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吸血鬼。The Vampyre.  作者: ジョン・ウィリアム・ポリドリ博士 Dr.John William Polidori/萩原 學(訳)
ポリドリ博士の日記
32/52

5月29日

ローヌ川が流れる渓谷沿いの家々をヘンチ氏と見に行った。何もなし。パーシー・シェリー夫妻及びウォルストンクラフト・ゴドウィン嬢と食事。ヘンチ氏によると、イギリス人は昨年、イタリアに穀物を大量に輸出したそうだ。

May 29.—Went with Mr. Hentsch to see some houses along the valley in which runs the Rhone:nothing. Dined with Mr. and Mrs. Percy Shelley and Wollstonecraft Godwin. Hentsch told us that the English last year exported corn to Italy to a great amount.

訳注

Hentsch: The Hy Hentsch & Co. bank という、Henri Hentsch (1761–1835)の設立した銀行(1796)が今もジュネーブにある。


Wollstonecraft Godwin: シェリー夫妻と区別している以上、この名はメアリではなくクレアを指す筈。しかし、これはメアリが両親からそれぞれ引き継いだ家名で、クレア・クレアモントのそれではない。5月27日の項に注釈された通り、このときポリドリ博士は、2人を実の姉妹と勘違いしていたようだ。クレアは、その母メアリ・ジェーン Mary Jane が、アパートのお隣さんであったウイリアム・ゴドウィンと結婚した時の連れ子で、血縁関係はない。なおメアリ・ジェーンは旧姓 Clairmont(クレアモント) を名乗っていたけれど、これはクレアの異父兄 Charles(シャルル) Gaulis(ガウリス) Clairmont(クレアモント) の父親 Charles Abram Marc Gaulis の家名をイギリス風に改名したもので、婚姻記録がない。子供たちを私生児扱いされないよう考えた偽名だったらしい。2010年、クレアの父親は、サマセット州トーントン近郊サンドヒル・パークの John(ジョン) Lethbridge(レスブリッジ)(1746 - 1815) であると判明した。

ポリドリ博士は不注意というより、以上のような家庭の事情に興味を持たなかったらしく、それは紳士の嗜みではあるが(イギリス人貴族には私生児が珍しくない)、今となっては史料的価値を減じている。


corn: 新大陸由来のトウモロコシではなく、穀物一般を指す。時あたかも悪名高い穀物法(1815 - 1846)が施行されたばかり。

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参考文献

Wikisource: The Vampyre
翻訳の底本にした単行本の電子書籍版。原典影印つき
Internet Archive: The New Monthly Magazine 1819-04-01: Vol 11 Iss 63
初出の掲載誌影印本。些か読みにくいのが難点
The New Monthly Magazine 1819-05-01: Vol 11 Iss 64
ポリドリ博士の抗議が掲載された5月号
The Vampyre (in Short Ghost and Horror Collection 011)
LibriVox にある朗読
The diary of Dr. John William Polidori
The diary of Dr. John William Polidori
作者の甥ロセッティが編集発行した日記。編者による序文つき
The Vampyre as a literary war on the image of Greece
The Byron Society に収録されたKonstantina Tortomani さんの論文
Peter Cochran’s Website – Film Reviews, Poems, Byron…
バイロン研究家、ピーター・コクラン氏のサイト。バイロン卿の手紙あり
The Vampyre;A New History
Nick Groom による吸血鬼の歴史
Polidori’s ‘The Vampyre’: Composition, Publication, Deception
Nick Groom 2021年の論文
POLIDORI'S THE VAMPYRE
The University of Queensland, Australia Contact Magazine
ハムレット
第1幕第2場
Wikipedia
メドヴェジャ Medvegja
Arnold Paole
コシツェ
天国 (イスラーム)
パウサニアス (地理学者)
Jean Marc Jules Pictet-Diodati
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