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セシリアが死んだ(ブルーノ独白)
「アイリーン嬢」
きっと泣いていると思った。いつも淡々として表情を変えないセシリアの娘も母が死ねば泣き崩れているだろうと。
「ブルーノ…」
だが、顔をあげたアイリーンは泣いていなかった。
「アイリーン嬢、セシリアはもう行ってしまったかい?」
セシリアがもうこの世には居ないことは分かっていた。だが敢えて聞いた。
「うん」
「そうか…人の一生とは実に短い」
「うん」
セシリアは短過ぎた。魔力が強く、見た目よりも生きた年数は長い。それでも自分達から見たらほんの一瞬のだった。
「アイリーン嬢、お前も…いや、何でもない」
ーーお前も、いつか私を置いて逝くのか?ーー
その問い掛けは口に出す事はしなかった。