優しい人
「やぁ、こりゃびっくりだ。木の枝に引っ掛かっているようだけど、降りられるかい?」
「降りられないです降りられないです!助けて!」
よかった、人だ!とオリヴィエはその不思議な人物に助けを求める。誰もいなさそうな森林の中、下手に動けないこの状況に人と出会えることは何よりの助けだ。
「おっけい。そのまま動かないでいてね」
その人物が木に向かいおもむろに両腕を頭上に広げると、次第にオリヴィエの体とその近くにある機体が周りに緑色の光を淡く放ち、木の幹からフワッと宙に浮きはじめる。
不思議な感覚に纏われながら、そのままオリヴィエと機体がゆっくりと木から離れ、地面に降りてくる。
その感覚はまさに 優しさ に近いように感じ取れ、混乱しているこの状況に落ち着きを少し取り寄せた。
やがてペタンと地面に下ろされると、緑の光は消え、目の前にまでその人物がやってくる。
「なんだい、怪我をしているじゃないか。それも相当派手だねぇ。上から落っこちてきたのかい?」
その声の主は短めの白髪に翠色の澄んだ瞳と、黒色のフードを被った、少し小柄で綺麗な人物だった。
例えるなら……、そう、まるで魔法使いのような。
「途中で操縦が効かなくなって、そのままここに落ちちゃった!」
「待っていて、手当ての道具を持ってくる。」
そう言われしばらく待っていると、救急箱のようなものを片手に抱え、手を振りながら戻ってくる。まるで敵意がないようだ。
オリヴィエの前まで来るとその魔法使いは跪き、怪我をしている膝の手当を始めた。その手つきはだいぶ慣れているようで、みるみるうちに包帯を巻かれ素早く手当が終わってしまった。
「っと、ありがとう!ねぇ、名前聞いていい?」
「僕はドロシー。君は?」
「ドロシー!私オリヴィエ!よろしく!」
お互い握手を交わしながら挨拶をする。ドロシーと名乗ったその人物はにこやかに柔らかく答えるので、いい人だという印象が受けられる。
すると、向こうから鳥が鳴きながら頭上を飛んできて、先ほど引っ掛かっていた木の幹の方へと向かっていく姿が見えた。
「親鳥だね。」
「さ、さっきの雛鳥のかしら……!」
「ふふ、気にかけてくれていたよね?君は優しいんだ、ありがとう。雛たちは無事さ。」
ドロシーは雛鳥が心配になって焦っていたオリヴィエに対してそう優しく安心させるように声をかけた。
「よ、よかったぁ……。あ、ユーゴとイース!!!」
安心できたのも束の間、そういえば二人ともどこへ行ってしまったのか。そもそも無事なのだろうか。機体はもう見るに堪えないほどに変形してしまって乗れそうにない……。
そもそもこうなったのは自分に原因がある……。
私が最初から乗らなければ良かったのだ。
と、オリヴィエは不安とともに罪悪感に押され、気落ちした表情を浮かべて顔を下に向けてしまった。
「何か心配事かい?」
「友達が二人乗っていたの……。でも落ちてきた時にはぐれちゃったみたいで……。」
「それはいけない、一緒に探そう。大丈夫、この森のことはよく知っているから。」
ドロシーはすかさず協力を申し出てくれた。この人はどこまで優しいのだろうか。
「ゔぇ〜ん……ありがと゛〜ぅ……」
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