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ひたむき  作者: ナトラ
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情熱 ③

 香純が話終えると拍手があり、竹清が次にこう述べた。


「私が予測する今後の動きについてお伝えしておきます、先日、社長が相手方の勧誘をきっぱりと断ったのは御存じかと思います、その後に起きていることは、それに関連しているのも既に把握しているものと思います、私は異論ありませんが、もしあれば挙手願います」


竹清はそう述べ、幹部達の表情をじっと見ていた。湖層以下、誰も挙手せず頷いたのを見てこう続けた。


「次に予想です、近日中に再び何らかの接触を試みてくるだろうと思います、先日は営業が飛び込みでやって来ました、しかし次はもしかすると責任者自らの訪問があるかもしれません、しかしどなたが来られても、既に私たちの考えは決まっていますので、再びお断りすることになります、ただこの先が重要で、先日その営業がもし加入しなければと匂わせたように、実際に年内で移籍を希望する店舗が既に多数出てきています、そうした裏付けは湖層副社長が中心となり今も調べているところですが、そこで私から質問です、香純君の話にもありましたように、皆さんは今後どうしていきたいですか、皆さんの多くは既に辞表を提出していると聞いています、その上で今改めてどうしていきたいか、そのことをぜひお聞かせ願いたい、最初に副社長どうですか」


すると湖層は落ち着いて、淡々とこう述べた。


「現実的に考えまして、各店舗の判断を尊重するのであれば、このまま対抗手段を考慮しないというのも一つの手だと思っています、総重建設の植永社長や先代の社長が憤慨されたのは知っています、しかし相手と直接対峙するのは避け、これを機に他の道について考えてもよろしいのではないかと思います」


「なるほど、その他はどうですか、じゃ、梅川専務」


「お言葉ですが、私はその意見に反対です、相手と直接向き合う必要があると思います、総重建設の植永社長、並びに先代の意見を支持します」


 その意見を聞き、香純は静かにこぶしを握り締めて驚いていた。プライベートとの感情をきっぱり切り離し、このように堂々と意見する梅川を見て、既にその姿は自分の知る彼ではないと思った。その一方、年内に結婚すると嬉しそうに語った湖層の表情を、ここでふと思い出していた。これはもしかしたらと思いつつ、その後の話に耳を傾けた。


「梅川専務は反対ですね、それでは次に、阪上常務はどうですか」


「私は副社長の意見に賛成します、確かに専務が仰ることもわかりますが」


「賛成ですね、他に意見があれば挙手願います」


 他に意見はなく結果、賛成六票の反対四票となった。副社長と専務の意見が分かれたことが意外だった、そして社員へアンケートを実施することになり、その票も合わせて判断することになった。それから数日後に三社一斉で行い、賛成七割の反対が三割となった。今回は記名で重要と銘打ち、今後の希望を示す正式な書類として扱うことになった。つまりその用紙へ記入することで、その道への本人希望を会社へ正式に提示した公式文章として扱うということになる。そして二週間後、再びその会議が行われた。


「結果はこのようになりました、林松社長から一言、お願いします」


「お疲れさん、何だかこういうのは懐かしいね、随分前にあれは確か合併の時以来だな、皆、あれから本当によく頑張ってくれたと感謝している、今日はその結果を受けてだが、そういえば香純は投票していないよな、先に意見を聞いてみたいんだが」


 竹清からの促しの後、林松がそう答えてじろりと見て言うので、香純はこう答えた。


「私は既にこちらの社員ではありませんが、既に本音はお伝えしております、継続希望、つまり賛成ということになります」


林松はそれを以外に思いながら、その後も話を進めた。


「なるほどな、香純の意見が出たところで俺の話なんだが、これは一つの案として聞いてほしい、これを機に会社形態を止めようか、今考えているんだ、その後にどうするかは希望者を募り、新たに組合を立ち上げようかと思案しているところなんだ、組合というのは全員が事業主、つまりそうした人たちが集まって協力する関係となる、但し、今すぐではない、これから徐々にその方向で進めていこうかと思っているんだ」


 多くが唖然とする中、梅川がこう述べた。


「では、すぐに会社を閉じるわけではないのですね」


「もちろんだ、しかしその間に準備を進めていけば、結果的に事業縮小とはなるだろう、そこで早速、この話を各現場で伝えてもらいたい、そしてアンケートについて訂正要望があるなら、期間限定で受け付けようと思うんだが、どうだい里香ちゃん、梅」


二人とも異論なしと言い、深く頷いた。


「じゃ、また二週間後に報告してくれ、これから現在の状況をもう一度まとめていこう」


「社長、電話が入っているそうです」


 湖層が隣から小声でそう耳打ちした。そこで林松も同じようにしてその相手を尋ねると、どうやらライスパン代表からだという。今は会議中だと言おうとしたが、代表直々ではと思い直して一旦、席を離れた。


「社長が不在となる間、私が代わってお伝えします」


 現在の状況は明らかに撤退店舗が増加し、社員もさらに五名が退職を決めたこと、また一日当たりの入客数の減少により、日々の収益にも影響が出始めている、そのため食材仕入先から値上げ申請が、既に数軒来ていることなどを伝えた。


 一方で会議室を出た林松は、自室へ戻ると受話器をとった。


「はい、林松ですが」


「あ、これはどうも、私、ライスパングループ代表の黒野辺と申します、お忙しいところ申し訳ない」


「いや、こちらこそお待たせして申し訳ない、会議中だったもので」


「そうですか、何かと大変ですよね、私も今日は忙しくて仕方ありません」


「で、ご用件は」


「ああ、そうそう、近いうちお会いできませんか、社長は確かけいこさんの弟さんですね」


「そうです、姉とお知り合いだそうで」


「昔、お世話になったんですよ」


「そうですか、どのようなご関係で」


「昔、OIDEYASUで働いていたんですよ、まあ、随分前ですけどね」


「なるほど、良いでしょう、では、いつにしましょうか」


 それから互いの都合を伝え合い、一致した日を約束し電話を終えた。林松は大きく背伸びした後、冷蔵庫のドアを開け、中から一本取り出した。そのふたを開けてぐいっと飲んだ後、険しい表情のまま再び会議室へと向かった。

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