2 地上へ降り立つも、俺はボッチだった編 というタイトルで始まるが、なんと友達ができた
連続投稿、今回はここまでです。
次回は2023/11/10 朝11時10分の予定です。
僕は階段を上り始めた。
どうなるのだろう?気が重い。
でも少しだけ、ワクワクもする。
これからのガチャだ。
虹色のコイン。
特典、決して裏切らない人生の供、1体。
犬かしら?
それとも妖精?
き、き、綺麗な女性のエルフさん、とか?
……いや、さすがにそれは無いだろう。
まあ元、健全思春期15歳男子としては、あんなことやこんなことが頭の中を駆け巡る。
ガチャか、楽しみだなっ、と。
……だけど。
決して裏切らない人生の供だなんて、苦しいだけじゃないのかな?
なんかお互い、重くないか?
ん?待てよ、僕がそのトモを裏切っても、そのトモは僕を裏切らない?
……さらに重くないか?
途中、20人くらいの人集りがあった。
もしかして特典ガチャ?
「おい、早く来い!」
黒鬼さんが叫ぶ。
横の黄色い鬼さんは、見るからにイライラしている。
黄色い鬼さんは、女の鬼さんで鬼女?
髪を振り乱し、スレンダーでもの凄く怖い。
その痩せすぎの身体は、病気になった母親を思わせる。
俺は、複雑な気持ちになった。
「ごら゛ぁ早くしろ!」
「野次馬は去れ、早く階段を上れ!お前達のガチャではない!」
「さっさと行け!上で船が待っている!お前ら、ちゃんと三途の川渡れよ!」
残ったのは僕も含めて6人。
「さて、これで全員だ、順番にガチャをするように!」
初心者は6人か……ぼ、俺は一番最後だ。
一人目は髪が長い女の人。
戸惑っている?
あ、ガチャが?
そのガチャは、今までのガチャと比べて、とても小さく、コインの投入口が3つもあった。
とても古いタイプのようで、錆やら汚れが目立っていた。
え?どこにコイン投入?好きなところでいいのかな?
それに、このガチャ、どこかで見たことあるぞ?
!
ああ、バクテリア!バクテリオファージにそっくだ!
これ、動くんじゃね?
脚、収納しているように見えるけど?
「早くしろ!好きな場所を選べ、出てくるヤツは全てレア以上だ」
髪の長い女の人は、右側のレバーを選んだ。
虹色のコインをスロットに滑り込ませ、レバーをガチャガチャッと回す。
コロン。
もはや聞き慣れた声が響く。
《特典:R:レア:犬、犬種は自由に選べます》
ほらね、やっぱわんわんだよね!
「……」
女の人は不満そうである。
なんで?
「ステキな男性がよかったなぁ」
……ぼく、まだ15歳だからよく、分かんないや、と。
綺麗なエルフさん?
なんのことですか?
あ、次の人だ。
コロン。
《特典:R:レア:犬、犬種は選べます》
……おい、また犬?
まさか全部犬か?
どこのソシャゲだ?まさかここでも爆死か?
いや、俺としてはわんわん、大歓迎だ!
このまま行ってくれ!
「……」
あ、このお婆さんも不服そう。
なんで?あ、犬、嫌いとか?
「わしゃ猫派なんじゃが」
さもありなん。
まあ、俺は猫も犬も好きだけどなぁ。
人よりも犬猫の方が好きかも知れない。
イヤな思い出が、脳内を駆け巡る。
小さい頃から母親に虐待されていた俺は、よく家を飛び出した。
学校にも行けず、公園でネコや犬達とよく遊んだ。
昼間の明るい街、家では母親が知らない男とお酒を飲んでいる。
夜、働いて飲んで、昼、遊んで飲んで、いつ寝ているんだよ?
俺は立ち止まり、よく空を見みた。
何かを掴もうと、空に向って、手を伸ばしていたなぁ。
着ている服はボロボロで、痩せて皮膚病の俺。
人よりもネコやイヌに親近感を感じるのは、当たり前か?
「お前さえいなければ」母親がよく口にしたフレーズ。
「どこに行っていたの!?私を一人にしないで!」これも母さんがよく、口にしたフレーズだ。
鬼女を見る。
よく見ると、目が綺麗で優しそうだ。
お口の牙は怖いけど。
ガチャガチャ!
コロン。
次の人はお爺さんだ。
何が出た?
また犬か?
かなり懐疑的で猜疑的になる。
《特典:R:レア:ドラゴン、飛龍確定》
はああああああああっ!?
なんじゃそりゃ!?
犬もドラゴンも同じレア!?
「竜?餌代が大変そうじゃが?」
え?そこ?
「わしゃ、犬好きの、猫好きなんじゃがのう。のう黒鬼さま、この飛龍の大きさはどのくらいじゃ?」
「子は30㎝、大人は30m以上、俺は50m程の飛龍を見たことがある」
「そんなに大きく?エサや、トイレが大変そうじゃな、まあ楽しみにするかのう」
いや、お爺さん、ペット感覚!?ドラゴンはペットじゃないよ!多分。
お爺さんはニコニコと階段を上っていった。
しかし竜?それも飛龍?一部のゲーマーは熱狂するんじゃないか?
飛龍が友達かぁ。
ん?ここで鬼女さんと目が合う。
「少年、あのご老人にとって、犬もドラゴンも同じ大事な家族なのだよ、ドラゴンも犬も同じ愛情を注ぐ対象なのだ、分かるかい?」
あ、だから同じレアだと?
これは凄いガチャだな。
あ、次もお爺さんだ。
ガチャガチャ。
コロン。
《特典:R:車輪》
!?
なんだ?車輪って聞こえたけど?
《自動車、モーターバイク、自転車、一輪車他、選択可》
!?
「自転車?自動車?ワシは生前、お花の家元でインドア派、来世は商人確定とガチャが出たが?機械が相棒?」
お爺さんはブツブツと呟きながら階段を登って行く。
次は若い男の人だ。
20歳くらいだろうか?
「おんな、おんな、貢がせて楽するんだよ!豊満なヤツがいい!」
うわっ、なんだこいつ?
「どけ!ガキ!邪魔だ!」
「わっ、ごごめんなさい!」
「けっ!」
忙しくコインを入れガチャを回す、お兄さん。
ガチャガチャ!
コロン。
《特典:R:男性、年下確定》
え?
「はあああっ!?」
どげしっ!
突然ガチャを蹴り、ツバを吐きかける。
「ぺっ」
その行動を見て、黒鬼さんと鬼女さんの目が銀色に染まる。
あ、なんか鬼さん達、黒いオーラ出ているかも。
男性の悪態は続く。
「なんだ、ごらぁ?男なんざぁ、い・ら・ね・え・んだよっ!おんな出せよ!女!」
ゲシゲシ!
どかどか。
ひいいいいっ!
こえーよーっ!
弱虫スキル発動!
ガンガン蹴られるガチャ。
バキン!
あ!?
破損した!?
怒りが湧き上がる。
子ネコを蹴っているように見えたのだ!
「ひゃ、や、やめなよ、ガチャにあたりゅな!」
震える脚、それでも勇気を振り絞った。
「ガ、ガチャは、し、正直に出しただけだ!」
「っんだとう?このガキ!」
「ガガガガガガキはお前だろう!」
このセリフが精一杯。
怖くて涙でた。
これ以上怒鳴られると、なんか他のも出そうだ。
うう、弱虫スキル発動。
「はぁ?泣きながら何言ってやがる!けっ!」
ガチャに向っていた蹴りは、俺に向いた。
ドケシッ!
まあ、殴られたり蹴られたりは慣れている。
いつものことだ。
死んでまで続くとは思っていなかったけど。
?
痛くない?
遠くに飛んでいくゲロヤロー。
蹴ったのは黒鬼さん。
あいつ、死んだかな?
いや、死んでいるし。
ゲロヤローは帰ってこなかった。
そのまま現世に行ったのだろうか?
ふきふき。
取敢えず、薄いボロボロの衣を破き、ガチャの汚れを落としてやる。
病気や泥だらけの猫や子犬の世話を得意とする俺には、これぐらい、なんともなかった。
「おい、それは我々の仕事だ」
鬼女さんが止めに入る。
無視。
破損……していない?
レバーが少し、曲がってるかな?
冷たい鬼女さんの視線が気になる。
「一度始めたこと、最後まで掃除させてください」
「頑固か?嫌われるぞ?」
「かまいません。人生、皆、中途半端で、最後までやり抜いたのは、何もありませんでした、せめてこれだけでも」
よし!
ピカピカである。
よしよし、頭部を撫でてやる。
ではっ!
へへっ!
特典、特典!
ひひっ。
思わず笑いが込み上げる!
わんわん希望!
ドラゴンでも可!
熱望!人間以外!
ニコニコ顔で、黒鬼さんと鬼女さんを見る。
「お前、ガチャ好きだな」
「え?黒鬼さん?ガチャ、嫌いな人って、いるのですか?」
いやいやいないでしょう?
「はやく回せ!時間がない、次の船を待たせている!」
「そうだな黒鬼、まさか地震が起きるとは!」
「ああ、ダイヤがかなり乱れた」
ダイヤ?
運行スケジュール?
イライラが募り、鬼女さんと黒鬼さんが、不機嫌なお顔になる。
「では!」
スロットに虹色のコインを入れる。
チャリン!と心地いい音!
徐にレバーを!
ギチッ!
「え!?」
ギチッ、ギチッ。
あ、あれ!?あれ!?
ん!?
あ、レバー曲がって回らない?
「これは……あのお兄さんの蹴りか?」
黒鬼さんを見る。
続いて鬼女さんを見る。
うわぁ凄く困ったお顔だな。
諦めるしかないかな?
と、思った瞬間!弱虫スキがル発動した。
「えっと、あの、特典はいいです」
「は!?おい、まて!それはダメだ!」
「でも、ガチャ壊れていますし、やり直しする時間とか、修理の時間とかあります?」
「そ、それは……」
「俺、特典なしでいいです」
「お前は黒いSSVを出したであろう?なら、尚更トモは必要だ!」
ピンッと何かが閃いた。
尚更?
「それはどういうことですか?」
明らかにしまった!というお顔の黒鬼さん。
「い、今修理班を呼んだ、暫し待て!」
ああっ!誤魔化した!
すると階段の上から声がしてきた。
「おーい、あと一名どこだ?もう待てぬぞ!」
ん?
あ、待たせている船?
人を待たせている!?
あ、なんとも言えぬプレッシャーが……。
ガチャを見ている黒鬼さんと鬼女さんを横目に、階段を駆け上がり、船に飛び乗った。
「おせーぞごらぁ!」
どげしっ!
蹴られた。
あ、さっきのお兄さんだ。
結局蹴られた。
「ごらぁ、さっさと今回の人生は、終わらせてーんだよ!早くしろよ!このガキ!」
ゲシゲシッ!
「す、すみません、ごめんなさい!け、蹴らないでくださぁい!シクシク」
弱虫スキル発動。
泣き虫スキル発動。
これはもう軟弱?
でもさっさと人生終わらせるなんて、酷い言い方だな。
……まて、俺の場合どうなんだ?
俺こそ早く人生終わらせた方がいいんじゃないのか?
そもそも魔王って、どんな人生?
勇者に討伐されて、終りか?
……なんか、悲しくなってきた。
しくしく。
ああ、またスキルが発動した。
周りを見る。
船の乗客は20人くらいだろうか、船頭さんが一人と、緑色の鬼さんが乗っている。
霧?
白い霧がさっ、と流れてきた。
なんだろう?この霧、いい匂いがする。
「なんだこの霧!す、凄く臭い!ゲホゲホッ!」
え?
「ぐえええっ!く、苦しいっ!」
「え?いい香りですけど?」
俺には花の香りだが?梅かな?
「ほんと、清々しい香……辛いこと、皆忘れそう……」
この霧って??
人によって香が違う?
「本当にいい香り!全てを忘れそう!」
……ん?やばくないか?
船はゆっくりと進み、対岸に着く。
霧は晴れ、目の前には見渡す限りのお花畑が広がっていた。
すっんんんごく綺麗だ!
こんな綺麗な花の海?見たことがない!
船から下りると、僕以外、みんな容姿が変わっていた。
ぼ……俺は相変わらずの、白いボロボロの服に裸足だけど、皆、綺麗な服を着ていた。
年齢も変わったみたいで、特に笑えたのが、あのお兄さんだ。
「な、なによ!これ!どうして私、女なのぉ!」
そう、お兄さんは、お姉さんになっていた。
「お前は、いつも女のことばかり考えていたな?だから女になったのじゃヒヒッ、今まで散々女達を虐め、苦しめ、利用してきただろう?今度はお前の番だ」
「ひいいいっ」
「だがこの運命、変えることができるぞ。それにお前を決して裏切らない者が待っておる。運良く巡り会えることを願っておるぞ、ひひっ」
「あのう……船頭さん」
「なんじゃ?」
「俺、何も変わっていませんが?」
「変える必要がなかったのじゃ」
「ええええっ!?」
「お前は、好きに生きるがよい」
そんな、放置プレー?
じゃ、ひっそりどこか孤島か森の中で。
魔王なんて、悪役じゃん。
討伐されるなんてイヤだし。
生れる前から隠居します。
ん?皆が?
周りの人達は虚ろな目で立ち止まり始めた。
「え?」
「ほう、さすがは破壊神の称号持ちじゃな、忘れぬか」
「忘れる?」
「以前の記憶、前世の記憶は邪魔なのじゃ、人によっては毒にしか成らん。ここで消して新たな人生を歩むのじゃ」
「消えない僕は何?」
「さあぁな、お前は、お前じゃろ?」
目の前の人達が次々にお花畑を越えて行く。
走って行く者、歩いて行く者、立ち止まる者。
俺は、ゆっくりと歩き出した。
俯き、一歩一歩と踏締めるように歩き出す。
そして気がつくと、そこは森の中だった。
明らかに雰囲気が違う。
え?いつの間に?
ここは地上だ!
間違いない!
え?
俺の転生って?
『生れる』じゃなくて、このままスタート?
これ転移じゃ?
お母さん、お父さん、いないの?
……ええええっ!?
弱虫スキル発動だ。
泣きたくなった。
いや、泣いていた。
前世はお父さん、知らなくてお母さんだけだった。
生まれ変わったら、オヤジとキャッチボールする予定だった。
一度でいいから、オヤジとキャッチボールしたかったのに!
オヤジどころか、お母さんもなし?
できる限り、お母さん孝行しようと思っていたのにっ!
魔王って、何?
こんなに孤独なの!?
そのまま生れる?
いやこれは顕現ってヤツ?
「はぁ」
溜息一つ。
とても悲しくなった。
スキル発動。
涙でた。
それも、凄く悲しい涙だ。
すると、俺の周辺の木や、足下の草が枯れ始めた!?
「うごっ!?」
ざわざわ、バキ、パキッ!
緑の木々は茶色に変色し、その葉を落とし始める。
飛ぶ鳥は弱り、地を這い始めた。
昆虫はひっくり返り、その沢山の手足をバタつかせ、小川には小魚が浮き始める。
「勘弁してーーーーーーつ!なにこれえええっ!今のなし!」
泣き虫スキル発動である。
「うわーんっ!ど、ど、ど、ど、ど、どうしよう!?みんなごめんよっ!」
俺は周囲の木々や動物達に謝った!
なんか面白いこと!面白いことを考えよう!
…………面白いことって?
俺、あまり笑わなかったなぁ。
じゃ、楽しいこと!
楽しいこと?
楽しいこと!?あったか?
あんなことや、こんなこと。
ろくな思い出しかねーぞ!
ならばっ!
格好いいこと?可愛い?
!
子ねこと子いぬ!
ここは森!ならば森林狼!
森や平原を駆け抜ける狼!
カッケー!
繰り返し何度も見た動画。
ピタリ、と止まる周囲の現象。
狼、イヌ、ネコ、と言えば!
肉球!ぷにぷにのもにもに!
アスファルトは熱い!火傷するなよ?
公園やお家の庭、壁を使って移動するのだ!
ほっこり、する俺。
すると、木々の立ち枯れは止まり、鳥は復活して羽ばたく!
昆虫も魚もどうにか動き出す。
枯れた木はそのままだったが、俺が落ち着き深呼吸をすると、根元から新しい芽が吹き始めた。
倍速の動画みたいだ。
「俺、これじゃ唯の迷惑存在?」
感情のダダ漏れはマズいと?
感情に何かが反応した?
自分の中から、何かが出ていく感覚。
これ?なんだ?
俺の中に、超新星のような輝きがあった。
宇宙の画像。
その画像が、動画で俺の中にあった。
そうとしか言いようがない。
美しくも恐ろしさを感じる何かだ。
畏怖?
力のある畏怖?
なんとも言えない暴力的な輝きが俺の中で蠢いていたのだ。
「……魔法使えそう」
右手を伸ばして、えい、と。
炎のイメージ!
ぶわっと炎の固まりが空中に現れる。
「おおおっ」
すげー。
かっけー。
しかし、大きさが凄かった。
とにかくデカい。デカすぎである。
軽く念じただけなのに!
東京ドーム一個分くらいありそうだ。
……すみません、東京ドーム、大きさわかりません。
言ってみたかっただけです。
しかしでけー炎の固まりだなぁ。
森が燃えるどころか、消え始めた。
「あらああああああっ!?なんですとおおおおっ!」
スキルが発動した。
怖くなったのだ。
さもありなん。
「き、消えてええええっ!炎きえてくれえええええっ!」
炎は消え、俺はその場から泣きながら走り去った。
焼け跡はクレーター状になり、溶岩のようになっていた。
キラキラしているところはガラスか?
こ、こえーよー!
俺自体も焼けた。
ちょっと髪の毛が。
泣き虫弱虫スキルが発動した。
なに?この魔法威力の絶大さ。
これでは生きていけない気がした。
いろんな意味で。
ここが、どんな世界か知らないが、これではいけない!
取敢えず、自分が出した魔法を怖がってはいけないと思う。
目標1、魔法に馴れよう!
練習が始まる。
森の中を彷徨い……散策しながら、魔法の練習である。
不思議とお腹は減らない。
睡眠も必要無いみたいだ。
ただ、寝ようと思えば、幾らでも寝れた。
疲れもほとんど感じず、どれだけでも歩けた。
面白いのは、歩けば歩くほど、脳内にマッピングができることだ。
そして、行きたいところを念じると、ぽん!と、そこへ瞬くまに移動した!
おお、便利!
マップ内はどこでも瞬時だ!
さすがは魔王。
ふと、思った。
魔法だけではなく、武術も必要では?
足下を見ると、枯れた枝があった。
結構大きい。
掴んで、振ってみる。
ブンブン。
何も起らない。
平和だ。
……ちょっと力を込めて振ってみる。
「ふんっ!」
ドゴオオオオオオオオオオオンンンッ!
足下から地平線まで、谷間ができた。
……怖くなって泣いた。
この力で、何をどうしろと?
一個人でこんな力、所有していいのか?
しかもこれ、元はガチャだぞ!
目標2、ちから加減を覚える。
で、俺、何をすればいいのだ?
魔王かもしれないけど、基本、泣き虫の弱虫だ。
世界征服なんて面倒いし、人類絶滅なんて怖くてできないし、そもそもこの世界に人類いるのだろうか?
目標1の魔法に馴れたいのだが、難しい、2も怪しいもんだ。
どれも超ド級。
そよ風は暴風だし、水は湖を作るし、氷を出したら、辺りは冷凍庫みたいに成るし、ほんのちょっとで地形が変わる!
空も飛べそうだけど(いや、確実に飛べるだろうな)どこからか、目撃されたら怖い。
空かぁ……見上げると、小鳥がチチッ、と飛んでいる。
「……」
取敢えず、浮いてみる。
「……!」
おお、浮いた。
成程、これはイメージだな。
と、思った瞬間!
ヒュン!
足下には丸い星。
わぁ綺麗だ……じゃなくてええええええっ!
なにここ!?
成層圏?宇宙じゃん!
空気は?寒さ対策は!?
弱虫、泣き虫スキル発動!
取敢えず、怖くなって泣きながら地上に降り立つ。
「えぐっ、えぐっ」
嗚咽が止まらん!
高所恐怖症ってなに?高過ぎだよ!
それに、上空から見たけど、森の地形が変わっていた。
焼け跡があり、湖があって、暴風による倒木地帯があった。
それに大地に刻まれている、深い谷間!
森の生態系、変わる?
これじゃ唯単に、俺、迷惑な存在だよ!
……そして、遙か彼方、地平線上に建物が見えた。
石作の大きなお城のようであった。
途中、集落も沢山あった。
街がある?行ってみたい!
でも俺みたいなのが、訪問すると、迷惑ではなかろうか?
「?」
その時、気配がした。
「?」
なんだ?確かに、誰かが俺を見ているぞ?
鳥?虫、昆虫か?
複数だ!
「あ」
それは、森の動物達であった。
色々な動物が、俺を見ていた。
もしかして、森を焼いたり、壊したりしたから、かな?
……恨みを買った?
そのつぶらな黒い瞳に見られ、俺は居たたまれなくなりその場を後にした。
勿論泣きながら。
ううっ更に、森の奥へ!
ボッチすぎる!
犬猫好きの俺に、あの冷たい視線は痛すぎる!
肉食も草食も、揃って見ていた。
出て行けってか?
わあああああんっ!
幹部とか部下とか無し?いないの?四天王でも可。
魔王がラスボスなら、中ボスとかいないの!?
俺一人で築き上げないといけないの?
どんな育成ゲームだよ!
すると、俺の速さに付いてきている者が1名だけいた。
いや1匹?1羽?
スピード、アップ!
え?
こいつ、おかしい!
俺に付いてくる!?
普通の動物じゃない!
ふっ、と止まり、気配を伺う。
あ、追跡者も止まった!
どうやって、俺の位置を特定しているんだ?
特定という言葉に、恐怖を感じた。
住所特定、名前、生年月日、個人情報!
と、特定はいやだあああっ!
弱虫スキルが発動。
こ、こえーよー!
ス、ストーカー?
俺、何か悪いことした?
あ、森破壊したか。
気配を消してやり過ごそう!
だって逃げられない!
思うだけで能力が発動した。
俺は森に溶け込み、辺りから消え失せた。
ガサ、ゴソ。
草木を踏み、近づいて来る何か。
なんだろう?
かなり警戒しているぞ。
まあ、突然、目標物が消えればそうなるか。
ガッチョン、ガッチョン!
?
機械音?
まさか……ゴーレム!?
一気に好奇心が吹き出た!
ロ、ロボット!?
ごそごそっ。
ひょこっ、と大木の横から現れたそいつは、知っているヤツだった!
「ああああっ!バクテリオファージ・ガチャ!?」
思わず声が出た!
そう、あいつだ!死者の世界で、虹色のコイン!特典のガチャ!
やっぱ歩けたんだ!
いや、そこじゃなくて!
なんでこいつが、ここに?
目が合う。
いや、こいつの目がどこか分からないけど、多分目が合った。
お互い固まる。
ささっ。
あ!か、隠れた!
な、何かお話しを!
お話しなんて、いつ以来だ?
「ぢ、ゴホゴホッ、ちょっと待って!」
久しぶりに喋った気がする。
チラリ、と大木の陰から頭部を出すバクテリオファージ・ガチャ。
「えっと、なんでここに?死者の世界は?ガチャの仕事は大丈夫なの?」
「……」
「え?クビになった!?」
「……」
「壊れたから?旧式で部品がない?破棄処分!?」
原因はあれか?あの蹴り?
酷いなぁ、もともとはあの黒鬼さんと鬼女さんの職務怠慢だろう!
あの男の人(現女の人)の暴力、止めなかった!
「で、死の世界の『夢の島』から、逃げて来たと?」
こくこく。
なんで俺の所?
「……」
!
「……行くところが無い?」
…………前世の俺と同じだ。
泣き虫スキルが発動した。
「……」
「それで、俺しか思い浮かばなかったと?」
こくこく。
「キ……キレイニ……シイテクレタ……」
「!」
「ヨ……ヨシヨシ……テ……クレタ……」
連れ帰った子犬や子ネコは皆、母親が保健所送りにした。
まあ、アパート、ペット禁止だったしね。
……ごめんよ、あの時のネコ、いぬ。
俺、小さすぎて知らなかったんだよ……。
今は、俺一人。
判断するのは俺。
俺は自由。
悲しいほどに自由だ!
「わかった、一緒に行こう!」
二人で、異世界の旅が始まった。
どうでしょうか?
面白かったでしょうか?
よろしければ、ページ下部の評価欄から、評価をしてもらえると嬉しいです。
いいね、ブックマーク、感想等も、もらえると励みになります。
よろしくお願い致します。
ご一読、ありがとうございました。
次回投稿は 2023/11/10 11時10分に投稿予定です。
サブタイトルは
『森の住人編 女の子と討伐隊とガチャを壊してしまった!どうしよう!』です。