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化心  作者: 榛原朔
間章
83/432

間話-眷属の名

南の果てにある沼地、イラー。

この地に残るのは廃墟。かつての大国の名残。

そんな彼の地で、数人の魔人が集っていた。


周囲に跪くのは胡散臭い神父、白い騎士、艶やかな着物姿の女、逆立った髪の大男。

そしてその中心の玉座には、彼らの主であるところの1人の少女が座っていた。


彼女が着ているのは、青を基調としたゆったりとした衣。

マントを羽織っているのも相まって、まるで女王のような威厳があった。


しばらく寛いだ様子を見せていた彼女は、やがて立ち上がり神父に声をかける。


「あの子達はまだかな?」

「さて……分かりませんね。あの騎士達と鉢合わせる可能性もありますし。……何なら先に始めてしまっては?」


神父は顔を上げると、質問に答えながら大男を見る。

その表情は珍しく楽しげで、それが神父本来の性格であるようだった。


そして大男はというと……


「是非に!!」


神父の言葉を聞くと、素早く立ち上がり少女の足元で跪いた。

その巨体を全力で縮める姿は、男の決意を感じさせる。


「ふーん……じゃあ二度手間だけど、やっちゃうか」


すると少女もやる気を出したようで、乾いた笑みを浮かべて玉座から立ち上がった。

そして、糸を使って周りの物を片付けその中心に大男だけを立たせると、周囲から泥を湧き上がらせる。

どこまでも禍々しく、全てを飲み込むかのような呪いの泥だ。


それは地面に怪しげなサークルを描くと、暗く発光しながら蠢き始める。

まともな人間が見たら、吐き気を催すような光景だ。


そんな中、少女は手をかざし泥を操る。

触手のように、蛇のように、うねうねと。

大男を囲う檻のように、粒すら逃さぬように、しっかりと。


「名を与えよう……力を与えよう……不和と争いの名において、お前を我が子へ迎えよう……。

名はポノス……労苦を背負え……」


窒息しそうな程の泥が、大男の体を包み込む。

段々とその嵩を減らし、より禍々しく。




数十分後。

大男を包む泥は、ようやく全て消え去った。

見たところ、その泥を全て吸収したかのような光景だ。


大男はより力強く、より禍々しく、産声を上げる。


「よろしくね、息子ちゃん。僕と一緒に、この残酷な世界を楽しもう」

「もちろんだ、母さん」


彼らの目には暗い光が宿る。


そこには、禍々しい神秘が渦巻いていた。

それは、最古の呪い。混沌から生まれた歪み。


眷属は笑う。傀儡は笑う。王は笑う。母は笑う。

呪いは苦しみ。狂気は放棄。


彼らは道化として、高らかに。笑顔の裏には悲しみが。

狂気が望むは生か死か……


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