騒がしい朝
4/15 すこし読みやすさを意識し、改行を入れました。
カーン、カーン、カーン……
朝を知らせる鐘の音。建物でできたこの国にはよく響き渡り、満遍なく隅々にいる住人を起こす役割を果たしている。
勿論、鐘が鳴る前から起きている人間もいれば、この鐘を合図に逆に寝出したりする者もいる。
扉は付いておらず、一歩間違えたら上の階の者は落ちてしまうような棚状の建物があり、青年イースはそこで鐘の音を聞き目を覚ます。
硬い金属の上に薄い布が敷いてあるだけのお粗末な寝床から起き上がり、彼はいつも通りにストレッチを始める。
ストレッチの終わりと同時に、遠くの方から何やら騒ぎのようなものが聞こえてきた。
彼はそのまま気にせず自分の持ち場につこうとするが、その音はどんどん近づいてきており、ついには壁のついていない外の方からロープウェイを伝って一人の少女が彼の部屋に乗り込んできてしまった。
「おはよう!匿って!」
「……」
「ありがと!」
何も返事はしてないが、勝手に匿うことになってしまった。
彼女は急いで部屋に置いてあった大きめの道具入れの箱から、入っていた道具を全部外に出し、その空になった箱の中に入って蓋を閉じて身を隠す。
この身勝手な行動にイースは怒る様子もなく、むしろ手慣れた感じで外に散らばった道具たちを整理し始めた。
やがてしばらくすると、扉のついていない廊下の方から土方の格好をした男二人が何か怒った様子で訪ねてきた。
「おうイース!オリヴィエ見てないか?!」
「見てません」
「くそ〜!逃げ足ばっか早いんだから!」
「じゃあな!ありがとう!」
「……」
男二人は走っていき静かになると、オリヴィエと呼ばれた彼女は道具箱の蓋をそっと開け安全を確認した。
「……もう大丈夫ね。はー、ありがとうイース!助かったわ!またよろしく!」
そう言うとオリヴィエは来た方のロープウェイからまたどこかへ行ってしまった。
そんな騒がしい朝。
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