表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吸血鬼。The Vampyre.  作者: ジョン・ウィリアム・ポリドリ博士 Dr.John William Polidori/萩原 學(訳)
補遺
51/52

吸血鬼の技と力

どこぞの1号2号みたいな標題になってしまったが、仮面の人の話ではない。はてなブログへの移植を考えて、Wikisource を読み返そうとしたら、原典 The New Monthly Magazine の電子化が進行中であり、『吸血鬼』収録部分は複写画像に加え、既に文字起こしの検証まで済んでいる。何とも有り難い限りで、これを機に読み直してみると、単行本との違いのほか、読み損ねも見つかった。特に吸血鬼が現れ、正体不明のままオーブリー青年と揉み合う場面では、やけに戦い慣れているというか、思った以上にプロレスしている。訳しながら、未だ存在しなかったプロレスしている訳ないだろうと、少し控え気味にしたものだが、むしろ試合経過と見た方が解り易い。


and he felt himself grappled by one whose strength seemed superhuman(人外の力を持つ者と組み合い): determined to sell his life as dearly as he could, he struggled(此処を先途と、死に物狂いに抗ったが); but it was in vain: he was lifted from his feet(あえなく足浮き持ち上げられ) and hurled with enormous force(物凄いパワーで) against the ground(バック・ドロップ!):—his enemy threw himself upon him(フライング・ボディプレス!), and kneeling upon his breast(続いて、ニー・ドロップ!), had placed his hands upon his throat(チョーク、チョーク!),


とすれば、吸血鬼の動きが目に見えるようではないか。鉄人ルー・テーズ並みの腕力もさることながら、流れるように必殺技を繋げて殺しにかかる鮮やかな手並みは、経験を積んだ証であろう。問題はこの当時、プロレスなんぞ影も形もない時代で、作者ポリドリ博士は何処で何を見たものやら不思議でならない。片足を引き摺ったバイロン卿が、かくも鋭利な動きを見せたものだろうか?意外に喧嘩っ早いポリドリ博士自身の経験だろうか?

何より、翻訳はどう書くべきか?『吸血鬼』の本を作って文学フリマに出そうかなどと考えていたけれど、翻訳自体から見直す必要があるか悩ましい。


吸血鬼の持つ力は、ラッスェン卿より此のかた、作品ごとにパワーアップしているかに見えるが、その体術はそれ以上かもしれない。200年前に、今日のレスラーにも引けを取らない技を持つのなら、そのまま歳を重ねた今では、アジアンマスターも軽く張り倒すワールドマスターになっていてもおかしくない。つくづく近づきたくない存在であり、しかしあまりに弱点のない敵というのも、作品の素材としてはどうかと思わないでもない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

参考文献

Wikisource: The Vampyre
翻訳の底本にした単行本の電子書籍版。原典影印つき
Internet Archive: The New Monthly Magazine 1819-04-01: Vol 11 Iss 63
初出の掲載誌影印本。些か読みにくいのが難点
The New Monthly Magazine 1819-05-01: Vol 11 Iss 64
ポリドリ博士の抗議が掲載された5月号
The Vampyre (in Short Ghost and Horror Collection 011)
LibriVox にある朗読
The diary of Dr. John William Polidori
The diary of Dr. John William Polidori
作者の甥ロセッティが編集発行した日記。編者による序文つき
The Vampyre as a literary war on the image of Greece
The Byron Society に収録されたKonstantina Tortomani さんの論文
Peter Cochran’s Website – Film Reviews, Poems, Byron…
バイロン研究家、ピーター・コクラン氏のサイト。バイロン卿の手紙あり
The Vampyre;A New History
Nick Groom による吸血鬼の歴史
Polidori’s ‘The Vampyre’: Composition, Publication, Deception
Nick Groom 2021年の論文
POLIDORI'S THE VAMPYRE
The University of Queensland, Australia Contact Magazine
ハムレット
第1幕第2場
Wikipedia
メドヴェジャ Medvegja
Arnold Paole
コシツェ
天国 (イスラーム)
パウサニアス (地理学者)
Jean Marc Jules Pictet-Diodati
calèche
Sécheron
リピーター(時計)
Suzanne Curchod(Madame Necker)
Ranz des Vaches
ブログ
『悪の華』の謎を解く3――ハイデガーの郷愁とノヴァーリスの夜
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ