間話-科学者達
マキナが呼び起こし、ニコライが発展させたガルズェンスの科学だが、その担い手になったのは何も聖人だけではない。
いつの時代にも、それを学ぼうとする者はいた。
それはもちろんこの時代にも……
彼らは、当たり前のことだが生まれた時期や場所など、その全てがまるで違った。
一方は首都バースにて、科学者として多少は国の手助けになっていた両親の元に。
そしてもう一方は、狩猟ギルドのある少し寂れた情景の村で、狩人の父と小さな駄菓子屋を営む母の元に。
真逆の環境で、しかし全く同じ道を進んだ。
蒸気と風、菌。
どちらも同じく神機を預かり、どちらも同じく研究に励み、そして2人は真逆の性格で。
「おーいっ、ヘーローン!!」
「はぁ‥‥何よ」
研究塔を静かに歩いていたヘーロンに駆け寄ってきたのは、騒々しく飛びついてくるブライスだ。
ヘーロンは、そのせいで書類をいくつか落としてしまっている。
だが、拒絶しているような雰囲気でもない。
親愛がそこにはあった。
「ヘーロンの神機って、あたしのより微生物学に向いてるからさー。また手伝ってほしくって」
「前にも手伝ったじゃない」
「今度は培養肉だよ!!」
その言葉を聞くと、ヘーロンは少し考え込む。
自分が今行っている研究とどちらを優先させるべきか、と。
1分ほど考え込み、出した結論は……
「仕方ないわね」
「やったぁ、ありがとー!! ヘーロン大好きー!!」
ブライスは、その答えを聞くと笑顔の花を咲かせる。
人によっては目を背けたくなる程の輝きで、そのじゃれ合いの激しさもさらに増した。
すると当然、ヘーロンは体勢を崩して文句を言う。
平和で、温かくて、幸せで。
姉妹のような科学者は、2人一緒にメトロへと向かった。
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研究塔の中央。
ニコライが主に活動している場所で、アレクはにこやかに彼に声をかけていた。
目的は量産のための設備についてだ。
「ニコライ様、こんな感じでどうっすか?」
「ふむ……」
内容は至ってシンプル。
グレードレスに巨大な製造工場を作り、レーンを一直線に設置する。
そして、ただひたすらアレクが最適化し続ける。
取り敢えずの設備としては、設備の位置や順序も、規模に見合った電力も、機械の強度も足りていた。
だが、明らかに改造前提の大雑把なものだ。
ニコライは、しばらく考え込むとアレクに助言をする。
「この場所にこの設備はよくない。
このタイプはもっと……」
取り敢えず作って直していこうがアレクのモットー。
ただ、それは憧れの人のやり方ではないので、いつもこのようにダメ出しをされてしまっていた。
しかし、それもアレクの幸せの形だ。
次の案、さらにその次の案をどしどし出していく。
すると、さらにダメ出しをされるのだが……
「流石っす。尊敬っす。確かに甘かったんですぐ直すっす」
「うむ。頑張りたまえ」
「えへ、やる気出たっす〜」
ニコライの助言を期待と捉え、ニコライの労いを至高のものと感じている。
そしてアレクは、量産工場の完成に向けてさらに奮闘するのだった。
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