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プロローグ
─その箱を開ける時、高らかなる災いの音が鳴り響き世界が変わる。
数百年前突如この世界に現れた、開けると世界に災いをもたらす箱。
ラッパの音が鳴ればそれが合図。世界の天理を覆す音。世界が変わる音。箱を開けた音。
その音鳴ること実に五度。
一度目が鳴った時、世界は汚染されて砂の嵐に覆われ、魔物が放たれた。
二度目が鳴った時、海が半壊する。
三度目が鳴った時、とうとう川の水が使えなくなり、各国は民を守るために結界を張り始めた。
四度目が鳴った時、太陽は限られた場所でしか見られなくなってしまった。
そして五度目は─
何も起こらなかった。
だが決して侮ってはいけない。目に見える災いばかりとは限らない。
世界は終わりに近づいている。それでも生きようとする人間たち。
希望が薄れゆくこの世界で日常を送ろう。
生きよう。最後まで笑うのだ。