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化心  作者: 榛原朔
三章 審判の国
389/432

351-遂に果たされる合流

クリフっていう人が抜け殻みたいになって落ち、クラローテっていう人に抱きとめられた後。戦局は一気に動いた。


エリザベスのパートナーだっていうダグザは一撃で倒され、その後激闘の末にバロールも撃破される。

あの、見ただけで人を殺せる魔眼のバロールをだ。


雷閃は今回サポートに徹してたし、アーハンカールが仲間になってくれてて本当に助かったな。

あのルーン魔術師も、世界を創造するだなんていうふざけた力を持っていた訳だし。


まぁ、それに関して言えば、ライアン達が連れてきてくれた助っ人達――クリフとクラローテが強かったという話だろうけど。


ともかく、俺達が地下にいる間に始まった円卓争奪戦、第4席を懸けた第九試合は俺達の側の勝利だ。

倒れた者達はエリザベスの操る樹木によって運ばれ、反対側の観覧席――円卓側で治療を受けるらしい。


アーハンカールは血みどろだから当然治療を受けるとして……

雷閃の見えない傷なんかも、ついでに治ってくれるといいな。


無事にみんなが運ばれたのを確認してから、俺はホッと一息つく。円卓争奪戦はひとまず終わり、けが人も治療を受け始めいた。次の試合もまだ始まらない。

さっきまでは慌ただしくて流してたけど……


「久しぶりだな、みんな」


俺は周りに座っている仲間たちに向き合い、ようやく挨拶をする。先にミョル=ヴィドへと向かってから、様子見のつもりがガッツリ侵入してしまってから、地下に落とされてから。


本当に久しぶりの再会だ。すごく安心できるし、気が抜けるな……あ、ちょっと涙出てきた。これは自覚できるのかよ。


「本当だよ、クロウ。すっごく心配したんだから」

「お嬢様を悲しませた罪は重いです。

けど、無事に会えたから良しとするよ」

「……ふん。無事ならいぃんだよ、無事なら。あっはっは!」

「うん……よかった」


俺が挨拶をすると、みんなも口々に挨拶を返してくれる。

どうやら、再会できて嬉しいのはみんなも同じで、かなり感極まっているようだ。


ローズは涙ぐんでいるし、チラッと見えた感じめちゃくちゃ暗くなっていたリューもいつも通りに笑っていた。

ヴィニーはなぜかいつもより礼儀正しい気がするけど、フーは前よりも喋るようになってるし……


「お〜う、争奪戦関係なくなったな〜。

まぁ、無事出てこれてよかったぜ〜」

「俺としては、なんでこんな大事になってんだって感じだよ。話も、試合の概要くらいしか聞いてねぇし」


チラリと目を向けると、ずっと俺達を見守るようにほんわかと笑っていたライアンも、落ち着くペースで笑いかけてくれた。


こいつだけはいつもと全く変わりがない。

絶対にいなくならないような安心感で、ただ俺達の側にいてくれる。


髪も、ローズの銀髪が黒銀色になったように変わりはせず、いつもの眩い金髪だ。さり気なく涙を拭って問いかけると、今までも一緒にいたような雰囲気で口を開く。


「お、じゃあ今のうちにちょっと話しとくか〜。

俺達が仲間を集めて攻め込んでたらよ〜、フェイって少年が出てきてな〜? お互いただじゃ済まないから試合で決着をつけよう的な感じでこうなったんだよ〜。目的はお前の解放と暴禍の獣(ベヒモス)の討伐。ま、頑張ろうな〜」

「なるほど……俺が出てきても続く理由がそれか。

だから、あんたらも助けてくれたんだな」


ライアンの説明を聞いた俺は、続けて近くの席――つまりは反逆者側についていると思われる3人の騎士に目を向ける。

その先にいるのは、紛れもなく円卓の騎士であるソフィア、シャーロット、ヘンリーだ。


たしかに、最優の騎士には手を貸してあげるみたいなことを言われたし、姉弟騎士にも善い人だとは言われたけど……

まさか、この段階で助けてもらえてるとは思わなかった。


俺自身はまだ審判の間にいて、助力自体はまったく見ず知らずのライアン達にすることになる訳だし。


しかし、彼女達としてはその選択は迷いのないものだったようだ。俺が話の水を向けると、優雅に微笑み、元気な笑顔を見せてくれた。


「えぇ、その通りです。貴方と約束しましたから。

私は暴禍の獣(ベヒモス)を討伐するために動きます」

「うんっ、そうだよ! あたし達は勝手に助けてるだけだけどさ、善い人は報われなきゃだからね!」

「まぁ、結局は負けちゃいましたけど……」

「そうなのか? 俺より強かったのに。

ちなみに、今までの結果とこの後の試合の予定とかは……」

「あそこにありますよ。席次を埋める形ですので、少しばかり見にくいかとは思いますが」


ソフィアさんに指を差され、俺は前を向く。

すると、闘技場の壁に映し出されていたのは、既に決まった勝敗などの追加情報も記されていそうなマッチング表だ。




――――――――――




反逆者サイド       円卓サイド


第一席(一日目)

(序列2位、最優の騎士) (序列3位、最高の騎士)

ソフィア         ウィリアム

-勝者ソフィア-


第二席(一日目)

(回帰する花々の女王)  (愚かなる処刑王)

ローズ          ルキウス

             -勝者ルキウス-



第三席(二日目)

(不滅の獅子王)     (序列1位、規格外の騎士)

ライアン         オスカー

             -勝者オスカー-



第四席(三日目)

(自由奔放な獣性)    (停滞せし魔眼の王)

クリフ          バロール

クラローテ


参戦

アーハンカール      ダグザ

雷閃

-勝者アーハンカール-



第五席(二日目)

(不戦を貫くメガネ)   (序列5位、得高き騎士)

ジャル          テオドーラ

-勝者テオドーラ-



第六席(二日目)

(怠惰な猫王)      (序列6位、自由な騎士)

キング          ソン

-勝者キング-



第七席(三日目)

(間違った人間の知識)  (強欲の守護者)

クイーン         アフィスティア



第八席(三日目)

(科学製の歪風)     (憤怒の守護者)

リュー          オリギー

フー




第九席(三日目)

(無知なる森の先生)

(森の相談役)     (獣神)

ヴァイカウンテス     ケルヌンノス

バロン




第十席(二日目)

(序列9位、正直な騎士) (序列10位、美しい騎士)

(序列8位、純粋な騎士) (序列11位、気難しい騎士)

シャーロット       ビアンカ

ヘンリー         ラーク

             -勝者ビアンカ-



第十一席(一日目)

(穏やかな兇鎧)     (湖の乙女)

ヌヌース         ヴィヴィアン

             -勝者ヴィヴィアン-



第十二席(一日目)

(未来を視る執事)    (序列7位、力強き騎士)

ヴィンセント       アルス

-勝者ヴィンセント-



第十三席(四日目)

(神を殺す鬼の子)    (神森を統べる王獣)

             (自称ドルイドの長)

海音           エリザベス

             アンブローズ




――――――――――




「本当だ。あと、ライアンとローズも……って、あと残ってるのは守護者と獣神、女王くらいなのか!?

そこに俺が参戦すんの!? 無茶が過ぎないか!?」


軽くマッチング表を眺めていた俺は、残る円卓サイドの戦士の名前を見て思わず声を荒げてしまう。


第七席――強欲の間の守護者、アフィスティア。

第八席――憤怒の間の守護者、オリギー。

第九席――ティタンジェルの獣神、ケルヌンノス。


アフィスティアには死の森でボロ負けしたし、オリギーなんて様子見の段階で雷閃がいなければ死んでいた。

ケルヌンノスに至っては、俺達を裁きに来た円卓の騎士達を、女王の相手までしながら吹き飛ばすレベルだ。


どいつもこいつも、明らかに俺が太刀打ちできる相手なんかじゃない! いくらなんでも洒落にならないぞ!?

今日の一戦目もバロールだったし、3日目はキツすぎる!!


「ふ〜ん、ジャルやヌヌースは負けちゃったか。

まぁ、クラローテ達は勝ったし、僕も続けばアストランの民の立場は守れるかな? ということで、獣神は僕がやるよ」


俺が愕然として固まっていると、ふわふわ飛んできたククルが爽やかに笑いながら頭に乗ってきた。

アストランの民の立場ってことは、さっきの2人も含めてその国から来たのかな? いや待て、獣神をやる!?


「え、お前ケルヌンノス倒せるのか!?」

「軽い軽い〜♪ たとえあの鹿が科学文明から生きている神だとしても、僕だって寝ながらだけど同じだけ生きてるんだから。同格なら、元々人である僕の意志の方が強いよ」

「じゃあ、残りはアフィスティアとオリギー……

俺、アフィスティアの方がいい。オリギーはガチで怖い」

「なーっはっはっは!! じゃあ俺様もそっちな!!

一緒に参戦しようぜー、クロウ!!」

「んー、まぁガノよりは信頼できるな。よろしくセタンタ」


かなり驚いてしまったが、無事に参戦する試合は決定した。

さっきの試合で2人抜けて、俺とセタンタ、ククルも決まれば残りはガノとヘズの2人。


申し訳ないけど、彼らにはオリギーに勝ってきてもらおう。

というか、あの守護者達ってどこにいるんだ?

それなりに大きかったはずだけど……


「ところで、肝心の守護者はどこだ?」

「今は彼らも人型になっていますよ。

ここで大きいと、かなり不便ですからね」

「なるほど。じゃあ、他に聞くことはないかな」

「えぇ、試合はもうすぐ始まります。

頑張ってきてください、貴方の価値を示すために」

「おう!」


人型になっているというのなら、わざわざ探す必要はない。

ソフィアさんや家族達に激励されながら、俺は一緒に試合に出る仲間達と共に、闘技場へと飛び込んでいく。


セタンタと、さっきからずっと騒いでいた銀色の猫……

ずっと思っていたけど、この人は何なんだろう?

マッチング表通りなら、クイーンって名前。


ここにいて、闘技場にも一緒に行くのだから、ライアン達に呼ばれて救援に来たんだろうけど……

うーん、イマイチよくわからないが、まぁいいや。


今は試合に集中しないとだ。何かを考える余裕なんてない。

なんと言ったって、敵は一度俺達を撃退した強者なのだから……!!


「よう、久しぶりだなブラックハウンドのボス。前回は逃げ帰ることになったが、今はもうそうはいかねぇ。何度も立ち塞がるお前を、俺は越えるぜアフィスティア!!」


目の前に立っているのは、そう思って見なければ彼女だとはわからないような、黒い鎧の女騎士。

隣には勇ましい騎士を従え、足元にもやはり無数のブラックハウンドを従わせている強欲の守護者、アフィスティアだ。


数で有利だからか余裕の態度を崩さない彼女は、俺の言葉を聞くと、本来の姿に戻りながら笑う。


「うふふ……また会うなんて思わなかったわ。

けど、機会に恵まれたのであれば、容赦なく貪り食うのみ。

あたしはラウンズトゥレイター。騎士名"望み強き牙槍(サグラモール)"。

此度こそ、可能性に満ちた甘露な願いをいただきましょう」


円卓争奪戦、第十試合。

ようやく参戦することができた俺達の戦いが、今始まる。



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