5 それは西の魔王の使い、この森を寄越せ編 食べられる子供達。でも、どうにか魔王さまが活躍するらしい、そして新たな出会いも色々と。
お早うございます。
投稿です。
大切な読者の皆様すみません。
6話で終わりませんでした。
8話以上10話以下になると思います。
今現在7話途中です。
「おい!蛇人だ!子供達を逃がせ!呑まれるぞ!」
え!?
子供を……呑む!?
食べられちゃうの!?
バサッと翼を広げるシーシナ。
「ミケちゃん、トラ子さん!みんなを呼んでくる!」
「お願いシーシナ!」
みんな?
俺がキョトンとしていると、タロが手を引っ張る。
「大人のサキュバスやインキュバスだよ!テニ、こっちだよ!」
「お父さん!早く帰ってきて!」
「?」
そういえば獣人族、男性陣が少ないな?
「狩りに行っているんだ!早く家に中へ!」
三角錐の家?
いや、この程度の家じゃ簡単に壊されるだろう?
「地下があるんだ!」
狼の巣!?
しかし、子供を呑む蛇ってどれくらいの大きさなんだよ!
「シーシナ!エルフの里にも連絡を!」
次々に飛び立つゴスロリとボンテージの魔族達。
あ!?
彼らを目掛けてザッと矢が降る。
蛇が矢を射る?
「か、風の刃!」
咄嗟に杖を強く振り、突風で矢を墜とす俺。
よし!うまくできた!
「すげーじゃん!テニ!」
へへ、誉められると嬉しいな。
トストスッ!
乾いた音が背中から聞こえた。
あ、油断した。
ゆっくりと倒れる俺。
背中には矢が5本程刺さっている。
痛い。
動けないくらいに。
「早く抜け!毒矢だ!」
誰かが叫ぶ。
泣きながら矢を引くミケとタロ。
「ぬ、抜けないよ!どうしよう!?」
「血が……テニッ!うわっ!?」
泣くなよタロ、スキルが発動しているのは俺の方だ!
「テニッ!テニ……うわーん」
……よくも俺様の大事な友人を泣かしたな?蛇ども!
そう思った瞬間、内部の星雲が蠢いた。
「魔法使いがいたとはな?矢を落とす?ばかめ、自分の居場所を知らせるようなモノだろうがぁ、素人め!」
いや、違う、彼らが援軍を呼んでくれるはず、無駄じゃない!
次々に抜かれる矢。
痛いです。
血も涙も噴水のようだ。
抜いているのはトラ子さんか?
「つよい子だよ、普通なら死んでいる、心臓まで矢が……しっかりおし!気を強く持つんだよ!」
「……ひゃい」
あの、動いていますか?俺の心臓とやら……。
「何してんだい!早く解毒草を!」
ズルズルと嫌な音をたて、近寄ってくる蛇人。
よく見るとかなり異形だ。
大きさも半端ない!
巨大な蛇の頭部に、人の上半身が乗っかっている?いや生えている?
下半身が巨大な蛇と言うべきか?頭付きの。
巨大な蛇の頭部に人がめり込んでいると言うべきか?
上半身の人も鎧を着けているみたいだが、明らかに鱗がある。
「聞け、我らは西の森、魔王ヲダさまの眷属である!」
俺の他に魔王が?魔王って複数いる?
「今より、この東の森は、西の魔王ヲダさまの領地となった、領民よ!ミスリルと金を献上せよ!」
綺麗な女性の声だが、言っていることは不条理、理不尽、極まりない!
「東の森は自由の森だ!そのような横暴、王都の騎士団、勇者が許さん!」
「ここは自由の森、誰のモノでもない!金やミスリルが欲しくなったか?魔昆虫が怖くて近づけなかったくせに!」
……もしかして、これ俺が原因か?
魔昆虫吹飛ばし、住処を一掃したし。
あいつらは、あいつらで意味があった?
「金鉱やミスリルが、見つかったそうだな?よこせ!」
これが本音か。
周りの蛇人達がじわりじわりと詰め寄る。
どうやら先頭の一番デカい蛇人女性がリーダーのようだ。
「王都を越えてきたな?なら勇者や騎士団、中央が動くはず!」
「……フン、あいつらが来る前に、お前ら全員呑む」
!
「跡形もなく、消えてもらう。そして西の奴隷をここへ移住させる。選べ!奴隷か死か!」
綺麗な声だが、言ってることはこの上なく恐ろしいセリフだ。
ゆっくりと動き出す俺。
魔王と言っても、油断するとこうなるのか、学習した。
解毒は自前でできたみたいだし、傷口もあと少しで塞がる。
「じ、じっとしてな!」
トラ子さんが引止める。
「だ、だいじょうぶでしゅグスグス」
「泣きながら、何を言っているんだい!」
立ち上がり、蛇人を数える。
8匹。
でもこれ、新幹線並の大きさなんですけど?
すんごくこえーっ!
シュッ、とその内の一匹が動いた。
凄い速さである。
あっ、と思った時にはタロを、もう呑み込んでいた。
「タ、タロッ!」
トラ子さんとミケの悲鳴!
周囲の叫び声!
「奴隷か?死か?次はお前だ」
リーダーがミケを見つめる。
恐ろしい目だ。
ああ、魔眼ってヤツか?
「返答は?」
そう言ってバクッ、とミケを一瞬で呑み込む。
俺は、怖くて……動けない……あのタロとミケが食べられたのに!
泣きながら、立ち竦む。
ドゲシイイイイイッ!
そんな中、豪快に蛇人を蹴り上げる者が現れた。
「ぐっげええええっ!」
あまりの衝撃に、タロを吐き出す蛇人。
……ファーファ?
「な、なんだこのゴーレム!」
次々に矢が降りかかるが、全て弾いた。
え?いつの間にパワーアップ?どこでバージョンアップしたのファーファ?
俺より頑丈じゃん!
俺はファーファにつられて、思わず、ひのきの棒を横に……えいっ!
と力を込めて薙いだ。
スパアアアンと分断されるリーダーの女蛇人。
「うぎゃあああっ!」
傷口からどろり、と吐き出されるミケ。
「トラ子しゃん!手当を!きょい!ファーファ!」
動き出したら止まらないっ!
涙も!行動も!
恐怖に支配される前に一気に!
この一番デカい蛇に……挑むぞ!
俺はスタンガンをイメージした。
「きさまぁあああっ!よくも私の胴体を!」
思いっきりリーダーの首を掴み!
バチイイイイイイン!
落雷のような音が周囲に響く!
「ぎゃう」
一言残し、電池が切れたように止まってしまう女蛇人。
そのまま千切れた女蛇人の胴体を引っ掴み!
「む、村を離れりゅぞ!ファーファ!」
大きさはバス2台分くらい?
軽い軽い!
余裕で持ち上げ走り出す!
……涙や鼻水を撒き散らしながら……。
「ひ、姫ええええっ!」
「あ、あいつ姫を!」
姫?
お姫様!?
「お、追え!追うんだああぁ!」
脚には自信あるんだ!
なんせ音速を超えるからね!
力だって、魔王だぞ!
「ふんっ!」
ぎりぎりで追いつかれないように!食べられないように!
離れすぎないように!
引きつけて!
逃げる!
ちょっとだけ振り向いてみた。
もの凄い形相で追いかけてくる蛇人7匹!
こ、こ、こええええええっ!
振り向くんじゃなかった!
スキルなんて関係ない!
怖すぎるっ!
あんな巨大な蛇に追いかけられるなんて!
それも上半身、鎧の姿の人物が繋がって、弓を構えているっ!
もう悪夢だよ!
そして見えてくる湖!
よし!作戦開始!
まず!
ぽいっ、と。
俺は姫を投げ飛ばした。
ひゅーん!
ドボーン。
湖に沈んでいく、蛇人の姫。
ファーファ抱き上げ、高くジャンプ、と。
そして空中で止まる。
おおっ、空中浮遊!
「あ、あいつ!ひ、姫を!」
がぼっ!
と湖から声が聞こえる。
「だ、誰か!ガボガボ!」
「お、溺れておる!早く!」
ああ、我ながら、やり方が汚いなぁ、と思う。
蛇人7匹は、我先に姫を助けようと、湖に飛び込む!
魔法は、イメージだ!試してみよう!
お前ら全員実験体!
俺を殺そうと矢を射たんだ、文句はあるまい?
「渦!」
姫を中心に渦が発生する!
「うわっ!」
「な、なんだ!?渦!?」
「ま、魔力が!?」
もの凄い速さで回り始める湖の水。
「え?え?え?は、速すぎだよ!」
渦は速さを増し、天に向けて登り始めた!
更に竜巻は湖を離れ、移動し始める。
もはや壊れた移動式洗濯機である。
焦った俺は止まるように念じたが、うまくいかない!
どうしよう!?
不安になると、さっそくスキルが発動した!
弱虫で泣き虫の!
どうしよう?どうしよう!?
あ、凍らせれば?
と一瞬、考えた。
いや、できれば捕まえて、西の魔王のこととか聞きたい!
ん?
……あれ?
凍っている!?
巨大な蛇人7匹と、斬られた姫の氷のオブジェがそこにあった。
でけー……どうしよう?
なんか、恐怖のオブジェだ。
うーん。
取敢えず、帰ろう!
うん、村へ、タロやミケが心配だ!
こいつらなんて、知らん!
マップを展開して、村の位置を意識して固定する!
「ファーファ!行くよ!」
えいっ!と魔力を開放する。
もうそこは、狼亭の裏。
おお、なんて便利!
さすが、魔王さま!
到着した村は、騒然としていた。
「あ、あんた無事だったのかい!?」
あ、トラ子さん!
「ミ、ミケとタロは!?」
ミケとタロと名前を呼んだ瞬間、泣き虫スキルが発動した。
「ううう……ふ、二人は大丈び?大丈びだよね!?無事にゃの!?」
な、涙が、と、止まらんっ!
「ああ、大丈夫だよ!今、川で治療中だよ」
川?
「蛇人の体液を洗い流さないとね、溶けちまう! 」
えええっ!?消化液みたいなのかな?それとも毒?
「二人とも、服や皮膚が溶けたけど、大丈夫さ!あんたらのお陰さ!獣人族は再生能力が凄いからね、早く助けてくれたから!本当にありがとうよ!」
そう言って、両手に持っている服を見せるトラ子さん。
目には涙が。
ん?
川の方が騒がしい?
「お姉ちゃん!テニは大丈夫だって!俺、裸は恥ずかしいよっ!」
マッパで走って来るタロ。
か、かわいいっ!いろいろと。
「そんなはずないだろうっ!あんな弱虫!蛇人が8匹だぞ!テニが、テニが死んじゃう!助けに行かなきゃ!」
「ゴブリンは素早いし、蛇より速いよ!」
「あいつはニブいんだよ!毒矢だって……グスッ……急げ!」
……俺、鈍いの?
「僕達が行ったって……また食べれれちゃうよ!」
タロと同じくマッパで走って来るミケ。
か、可愛い……色々と……。
ドケシッ!
え?蹴られた!?
「いっ、て!?な、何するんだよ!?ファーファ!?ち、ちょっと!?」
「……フン」
ファーファは俺の肩に飛びつき、前が見えないように顔を覆った。
まるで、不気味な卵から生れた、カブトガニみたいな怪物の幼体みたいに!
「ち、ちょっと!?ファーファ?前が見えないって!」
「……フン」
「あ!?ほら見て!お姉ちゃん!テニ、テニッだ!ほら!無事だったろう?」
「な?テニ!?」
どうにか、ファーファを引き剥がし、ミケと視線を交す俺。
「テニ……無事だったんだ!よかった!」
……い、いかん!し、視線がどうしても普段、隠されているところへ向ってしまう!
「あ?」
あ、ミケ、固まった?
「げ、元気そうだね?」
「……っのおおおおドスケベ!何見てるんだよおおおお!」
横にあった樹木を引き抜き (高さ15m程か?幹回りは3m?) 投げてきた。
「おわあああっ!?」
なんちゅう馬鹿力!?
助ける必要あったか!?
これ、お腹引き裂いて出てきたのでは!?
さすが獣人族と誉めるべきか?
弱虫スキルが発動した!
ドゴオオオオン!
どうにか大木を回避する俺。
こ、こええええっ本気で狙ってきたぁ!?こえええよ!獣人族!
俺は慌てて回れ右をし、トラ子さんに挨拶をする。
「ま、また来ます!今度は俺も豚玉で!」
「ああ、いつでもおいで、あんたは恩人だ、歓迎するよ!」
俺は猛ダッシュで、獣人族の村を後にした。
教訓、女の子の裸を見て、ニヤついてはいけない。
……当たり前だ!俺の馬鹿者!そもそも見ちゃ駄目だ!
後方でタロとミケが何か叫んでいたが、もう聞こえない。
俺とファーファは王都を目指すことにした。
目的ができた!
丼だ!
他にも何か食べ物があるかも知れない!
足取り軽く、王都を目指す。
この時、なにか忘れているような気がしたが、気にせず出発した。
確認できるマップの、一番端まで瞬時に移動する。
おお。楽ちん!
ここから先はマップなし!
新たなルートだ。
歩き出すと、僕の周辺にマップが出来始める。
ただひたすら歩き続けた。
そして日は暮れ、夜が来る。
真っ暗である。
街灯なんて無いし、夜行性の異形の者達が蠢き始める。
これは怖い。
弱虫スキルがあろうが、無かろうが、マジびびる。
星の灯りでボンヤリと浮かび上がる周囲。
この世界に、月は無いのだろうか?
それとも新月?
魔力を使うと、暗闇でもある程度見える。
このやり方は覚えた。
が、変な生き物や徘徊する怪物まできれいに見えるのだ。
だから、怖いんだって!獣人族の村まで戻るか?
一瞬だし。
「……あのう、ファーファ、怖いんですけど、その夜の闇が」
「……?」
ガチャガチャ。
ドスン。
俺の横に座り込むファーファ。
すると、ぽわっと頭部が光り出す。
淡いひかり、ランタンみたいだ!
「す、凄いやファーファ。へへっ、ありがとう」
「……」
「え?炎の玉をだして?継続魔法にすればいい?あと、結界も張っておけ?」
俺はひのきの杖を大地に挿し、その先端に火を灯した。
「これでいい?」
こくこく。
激しく頷くファーファ。
「……」
「円をイメージ?ふんふん」
周囲に円をイメージだね?
心に浮かんだ言葉をそのまま口にする。
「カモン、サークル!」
周囲に丸い魔法陣が浮かび上がる。
ズン、と大気が震え、簡易結界のできあがり!
侵入者があれば、脳内警報が鳴る、とファーファは説明したが?
まあ、これで森の中でも、眠れるんだね。
魔王だし、寝る必要は無いのだが、とても疲れた気がする。
人の習慣が残っているのだろうか?
「ファーファ、今日は寝るよ、お休み!君がいると安心して眠れるよ!ホント、一人は寂しくて、怖かったよ!」
「……!」
目を閉じる。
何も見えない。当たり前だ!
ここは異世界、横にはファーファがいる。
怯えて眠ることはない。
前世の人の世界より、安心だ。
恐ろしい森の中だけど、ファーファと一緒だし!
ファーファといれば大丈夫!
なぜかそんな気がした。
俺は速効で寝た。
夢は見ない。
前世では、安心して眠ることができなかった。
俺にとっては、異世界の方が安心して眠れる。
ん?
夜明け前、寒くはない。
パチリ、と目が覚める。
目覚めと同時に、全感覚がフル活動する。
なにかある?
すると、赤い点が?
ひとつ?
赤い点は増えて6つになった。
「なんだろう?これ?」
「ファーファ、起きている?」
こくこく。
「行ってみよう!」
怖いけど、慎重に接近を試みる。
「あ、ファーファ、あれ、魔昆虫だ!」
巨大なカメムシみたいな魔物が、子供?を襲っている!?
ムカデの魔昆虫より小さいけど、10mは余裕であるぞ!
弱虫スキルが発動する前に、俺は行動に出た。
近くにある、小石や木の枝、なんでもかんでも片っ端から投げ付けた。
ガン!ゴン!グサッ!ベコン!
装甲のような頭部や胸部、外骨格に突き刺さり、めり込む小枝や小石!
「こっちだ!カメムシヤロー!」
振り向く魔昆虫。
目が合った!
うわっ!牙、怖っ!
ブンッ!音を立て飛び立つ巨大な魔物!
え?飛ぶの!?その大きさで!?
俺を目指してまっしぐら。
「う、うわああああああっ!」
巨大G!?
一瞬にして青ざめる俺。
魔昆虫の牙が、ガチガチと鳴っている!
ま、まだ距離がある!ここからなら、魔法で!
「ひいいいいいいっ!こっちこないでええええええっ!来るんじゃねええええっ!」
ひのきの杖から連続して飛び出す炎の固まり!
ドドドドドドドドッ!
全弾命中!
え?一向に効果無し!?
距離を取り、攻撃し続ける。
ドンドンドンドン!
これまるでシューティングゲームだ!
いや、リアルシューティングだ!
……おっかしいなぁ、なかなか倒れないっ!
あいつのHP減っている?
いや、減っていないと困りますっ!
迫る巨大昆虫に思わず力が籠もる!
「うわああああああん!」
デカくなる火の玉。
バスケットボールくらいの大きさが、バランスボールほどになる。
大きな火の玉は次々に命中し、終に昆虫は落下、炎上はしないが、煙を関節から立ち上げ、動かなくなる。
それでも恐怖で止まらなくなった、俺の魔法!
ドドドドドドドドッ!
と、止まらん!?
ドゲシッ!
「うごっ!?」
ファーファに蹴られ、ようやく停止する俺の魔法。
「……ファ、ファーファ、止めてくれてありがとう……でも、もう少し、優しくできない?」
「……フン」
……なんか機嫌、わるそう?
どうしたんだよ?
「え?ミケの裸?」
ギロッ!
目はどこだろう?
でも明らかに、俺を睨んでいるな。
「もう、ニヤけたりしないよ、ミケも嫌がっていたし、今度からちゃんと目を逸らすよ?機嫌直してくれよ!」
「……フン」
先に進み出すファーファ。
どっと疲れたが、魔力を沢山使った分、なんとなく加減が分かってきた。
それに何だか魔力の使用上限も、上がった気がする。
「あ、子供達?」
「……」
「え?違うって?あ、ゴブリン!?」
小さい子供に見えていたのは、ゴブリンだった。
ほっそりした身体、発達した犬歯、動きは素早いけど、パワーはどうだろう?
小っちゃい獰猛なエルフ?そんな感じだ。
まあ小っちゃいとは言っても、俺と同じか?俺より大きい?
手に弓や槍、剣をそれぞれ携え、こんがりと焼けた魔昆虫に集まっている。
チラチラとこっちを見ているけど?
あ、なんか可愛い?
小動物的可愛さ?小鳥?雀を思わせる可愛さがある!
「あ、ファーファ!?」
ファーファはゴブリン達に駆け寄って……何か話している?
恐る恐る近寄ると、ゴブリン達は俺を警戒していた。
なんで警戒?
弱虫で泣き虫の俺を?
「……」
何やらゴブリン達に説明するファーファ。
「ゴブゴーブ」
……ファーファ、ゴブリンと会話している?
ちなみに俺はこのゴブリン達が、何を言っているか全く分からない。
ファーファが通訳をする。
「え?取り分がほしい?何だそれ?」
「トドメを刺したのは俺だけど、自分達も戦った?外骨格や、肉が超高値で売れると?」
どうする?俺が取っても、換金出来ないし。
「ファーファ、このゴブリン達、俺と同じくらいのサイズだ。靴と服、できれば帽子がほしい、交渉できる?」
こくこく。
お、何やら話し始めたぞ?
「魔昆虫の外骨格と肉、売れば10年は楽に暮らせる?10年!?え?一匹だよ?たった一匹で10年も!?もしかして、レアな個体なのか?いや、それよりも、今の俺に必要なモノは服と靴だよ、虫はいらない、全部やる、だから服をくれ!」
ん?マップ周囲に赤い点が増え始めたぞ?
俺と中心に赤い点が50!?
囲まれた!?
あ、目視できる!武器を携えている。数が増えている!多いな。
俺はゆっくりと杖をて手放す。
弱体装備、解除、と。
「ファーファ、囲まれたよ、こっちおいで!魔法ぶっ放して逃げよう?」
じわりじわりと魔力を高める俺。
まあ、10年の獲物なら、奪ってでも欲しいか?
バトルはイヤだな、このゴブリン達、なんか可愛いし。
逃げよう!
「!……」
「え?だめ?ゴブリンをよく見ろ?」
彼らは、震えて俺を見ていた。
怖いのか?俺が!?
じんわりと恐怖の感情が伝わって来る、ような気がした。
……更に魔力を高めてみる。
「!!!!!!!」
「ぴいいいいっ!」
「はううううっ!」
「ごびいいいい!」
ゴブリン達は慌てて逃げだしたり、倒れ込んだりした。
恐怖に駆られ、四散するゴブリン達。
え?
慌てて魔力を制御する俺。
ドゲシッ!
ファーファに蹴られた。
うん、確かにこれは俺が悪い。
「マオサマ!ダメ!」
「……うん、今のは反省する。こんなに怯えるとは、思わなかったんだ」
ギロッ!
「本当だって!」
獣人族やエルフ、シーシナさんとか普通にしていたし。
「ごめんよ!ゴブリン達!怖がらせて!」
彼らはもはや、近づこうともしない。
「どうしよう?ファーファ?」
「……!」
「分かった、そうする」
俺は魔昆虫を軽々と担ぎ、ファーファの後に付いていった。
てくてく。
結構歩く。
「ファーファ、本当にこっち?……え?足跡が見える?」
俺には何も見えない。
今度、教えてもらおう。
あ、遠くに村らしきモノが、マップに表示されたぞ。
立ち止まるファーファ。
俺は魔昆虫をズシン、と降ろした。
前世の俺からしたら、考えられない力だ。
これ、大きさ的にバスか?
「ここまで運べば、大丈夫だろう」
ファーファの提案である。
こんな重いモノ、彼らには簡単に運べないだろう、お詫びに運ぼうとなったのだ。
運搬の間、彼らは遠巻きに俺達を監視していた。
もの凄い緊張と恐怖が、匂いじゃないけど、雰囲気として伝わってきた。
ミケとかタロだったら、もっと詳しく分かったかも知れない。
「じゃ、行こう!ファーファ!」
ゴブリン達に手を振り、くるりと向きを変え、上空から見た王都方向を目指し歩き始める。
なあに、急ぐ旅ではないのだ。
あれでゴブリン達が10年、楽に暮らせるならそれでいいや。
俺は俺で、楽しみがある!
「ファーファ、ひひっ、ガチャできるよね?」
こくこく。
「靴がでるといいな?」
と思っていたら、大剣を差し出したゴブリンが一人、地面にひれ伏していた。
「?」
蜘蛛みたいに座り込み、俺達の前進を遮る。
右に、左に、ササッと動き、進ませてくれない!
飛ぶか?
「ゴブゴブ」
ファーファが通訳してくれる。
「え?服をやるから少し待てって?」
ひれ伏しているゴブリンは小刻みに震え、大量の汗を流していた。
「ア、アナタ様ハ……『旅神アラハバキ』サマ、デショウカ?」
お、このゴブリン!喋れるんだ!?
アラハバキ?初めて聞く名前だけど?知らないな?
「違うよ」
「アナタはアノ、恐ロシイ蛇の一族ヲ抑エタ、魔昆虫ノ森ヲ吹払イ、水ヲモタラシ、ドワーフに金、ミスリル、オークには焼けた大地ヲ与エタ。獣人族ノ姫ト王子ヲ助ケ、我々ニハ10年の恵ミヲ……アタエタ」
「よく知っているな?」
ん?姫と王子?誰だそれ?知らんぞ?
しかし、どこで集めた情報だ?見ていたのか?
「旅神サマ、我々ゴブリンは、情報収集ニ長ケテオリマス……」
「旅神ではない」
……ここで魔王です、って名乗っていいのかな?
「魔王だ」
「冗談ヲ」
え?即答?
「……プ」
おい……ファーファ?今、笑った?笑ったよね?
次回投稿は 2023/11/24 朝11時24分か、夜23時23分の予定です。
次回、泣き虫弱虫魔王さま
第6話 旅は道連れ世は情け、情けってなんですか?編 そしてパーティーができました!初めての狩り!です。
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いいね、ブックマーク、感想等も、もらえると励みになり、MAYAKOが一曲歌います。
(お聞かせできないのが残念ですが……え?聞きたくない?タイトルは日向電工さまの『ブリキノダンス』です。では早速……)
……よろしくお願い致します。