表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
化心  作者: 榛原朔
序章 覚悟
6/432

5-幸運が呼び込んだモノ

マッドフラッドはエリスが使っていた泥を、最大開放したもの。つまり、飲み込んだ全ては腐敗し消える。あとに残るのは彼ただ一人。


それが普段の光景だった。


だが今回、彼の目の前に広がる光景は……


少し離れた先に立っているのはボロボロのローブを着た男。その後ろには殺したつもりだった3人。

大地も半分ほどが生きており、木や草がまばらに存在する。

街も城壁は多くが崩れているが、その穴から見える建物はかなりの数が無事のようだった。


それは一般にはたしかに惨劇と呼ぶべきものだったが、彼の予定では更地。

明らかにイレギュラーな出来事だった。


そして、おそらくそんなイレギュラーを起こしたであろう男は、呑気にフードを直している。正常な人間では有り得ないような行動。


「こんにちは」


だが、彼もまた呑気だった。

先程までの殺し合いが嘘かのように、今度もまた挨拶をする。

その雰囲気も表情も柔らかかったが、目は鋭く、彼を観察している。


「よお、久しぶり」


男は気負うことなく、やはり軽く挨拶を返す。


数秒の沈黙。

もし3人が起きていたなら過呼吸になっていたかもしれない程の、圧。


「これは、ルール違反なんじゃないかな?」


エリスが口火を切った。穏やかに、だが鋭い問いかけ。


「俺は攻撃を少しいなしただけ。戦うつもりはないから、問題はないな」

「……それ以上のことをしたよね、君」


彼は目を細め確信を持っているように問うたが男は肩をすくめ、やはり気楽に答える。


「さぁな。俺は知らん」

「ふん、白々しい」

「ははっ。それも含めて問題はない、そう思うが?」

「それを決めるのは僕らじゃない……けど」

「ああ、ここにヤツは来なかった。様子を見に来たやつはいるみたいだが……それが答えだ」


一瞬、この場に殺気が溢れる。が、それはすぐに霧散した。

エリスは、肩の力を抜くと諦めたように呟く。


「ふぅ……しょうがない。元々そこまで強く僕らを縛れる力じゃないしね」

「ああ、簡単に抑え込めるなら、俺達は大厄災なんて呼ばれない」


エリスの背後から、再び泥が湧き上がり彼を覆い隠す。

だがそれはすぐさま乾燥し、土の壁になったかと思えば乾いたそばから崩れていった。


姿を現したそれが身に纏っていたのは、シンプルだが威厳のある、さっきとは違って清潔な衣。


留め具やボタン、縁取りなどはあるが刺繍のような装飾はほんどない、青を基調としたゆったりとしたコートのようなものだ。


それはまるで王のような覇気を放ちながら告げる。


「じゃあね、また会おう。次はこちら側で、さ」


そして男の返事も待たず背中から白い翼を生やし、瞬く間に大空へと飛び立っていった。


男は、特に何をするでもなくただそれが見えなくなるまで佇んでいた。


それが見えなくなる頃、ようやく背を向けクロウ達を一瞥すると……


「そうならないためにこうして動いてるの、知ってるだろうに。嫌味なやつだ」


感情の読み取れない声音で、そう呟いた。


よかったらブックマーク、評価、感想などお願いします。

気になった点なども助かります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 賛否が分かれる作風でしたが楽しめました。 このスタイルを貫いてください!
2023/01/17 03:12 退会済み
管理
[良い点]  RT企画で感想を書かせていただいています。  五話まで読ませていただきました。  主人公とその仲間二人の呪いが上手に組み合って、いいパーティになっていると思います。 [気になる点]  こ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ