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化心  作者: 榛原朔
三章 審判の国
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377.5話-それは彼を形作るはずだったもの

俺の故郷は、フローラの外れ。

来る人は少ないが、寂れきってはいない土地。

その村には伝承があった。


――いいや、なかったよ。

『……た』


入ることを禁じられていた森の奥。

禁足地。


――思い出す必要は、ないんだ。そんな場所は、ない。

『禁……地……あ……た』


なかった……のか?


――そう、なかったよ。

『お……』


友達で、兄弟で、家族。

君がそう言うのであれば……


――家族? 誰のことかな?

『……のことだろ』

――部外者なんだから、黙っててよ。


俺は……お前は……




村で俺は、1人だった。

小さい頃に両親は亡くなり、顔も覚えていない。

だから俺には、友達がすべて。


――1人じゃない。


1人で……いや、彼と……?

俺にも、大切な人がいた……?


『もうお前には……いないけどな』

――大切な仲間は、できた。

『それもきっと、今回のようにすべて失うさ』


俺は……また……失う……


――いいや、失わない。そんな考えは忘れるんだ。

『過去から目をそらすなよ。手遅れになるぜ』

――人間は、未来を見て生きるものだよ。

『前向きなのはけっこうだが、そろそろ契約が動く。

そうなったらおしまいだ。過去が縛ってるうちに……』

――それは君の問題なんだろ?

『世界の問題だ』


夢の中であるはずなのに、また頭が痛い……

だが少年と……黒い靄のようなものは、俺がまったくわからない話を続けている。


――それでも……

『……地は……た。お前……なと……た』

――思い出す必要はない。

『見つ……は……お前……。そ……が……呪い』

――大事なのは今だよ。


頭の中が、かき混ぜられてるような気分だ。

俺が俺じゃないみたいだ。


少年と、黒い靄。それはまるで多重人格のようで……

これが、リューと同じような気分なのか……?

……リュー。


『またお前は無くしたな』

――出会いがあれば、別れがある。

『あの日……お前……ように』

――いいかげん消えてもらってもいいかい?

『……は……ない』


いつだかの少年が鋭い視線を向けると、謎の黒い靄はゆっくりと消えていく。

この場所は……彼の領域なのか……?


――僕と君も、随分と近くなってしまったね。


君は誰だ……?

さっきの靄は……?


――大丈夫。もう少し……もう少しだけなら、僕が抑えていられるから。だから今のうちに、大切な人を守る準備をするんだよ。


大切な人……


――残念ながらリューくんは亡くなってしまった。

けど、ライアンくん、ローズさん、ヴィンセントくん、ロロちゃん、フーさん……たくさんの仲間が、まだ君にはいる。


リュー……!!


――君は新たに、彼の想いも継承した。

それこそ君が覚えておくべきことで……

でも、もしかしたら枷になってしまうこと……だね。


枷……そうかもしれない。

けど俺は、リューの在った理由をちゃんと継ぐつもりだ。

あいつは、フーを……誰かを守るために力を得たんだから。


――うん……大切な人を守る準備。

君本来の呪い……幸運と違って、直接戦える神秘。

頑張って使いこなしてね。


もちろんだ。

俺は……律じゃないけど、まだ折れない。

俺と仲間達が生き続けるために、他の大厄災も殺す。


――その意気だ。じゃあ……またね。


また……会えるのか?


――僕はずっと君の中にいる。

記憶やあの靄を抑えるためだけどね。


記憶って……俺の?


――ごめんね。

今回の会話でも、記憶に関することは忘れさせてもらうよ。

僕のことは……おぼろげになら覚えていられるんじゃないかな? だから、頑張って。


……またな。


夢から醒めるような感覚が、俺の全身を包む。

暴禍の獣(ベヒモス)はまだ死んでいない。

リューの想いを継いだ俺が、あいつの分まで頑張らないと……




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