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私は一度死んだ。…はず。



大学の帰りに歩道にトラックが突っ込んできたので即死だったのだと思う。


再び意識が戻った時、私は赤ん坊だった。思うように身体が動かせなくて、喋る事も出来い。口を開いてもアーだとかウーとしか出てこない。それが堪らなく悔しくて思わず泣き喚いた。


「嗚呼!アイリーンが泣いてしまったよ…どうしたらいいんだ!」


「赤ちゃんなんだから泣くのは当たり前でしょう?」


側にいた父親らしき男の人はそんな私を見てオロオロとしていたが、母親であろう美人な女の人は元気がいいのねと笑っていた。実に対称的な両親だ。

そして、私の名前はアイリーンというらしい。ということは外国?なのかな?

父親はいたって普通の人のようだった。蜂蜜色の髪と瞳をした人の良さそうな顔に比例してとても暖かな人だ。しかし、父とは反対に母親はとても綺麗な人だ。見た目はブロンド碧眼の儚げな美人だけど中身はそこらへんの男の人なんかより豪快な人だ。

私はこの新しい両親の元で生きていかなければならないようだ。


私が生まれ変わって一年が経った。この一年間何をしていたかというと、ひたすら羞恥に耐えていた。赤ん坊特有の世話に最初こそ全力で泣き喚いて抵抗したものの、もうどうしようもないんだと割り切って大人しくされるがまま身を任せることが出来るようになった。一年間もかけて、だ。お風呂に入れられたり、排泄物の処理をされたり、自我があるって怖い…。


しかし、だ。

今重要なことはそんなことではないのだ。私はまだ一年経ってもまだ何も把握できていない。唯一、情報を得られる手段である両親からも何も得られていない。両親は…特に父親は私の話しかしないのだ。今日もアイリーンは可愛いだとか、アイリーンがこっちを見ただとか、そんな事をデレデレと母親に話してはニコニコしている、親バカというものだ。

私が初めて喋った時は物凄かった。


「…とーしゃっ」


「え、…え?!あ、アイリーン!今、とうさんって!…え?!セシリアぁぁ!」


「…もう、どうしたの?大声なんか出して」


「アイリーンが!アイリーンが喋ったんだ!」


「あら、凄いじゃないアイリーン」





そしてもう一つ、私が物凄く気に掛かっていることがある。最近になって私の周りには妖精さんがいるのだ。…決して厨二病なんかではない、断じて違う。


本当にいるのだ。妖精さんが、本物のフェアリーが私の周りに…。


最初は遠巻きに私の様子を伺っていただけだったけど、最近になってぐっと距離を縮めてきた。私の髪を引っ張ったりと悪戯をしてくることもあれば、毛布をかけ直してくれたりと世話を焼いてくれたりするのだ。


それも結構な種類がいるようで、絵本に出てくるような羽根のある小さなのや、毛むくじゃらで一歳の私と同じくらいの大きさの妖精など家にいるものだけで結構いる。これなら外にはもっと沢山いそうだ。


私だけに見えているのならどうしようと思っていたが、母にも見えていたので取り敢えず一安心だ。母は妖精さん達に私のお世話を頼んでいるようで、いつも御礼のクッキーを一枚ずつ渡している。


しかし、どういう訳か、父には何も見えていないみたいで母が妖精さんと話しているのをいつも微笑みながら見ている。私の予想だが、恐らく父のように見えないことが普通なのだと思う。まだ父と母としか関わりを持っていないので何とも言えないが間違い無いと思う。


そうだとしたら何も無いところで一人で話したりしているのは気味悪く感じるのでなないだろうか。父はそうでは無いみたいだが、他の人も父のようだとは限らない。こういった事もこれからの為に把握しておく必要があるよね。





「アイリーン、貴方はこれからもきっと辛いことがあるわ。でも決して負けないで?辛い時には抱きしめてくれる家族がいるわ。それだけは忘れないで?」



どうやら私が生まれ変わったのは異世界?らしい。

父の書庫を漁っていたら世界地図らしき物があった。それは私の知っていた世界地図とは全く違っていて、国の名前や地形も見たことのないものばかりだった。


私が生まれたのはセイサという国らしい。セイサは大まかに、王様が直接統治する中央(セントラル)と貴族が統治する東西南北の幾つかの領地に分かれている。中央の周りからは離れていくほど田舎になっているみたいだ。因みに私が住んでいるのは西のカルタール領の極端に位置するコーリンという田舎町だ。





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