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化心  作者: 榛原朔
間章
81/432

間話-とある書物の記述➁

クロウ達が雲を引き裂きながら飛び立つのを見届けると、ニコライは再び研究所へと戻っていく。

行き先はもちろんマキナのいる所長室だ。


雪は止んだが、国中にある氷は万年氷。

荒れる覚悟で無理矢理砕くのではなく、溶かすという方法を取るならば、もう一度機械を作る必要がある。


障害や材料は揃っているので、もう何年もかかるようなものではないだろう。

だが、ニコライは国を出るしアレクはもういないのだ。

マキナには早く取り掛かってもらわないといけない。


(問題があるとすると、あの方が興味のないことはしないことか……飽きてなければいいが)


彼は、マキナが動いてくれるのかを考えながら所長室への道を歩いていった。




~~~~~~~~~~




ニコライは、部屋に入ると早速話を切り出す。

作業中ではないので、マキナの邪魔にもならずちゃんと話も聞くと考えたようだ。


「マキナ様。私は話していた通り一旦国を出ますが、作業は任せてよろしいでしょうか?」

「また作るのは……面倒くさいな……」


だが、ニコライの予想通りマキナは飽きていたらしい。

彼は無表情のままそう呟いている。


それを見ると、ニコライの表情には焦りが浮かぶ。

一度作ったものを破壊されたのには、彼もショックを受けている。マキナの気持ちも分かるのだろう。

必死に頭を回転させ、次に口にした言葉は……


「サンドイッチ……奢りますよ?」


それを聞くと、マキナは珍しく表情を動かす。

もちろん呆れた表情……残念なものを見る目だ。


「いや、別に……君には……色々助けてもらっているからね……。そんなものなくても……やるとも……」

「ああ、それならよかったです」


だがニコライは、そんな表情を全く気にせず明るく言い放つ。

マキナはそれを見て、彼がいてくれてよかったと心からそう思うのだった……




話が終わると、ニコライはすぐに部屋を出ようとドアに足を向ける。

急ぐ理由は、フォミュルに向かう準備をするため。

いくらジェット機で行くと言っても、点検や食料の持ち込みなどは必要なのだ。


彼は人数や重量目安などを頭に思い浮かべながら、スタスタと進んでいく。

だがその時、彼の目には変わった柄の巻物を手にしたマキナの姿が映った。


巻物自体はこの国にも少しはある。

しかし、その柄は芸術品と言えるほど緻密なものだったのだ。

赤い鳥、青い龍、白い虎などが描かれた絵画……


当然ニコライは、それに興味を惹かれて声をかけた。


「マキナ様。何ですか? それ」

「うん……ヤタに伝わる……書物だよ……」

「何故こんなところに?」

「……実は……ある人に託されてね……。

ヤタ、という名を聞いて……今思い出した……。

もしかしたら……彼らに渡すべきだった……かもね……」


彼の手からは、長い紙が広がっていく。

繊維が長く薄い紙が、コロコロ……コロコロと……




~~~~~~~~~~


天災の国ヤタ


彼の国は激動の時代を生きた。

どこよりも鮮烈に。どこよりも苛烈に。


百の手を退け、凶方を塞いだ神秘の柱。

彼らは美しくも儚い、聖域の主……


……


だが、排斥された者は、片隅にて数千年の恨みを残す。

我が身に自由を。偽りの聖者に報復を。


連鎖は途切れることはなく、怒りは常に災いを生む。

天災は、いつの日か再び彼の国へ……



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