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化心  作者: 榛原朔
一章 支配の国
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42-メトロ付近の森へ

俺達が日が落ち始めてからギルドへ戻ると、机に付しているマックスと彼に水を差し出すヴィニー、顔を赤くして笑うライアンとリューがいた。


仲良くなれたかは分からないが、取り敢えず話はたっぷりとしたようだ。

……ご愁傷さま。後で話せそうなら……慰める? まぁいいか。


「よう、どこ行ってたんだ?」

「ん〜? 酒場〜」

「……2人共成人してたんだね」

「おうよ〜。24だぜ〜」


ローズの言葉にライアンは明るく答えるが、リューは視線を逸らす。

……これはあれだな。駄目なやつだ。


それを見たローズはジト目で言葉を続ける。


「リュー?」

「いやいや、正確な年齢は知らねぇってだけだぜ?

孤児だったからよ」

「じゃあ何歳のつもりで酒場行ったの?」

「……19歳」

「ア・ウ・ト」


自業自得っていうか、普通にヤバいやつだな……

潰れてないだけマシなのか?

するとライアンもこの話に乗ってくる。


「なんだ〜、お前も孤児か〜? 俺も孤児だぜ〜」

「じゃあ歳も?」

「お〜う、だいたいだ〜」


やっぱり魔人になるようなのにまともな人生のやつはいないようだ。

7人中3人が孤児とは。

それでも3人共明るいのは驚きだが……だからこそ、なのかもな。


「だからサバイバル能力が高かったのか?」

「それは兵士してたからだな〜」


やっぱりそうなのか……ようやく聞けてスッキリした。

だが、それに誤魔化されるローズではない。

リューに詰め寄り酒場の件を問い詰める。


「未成年でお酒? 

あなたは普段から色々やらかすのに、さらに問題起こしやすくなってどうすんの!!体にも良くないのに」

「でも俺達は神秘‥」

「問題を起こすでしょ!!」

「すみません……」


これは少し長くなりそうだ。

ヴィニーはマックスの世話をしているし……


「ロロ、俺達は先に宿行こうぜ」

「そうだねー」

「俺も〜」

「…………私も」


俺とロロがこの場から逃れようとすると、ライアンとフーも便乗してきた。


ライアンは無関係じゃなさそうなんだけどな……

それにフーも案外無関心なのか?

まぁこういう時は、さっさと退散してしまうのが一番だしな。

正しい生存本能だ。主に精神面で……




結局彼らが宿に来たのは、俺達が夕食を食べ終わった頃だった。




~~~~~~~~~~




翌日。俺達は昨日よりも強い雪の中、朝一番でギルドへ赴いた。

理由はもちろん、ブライスに今日から依頼があると言われていたからだ。


俺達がギルドに入ると、そこには案の定マックスがいる。

堅物なら、酔い潰されても平気でいると思ってたぜ……

昨日よりは顔色が優れないが、それでも仕事に影響は出さないんだろうな。


「おっす〜」

「……ふん。依頼が来ている。確認を」


だが機嫌は別で、ライアンが声をかけると顔をしかめてそれに応じた。

昨日との違いはそこまでなさそうだ。むしろ悪いかも……


そんなマックスからヴィニーが数枚の依頼書を受け取り、内容を教えてくれる。


「ありがとう。

……ライアンと俺がバース、他が3つの討伐依頼からどれかだって」

「3つの討伐依頼?」

「うん、神馬、巨人、黒蛇の討伐依頼だね」

「きょ、巨人?」

「そう呼ばれる人型の魔獣がいるんだって」


巨人か……でもこの国の人はデカいもんな。

そりゃあ魔獣もデカくなるってもんだ。

一応ウォーゲームで巨大なゴーレムを倒してるし大丈夫だろう。


で、蛇はまぁ蛇だとして……神馬って1つだけおかしいのがいるな……

明らかに強そうだ。


正直ライアンとヴィニーがいない状態では挑みたくない。


「ヴィニーは何でバースに行くの?」

「俺達は検査らしいですよ」

「検査?」

「はい。魔人として一番強そうなライアンと、人間のままでニコライに張り合った俺を調べたいらしいですね」

「それ大丈夫なのか?」

「んー……契約があるからヤバいことはされないと思うよ」


契約があるとはいっても、マキナが変人すぎで不安が勝ってしまう。

従うのも契約だからどうしょうもないが。

ニコライがその場にいてくれたらいいな……


「まぁ仕方ないから2人抜きでどこを選ぶかだね。

マックスはどう思う?」

「……俺はただ案内するだけだ」

「そんなこと言うなって。昨日仲良くなったろ?」

「どこがだ……」


どうやらリュー達は仲良くなれなかったようだ。

リューは今日も積極的に絡みにいっているが、マックスは上手くそれをかわしている。

少し見ていて面白いかもしれない。


彼はリューとしばらくそんな攻防を繰り広げていたが、最終的にその手をはねのけ意見をくれる。

手厳しい……


「……少なくとも神馬は、全員揃ってからがいいだろうな。

ニコライが捕らえられないほどの魔獣だから」


科学者のニコライが基準なのか?

ブライスとギルドマスターは仲悪そうだったから、科学者とギルドが仲悪いのかと思ってた。意外だな。


「あの強さで?」

「ああ、やつは危機察知能力が恐ろしく高い。

そのせいで、ニコライは一目見ることすらできなかった」


確かに、ニコライの速さで見ることもできないなら厳しいな。

てかそれじゃ依頼完遂できなくね?


「それ、無理じゃん……」

「あんたらなら見つけられると思ってるんじゃないか?

ニコライは強いから無理だったが、あれに負けたあんたらならってな」

「はぁ? 喧嘩売ってんのか?」

「まぁまぁ、落ち着けって〜」


昨日のあれは、やはり止めるべきだったのでは……?

マックスは特にリューとそりが合わないらしく、わざわざリューに視線を向けながら言う。

……やや喧嘩腰だ。


ライアンには素っ気ないだけだからまだマシだな。

それが気安さからであってくれ。


「じゃあ蛇と巨人は?」

「蛇は南方のフヴェル湖、巨人は国中にいる。強いぞ」

「そんな一般的な魔獣なんだね……」

「そうだな……2000年前位から特に活発になったらしい」

「は? 古すぎだろ」


頭がおかしいレベルで昔の話だな。何世代前の話だよ。

それだけの間猛威を振るい続けている化け物……大変な依頼だ。


「あれ、何で今まで討伐してなかったんだ?」

「気軽に手を出すには狩人では厳しい相手だったし、科学者は基本研究しかしないからな。一応自衛はできていたから問題もなかった」


魔獣狩りのプロが討伐できないとか……神秘はマックスくらいしかいねぇのか?

辛い……


「で、どこ行く?」

「まず俺達はどうやってバースに?」

「あの科学者のとこにでも行け」

「丸投げかよ〜」

「あはは‥じゃあ巨人か蛇をよろしくね」


ヴィニーとライアンはそう言うとさっさとギルドを出ていってしまう。

ヴィニーの意見は聞きたかったな。


……仕方ない。諦めて残る面々に問いかける。


「どっちにする?」

「そうだね……」

「そういえば、蛇って一匹だけなのか?」

「そうだな……依頼されている蛇は、おそらく」


一匹の蛇と、大量の巨人。

蛇は一匹しかいないなら、ライアンに残しておきたいな。


「なら巨人だな。蛇はライアンが力を得るのに残しておこう」

「了解した。

巨人にも上位個体がいるが、まずは適当な下位個体を潰してまわろう」

「え、上位なんてのがいるのか?」

「当たり前だろ?

2000年も滅ばない種族が、個別に生きているはずがない。

群れだ。依頼も、その群れの王種3人の討伐」

「王……確かに狩りの対象なんだもんな。群れ……大変そうだ」

「……案内する。ついてこい」


マックスはそう言うと、俺達を置いてさっさと外へ行ってしまう。

仕事人すぎだろ……




~~~~~~~~~~




慌ててマックスを追いかけると、連れて行かれたのは厩舎だった。

この国では珍しい木製の建物で、雪がなければ馴染みの光景。

だが、やはり赤く光る機械が付けられており寒さはほとんど感じない。便利だな。


家2〜3個が収まりそうなほどの規模だが、当然中にいるのは馬。

……移動手段って車じゃねぇの?


「馬なのか?」

「ああ」

「車じゃないの?」

「魔獣のいるようなところに、車が通る道はない」


なるほど、それはそうだ。

俺達はマックスに毛皮のコートを渡され、馬達の元へと向かう。

それぞれが少しの間触れ合い、気が合うと思った子が相棒だ。


馬に乗った後にも、しばらく乗馬感覚を慣らす。

みんなかなり上手く手綱を握っているが、ローズだけは少し危なっかしいかもしれない。

マックスが見ているだろうが、俺も様子は伺うことにしよう。


10分ほどするとマックスが再び声をかける。


「じゃあ出発する。雪山に入るから油断はしないように」

「お〜」

「ああ」


ロロは俺のコートの中に潜り込んで出発だ。

目の前には氷の山、つららの森。


俺達は、とても美しく、とても残酷な世界に歩みを進めていった。



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