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私が生まれ変わってはや一年が経った。

この一年間何をしていたかというと、もうひたすら羞恥に耐えていた。赤ん坊特有の世話に最初こそ全力で泣き喚いて抵抗したものの、もうどうしようもないんだと割り切って大人しくされるがまま身を任せることが出来るようになった。一年間もかけて、だ。お風呂に入れられたり、排泄物の処理をされたり、自我があるって怖い…。


しかし、だ。

今重要なことはそんなことではないのだ。兎に角、私はまだ一年経ってもまだ何も把握できていない。唯一、情報を得られる手段である両親からも何も得られていない。両親は…特に父親は私の話しかしないのだ。今日もアイリーンは可愛いだとか、アイリーンがこっちを見ただとか、そんな事をデレデレと母親に話してはニコニコしている、所詮親バカというものだ。その結果、私はこの家の状況すら掴めていないのだ。




まあ、親バカ加減はどれ程かというと、私が初めて喋った時は物凄かった。


「…とーしゃっ」


「え、…え?!あ、アイリーン!今、とうさんって!…え?!セシリアぁぁ!」


…うるさい。落ち着け、父(仮)よ。


「…もう、どうしたの?大声なんか出して」


「アイリーンが!!アイリーンが喋ったんだ!」


「あら、凄いじゃないアイリーン。父さんのことも呼べるようになったのね」


騒ぎ続ける父とは反対に母は随分とアッサリとした反応だ。いつも思うけどこの夫婦の温度差はなんなんだ。


「…え?!セシリア今なんて…」


「あら、アイリーンはとっくに私のことも呼んでくれてたわよ?」


あっけらかんと言う母に父は如何にもガーンという形容詞が付きそうな顔になった。


「聞いてないよセシリア!」


「聞かれてないもの」


涙目で訴える父をバッサリと切り捨てる母。


「うっ…」


それから父は夕飯の時間になるまで私のベッドの傍で小さくなっていじけていた。母もそんな父を見て呆れた様子だったがほぼ無視していた。








そしてひとつ私が物凄く気に掛かっていることがある。目が少しずつ鮮明に見えるようになってきて分かったこと。




私の周りには妖精さんがいるのだ。





……決して厨二病なんかではない、断じて違う。


とにかく、本当にいるのだ。妖精さんが、本物のフェアリーが私の周りに…。妖精さん達は最初は遠巻きに私の様子を伺っていただけだったけど、最近になってぐっと距離を縮めてきた。私の髪を引っ張ったりと悪戯をしてくることもあれば、毛布をかけ直してくれたりと世話を焼いてくれたりするのだ。


それも結構な種類がいるようで、絵本に出てくるような羽根のある小さなのや、毛むくじゃらで一歳の私と同じくらいの大きさの妖精など家にいるものだけで結構いる。これなら外にはもっと沢山いそうだ。もしかして私だけに見えているのならどうしようと思っていたが、母にも見えていたので取り敢えず一安心だ。母は妖精さん達に私のお世話を頼んでいるようで、いつも御礼のクッキーを一枚ずつ渡している。


しかし、どういう訳か、父には何も見えていないみたいで母が妖精さんと話しているのをいつも微笑みながら見ている。私の予想だが、恐らく父のように見えないことが普通なのだと思う。まだ父と母としか関わりを持っていないので何とも言えないが可能性からして間違い無いと思う。


そうだとしたら何も無いところで一人で話したりしているのは気味悪く感じるのでなないだろうか。父はそうでは無いみたいだが、他の人も父のようだとは限らない。こういった事もこれからの為に把握しておく必要があるよね。



…何だかこれからとても面倒な事になりそうな予感がするのは気のせいだと思っておくことにしよう。



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