スリリング!
セリフと文章が混合しないよう改行を加えてみました。見やすくなっていれば幸いです。
4/15 追加された記述があります。
視界が砂嵐に覆われている。今日に限って特段と酷い。
小型飛行機を飛ばす際に乗り込んできたオリヴィエにより、機体は宙を舞う際安定せず先程までスリリングな死闘を繰り広げていたが、今はそれと打って代わりとても安定して静かである。
「……後部座席、狭いだろう」
落ち着いた静かな空間で口を開いたのはイースだ。
「関節がどうにかなりそうだよ……」
「視界悪くない?これ、どこに進んでるのかわかってるの?」
狭く後ろへ後ろへと押し込まれているユーゴのことすら気にもかけず、オリヴィエは砂嵐の事を心配した。
窓から見えるのは砂一色で、それが風に煽られ音を立てて打ちつけている。
「センサーが付いてる。それで多少の障害物は感知され、避けられるようになっているんだ。方角も見失う心配は無い。前の方に小さなモニターがあるだろう?それを見ながら操縦をする」
「あっこれぇ???すごーい!!!ん、ねぇ右側の映ってるこれ何?」
オリヴィエのその言葉を聞いたイースは、低く慎重な態度になり
「捕まってくれ、傾くぞ」
と二人に警告をした。
その瞬間に機体は宣言通り大きく左側に傾いて旋回し始め、綺麗な弧を描いた飛行機雲を発生させながら落ちる感覚を機内三名に与えた。
「「ぎゃーーーっっっ!!!??!?!」」
まるでアトラクションに乗っているかのような感覚は、後部座席に乗っているオリヴィエとユーゴの内臓物をふわっと浮かせ、「落ちる」という恐怖を植え付ける。
「死!!!!あ゛ッッッ!!!!」
ユーゴは恐怖のあまりついには白目を剥き、意識がどこかへと行ってしまった。
「うわ゛ーーーッッッッ!!!ッッッハッハッハッハッ!!!」
オリヴィエは恐怖心が一瞬のうちに上回り、楽しいという錯覚に陥ってしまったようだ。いわゆるハイな状態で彼女は笑いだし、機内は混沌へと落とされた。
一方イースは先程と変わらず真剣な様子で機体を操縦している。パイロット、だからなのか、この体験には多少耐性がついているらしい。
乗っている後部座席二人に、少し配慮が足りていないことをイースは覚えた方がいいのではないだろうか。
しばらくしたあと旋回を止め、機体の傾きを直し、また落ち着きを取り戻した。
「……すまない、あれは魔物だ」
イースは急に機体を逸らした事を流石に謝り、後部座席にいる二人に上を見るよう指を空に指した。
意識を保っていたオリヴィエは、上から大きな影がゆっくりと機体を包んでいくことに気がつき、驚きながら上を見上げた。
不定期更新です。