流石のカトレアも冷や汗をかき、ウエストポーチに常に常備している浮遊石とをだした。
浮遊石は、炉液がないと効果がなかった。カトレアは飛行船から落下する想定は考えていたので、炉液はビンに詰めてポーチに入れている。
カトレアは落下しながらも、器用に浮遊石をビンに入れてふるった。
すると、浮遊石は聖なる光を瞬かせ始め、カトレアの落下スピードを極端に遅めた。
浮遊石は一つしかなかったので、カトレアを浮かせるまでは、できなかった。
カトレアはゆっくりと地上へと落ちていく。着地点は、どうやらサンドリア城の庭のあたりだった。
「よし、これなら、木に捕まれば大丈夫そうだわ!」
カトレアは、庭木に近づくと、太そうな枝に手をかけようとした、そのとき、
「おい!何者だ!?」
ちょうどカトレアが木の枝に捕まった瞬間に、木の下から声がした。
(しまった、見つかった)
カトレアは声に驚き、足元を滑らせて、するりと落下してしまう。
(落ちる!!!)
カトレアは、地面へと落ちる覚悟をもって、目を閉じたが、落ちた場所は、男の腕の中だった。
「君は、恐れなしの勇者みたいだな」
男は、カトレアを優しく抱きとめると、苦笑して言った。
「!?あなたは?」
「アルクだ、見回りをしていたら、空から人が降ってくるから、びっくりした」
「アルク?サンドリア国のアルク王子?」
「そうだ。君は?」
「メリムダ国のカトレアよ。助けてくれて、ありがとう」
「ああ、おてんば姫のカトレアか。隣国からその名前は風の噂で、よく聞くよ。そうか、君がカトレア姫か」
アルクは、カトレアを抱いたまま、そのオレンジ色の瞳をのぞいた。
アルクに見つめられたカトレアは、心臓が″とくん″と高鳴った音が聞こえた。
薄黒い肌に、漆黒の瞳。パーマをかけているようなくせ毛にフェロモンの匂い、カトレアはセクシーな色気を感じていた。
ドラゴン伝説の因縁もあるのだろうか。金のドラゴンの後継者であるカトレアと、銀のドラゴンの後継者のアルクは、そのときお互いに恋に落ちていた。




