冒頭?
ほぼ毎日のように入っているアルバイトもやっと終わり、ひとり帰路についていた。0時なだけあって歩いているひとは少ない。しかし、大きな通りなので車通りはまだある。
(…汚い空)
相変わらず見上げる夜空は濁っていて星なんて見えやしない。
「あー疲れた。早く帰って寝よ…って駄目だわ、レポート仕上げなきゃ………ってまじかよ」
ファァァン!!!!
けたたましく鳴るクラクションの音と共に、目の前には何故かものすごいスピードで自分に向かってくるトラック。
『危ない!!!』どこらからか誰かが叫んだのが聞こえた。
キキィィィイイ!!!!
(あーあ、ついてないなぁ今日)
今までに感じたことのないような激しい痛みと衝撃とともに私の意識は途絶えた。
なんだ、人生の最期ってこんなあっけないもんなんだ。まさかこんな早くに死んでしまうとは思ってなかったけど…本当、つまらない人生だったなぁ、斎藤明李の人生は。
私は一度死んだ。…はず。
そう。私はついさっき死んだはずなのだ。
大学の帰り道に歩道にトラックが突っ込んできたので即死だったのだと思う。…それにあの衝撃で生きてたら怖いし。
取り敢えず私はついさっき死んだのだ。
だが、再び意識が戻った時私は赤ん坊だった。思うように身体が動かせなくて、もちろん喋る事も出来い。口を開いてもアーだとかウーとしか出てこない。それが堪らなく悔しくて思わず泣き喚いた。
「嗚呼!アイリーンが泣いてしまったよ…どうしたらいいんだ!」
「赤ちゃんなんだから泣くのは当たり前でしょう?」
側にいた父親らしき男の人はそんな私を見てオロオロとしていたが、母親であろう美人な女の人は元気がいいのねと笑っていた。実に対称的な両親だ。
そして、私の名前はアイリーンというらしい。ということは外国?なのかな?両親の見た目も日本人ではあり得ないようなものだ。
父親は綺麗な蜂蜜色なのに勿体無くボサボサとだらしのない髪に同じ蜂蜜色の瞳。まあ、ひとことで言えばだらしのない見た目だ。しかし、そんな父親とは反対に母親はとても綺麗な人だ。見た目はブロンド碧眼の儚げな美人だけど中身はそこらへんの男の人なんかより豪快な人だ。
私はこの新しい両親の元で生きていかなければならないようだ。その事実は意外とあっさりわたしの中で受け入れられた。まあ、一回死んでいるからもうどうにでもなれって思ってない訳でもないんだけども。