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化心  作者: 榛原朔
一章 支配の国
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31-未知の技術

「到着だ。この街、グレードレスにゲームの用意がある」


その言葉と共に車から降ろされる。

数時間車に揺られ連れてこられたのは、グレードレスという街。

……ギラつきが最初の街より明らかに少ない、というかない。


同じように壁はよく分からない物質でできているが、あまり光を反射していない。


だが木や石でできているのかというと、それも違う。

よく見ると周りの景色を映しているようなので、やはり同じような素材で作られてはいるのだろう。

どうしてそんな違いがあるのかは分からない。


灯りも必要な分だけ付けられているし、眩しくもない光だ。

昼だから、という訳ではなくそれで事足りるから、といった雰囲気。


そして、街の形状も上に蜘蛛の巣のように足場があるような変な物ではなく、一つ一つが独立した建物だ。

どちらにしてもふざけた大きさで、俺には似たような物に見えるが……


「なんか……最初の街よりまともな街だな?」

「ふむ……? ポールは、あれが科学なのかと思わせるための街だ。

あんな生活しにくいものが科学発展の結果な訳ないだろう」


まじか……暮らしにくいって思ったのは間違いじゃなかったと?

どんだけ警戒してんだよ……


「外国を嫌いすぎじゃねぇか?」

「ふむ……自由を奪うのは忍びないと思っていたところだ。

お詫びに、暇な時には私の知る外国のことを教えてやろう」

「もう勝ったつもりかよ」

「当然だ」


その言葉を聞き、俺はつい苦笑してしまう。

冷静なのに挑発的とか……学者って生き物はすごい面白いな。


だが、リューからすると面白くなかったようで途端に騒ぎ出した。

気持ちは分からなくもない……


「おい。当然だ、じゃねぇよ。

学者って言うくせに戦闘に自信があんのか?」

「君は本当に元気だね……

科学者仲間にはよく運動をしている子もいるんだよ。

彼らも聖人で、君達よりも少しは長く生きているし……勝てると思っている」

「まぁまぁ〜。取り敢えず戦ってみるまでは分かんねぇんだからよ〜。楽しんでいこうぜ〜」


面倒臭いな、と俺が傍観していると、唸るリューに釘を刺したのは以外にもライアンだ。


緊張感がない……


そうこうする内に、会場に到着する。

他と違って平たいが、それでもウォーゲームが出来る程広くはなさそうな建物だ。


普通の代表戦みたいなのなら問題なくできるくらいには大きいが……


「この建物でウォーゲームなんてものができるんですか?」

「もちろん。ここは科学の国だからね。体験すれば分かる」


ニコライは、ヴィニーの質問に曖昧に答えるとスタスタと歩いていってしまう。

俺達も慌てて後を追うが、みんな戸惑った表情になっている。


説明はしてほしいな……




~~~~~~~~~~




彼に付いて行った先にあったのは、お世辞にも十分な広さがあるとは言えない円形の部屋。

広さ的にも難しそうだが、さらには何やら丸いツルツルの物体が運動スペースを奪っていて、ウォーゲームができる状態でもなくなっている。

ここが会場なのか……?


「これどかせねぇの?」

「うん? どかす必要はない。……どう説明したらいいか。

……いや、無理だな。安全は保証するからさっさと入ってくれ」

「入る?」


リューが質問するも、ニコライは相変わらず説明をしてくれない。

俺達を置いてけぼりにして、部屋の科学者達に指示を飛ばし始めている。


するとあっという間に8個の球体が真っ二つに開き、光を発し始め準備ができたと言われる。


確かに科学が理解できるとは思えないが、説明なしは少し恐ろしいな……ただ入るだけにしても。

俺達はなんの説明もないまま、その球体に一人一人押し込められた。




~~~~~~~~~~




球体に入り中に取り付けられた椅子に座ると、蓋が閉められる。

暗闇に包まれる……かと思っていたが火ではない明かりが中で点いていたので存外明るい。


密閉空間で炎!? と焦ったのは内緒だ。


しばらく待つと、頭上から帽子のようなものが降りてきて俺の頭を包む。

前はガラスかなにかで作られているらしく、やはり視界に影響はない。


……動けないのに戦争ゲーム?

俺が頭にはてなマークを浮かべていると、視界が暗くなってきた。


「なんだ……?」


やがて何も見えなくなり、意識も多少ぼやけるような感覚を受けたが落ちることはなく奇妙な気分だ。


俺ができることはないのでそのまま待っていると、しばらくして唐突に視界が明るくなる。

球体に押し込まれていたはずなのに、体も自由だ。


目を瞬かせてから辺りを見回すと、そこは庭園になっていた。

あらゆる種類の花がある、と言えるほど俺に知識がないのでなんとも言えないが、かなり立派なものだ。

そして、服や武器も球体に入った時のまま。


……なんで?




俺が謎空間に放り込まれてから1~2分後。

思考を放棄して景色を見ていると、目の前にいきなりリューが現れる。

本当に唐突にだ。

物陰からとかでもなく、気づいたら現れていた。


「うわっ、なんだお前。急に出てくるなよ」

「ん……は? いや、まずどこだよここ」

「俺が知るか」


そんなやり取りをしていると、他の面々も続々と。


みんなもいきなり現れるが、ヴィニーは落ち着いて観察を、ローズは花に顔を輝かせ、ロロは取り乱して走り出したりと反応も様々だ。


「仔猫〜落ち着けって〜」

「オイラ神獣だい!!」

「あっはっは、ロロだったっけ〜? からかい甲斐がある仔猫だな〜」

「覚えてるならオイラをうやまえ!!」


ロロのあまりの取り乱し具合にライアンが声をかけると、もうお約束になっているやり取りが行われる。


こういうのをムードメーカーと言うんだったかな?

途端に場が和む。

ただ、戦争を模したゲーム前に緊張感がないのもな……


などと考えていると、やはり唐突にニコライが現れる。

一度にはやってこれないのか……?


「ふむ、無事全員入れたようだね。

我が国には魔人の協力者がいないから、いい実験になった」

「は?」

「おいおいおい、何してくれてんだよ」


さてはこいつもそこまで安心できねぇな?

身の安全についてはこいつの基準のさらにもう何段階か上にしてもらわねぇと……


「いや、危険だった訳ではない。使えない可能性くらいはあったというだけだ」

「それはもういいですけど、ここどこです?」


ヴィニーが引くほど冷静だ……


「仮想空間というものなのだが……夢、と思ってもらって構わない」

「つまり、現実に近い感覚で色々とできて、何が起きても危険ではないと?」

「その通りだ」


へえ……便利なものがあるんだな。

これを使えば実戦訓練も本気でできる訳だ。

勝ったら自由に使わせてもらえねぇかな……


「え……こんな庭園でやるの?」


そんな問いかけをしたのはローズ。

俺は面白い、ということで頭がいっぱいになっていたのでその言葉で我に返る。


確かに暴れにくいな……

そこじゃないか。


「もちろん場所も自由自在に変えられる」


そう言うと景色が一変、荒野のようになる。

と思ったら雪山、海岸、草原、そして最後にバカみたいに広い闘技場へと次々に変わりゆく。

夢はこんなに自由じゃないんだが……?


ロロは再び落ち着きをなくし、他の仲間は全員口をポカンと開けて呆けてしまっている。

ライアンもロロをからかうのを忘れてしまっているほどだ。


「さて、ではゲームのルールを説明しよう」


この場所が気になりすぎる……

しかしルールを聞かないわけにはいかないので、説明に集中する。


要点をまとめるとこうだ。


①チームが全滅したら負け

②拠点を破壊されたら負け

③フィールドはそれぞれの拠点を除くと7つのエリアに分かれ、そこを制圧することで拠点への道を塞げる

④同じく、相手の制圧した地点を奪うことで道を開く


そのエリアも、さっき変わったように様々らしい。

そしてどのように塞ぐのかというと……


「このように、エリアにあるクリスタルを破壊すると背後が不可侵エリアになる。

その後再構築されたクリスタルが再び壊れると……消える」


ニコライが2度クリスタルを壊して実演してくれる。

どうやら薄い膜のようなものが壁になるようだった。


……珍しくちゃんと説明してくれて分かりやすい。


そしてなるほど、確かにこれはウォーゲームだ。

戦略って面を見るなら科学者は中々厄介か……?


「それからこのバンドは生き残りを表示するのと、このボードはエリアなどの情報の確認ができるから、作戦などはこれを見て決めるといい。

では私は反対側の拠点に行く。ここも……うん、拠点になったな。20分後に開始する」



景色が闘技場から砦がある草原、といった雰囲気に変化すると、彼はそう言い残して去っていく。


「……さて、どうします?」

「まずはヴィニーが大枠を決めちゃってよ」

「分かりました」


時間は20分。

そこまで難しいルールではないが、それでも時間が余る程ではないのでそれが最善だ。

取り敢えず俺達はボードでエリアの特徴を確認する。


             ④

          ⑦     ②

       ⑨     ⑤     ①

          ⑧     ③

             ⑥


エリアは簡易図が番号付きの円で掲載されている。

その番号ごとに軽い説明がある感じだ。


俺達がいるのは一番右で1番。ガルズェンス側は9番だ。

間にあるエリアは、上から数えた番号順。

まず2番と3番は両方抑えたいな……


そのエリアはどうやら石でできた迷宮のような場所らしい。


草原から何故そうなるんだろうな……?

まぁ行けば分かるか。


とにかく迷宮で、ゴーレム? っていうものが徘徊しているエリアとのこと。

上の2番は人とそう変わらない大きさで武器を持ち、下の3番は人よりも遥かに大きくその巨躯で叩き潰す……

絶対上がいい。

判断はヴィニーだけどな。


次の3つは、上から火山、墓地、雪山のようだ。

その全てから死の香りがするぞ……? 本当に安全なのか……?


火山には意志ある炎、墓地には大型の犬、雪山には多数の蛇と一体の巨大なゴーレムが行く手を阻む……

火山だけ突破不可能じゃね? 犬がいいなぁ……


拠点前最後の2つは、どちらも森。

上の7番は炎や風などの神秘を放つ人型のゴーレム、下の8番は小型でひたすら翻弄してくるゴーレム……

下がいいかな? うざそうではあるが……


そして最後がガルズェンス側の拠点だ。


……ニコライの今までの説明とは雲泥の差!!

手厚すぎて心配になるレベルだ。


まぁ、大事なのはお互いの陣営の戦力ってことなんだろうけど。

ん? よく見ると、その図の下にはガルズェンス側の人数が記載されている。

その数5人。ありがたいけど……舐めてる?


俺達は闘志を燃やし、エリアの情報を踏まえて作戦を考え始めた。





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