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化心  作者: 榛原朔
一章 支配の国
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間話-とある書物の記述➀

クロウ達を見送ったヘズは、彼らの背中が見えなくなると大図書館に戻っていく。

音を聞き、迷うことなくシルの元へと。


そして静かにそばまで近づくと、ヘズの耳に届いたのはいつもよりも分厚い本を開く音。

何年も聞かなかった本の音だ。


「珍しいですね。その本に目を通すなんて」

「そうじゃの……」


ヘズが思わずといった風に話しかけると、シルは悲しげに呟く。

彼女の手にあるのは、彼女が生まれてからの記録。

この世界の、彼女が知る全ての情報。


「覚悟を問うならば、それを読ませればよかったのでは?」

「彼らが求めていたのは力。今は余計なことは言うまいよ……」


シルはそう言うと、そのまま書物をめくり続ける。

パラパラ、パラパラと……




序章


この星のかつての文明が滅びたのは、何故だったのだろうか。

もはやその片鱗すら見せぬ、神話のような大いなる疑問。

そしてそれは、決して解決することのない永遠の謎である。


だがその天変地異の後に、さらに人類が数を減らした理由なら分かる。

それはこの神秘の時代の歴史。

叡智が記録する、可能な限りのすべての記録……


……



私は最古の神秘ではないが、この世界の観察者として、この世界を書き記す。



~~~~~~~~~~


一章 創世記


……


現代にも、かつての大厄災の時代を生きた者はいる。

世界にたった数人しかいない、最古の神秘の生き残り。

この時代の創世記以降の、その全てを知るであろう者達。


そんな彼らは数千年前、人を恨む獣と戦っていた。

彼らは人が神秘と成る以前から、いち早く神秘と成った獣達である。


人類は彼らに何をしたのだろうか。

かつての文明の形跡がほとんど失われている現在、推察すらも覚束ない。

だが確かに彼らは存在し、人類に牙を向いた。


彼らは現代にはほとんど伝わっていない。

口にすることすら忌み嫌われた、戒めの獣。


人類の歴史は、まずはじめに彼らとの戦いから始まった……


……



~~~~~~~~~~



二章 英雄


……


最古の神秘たる彼の者は、大厄災から人類を守るため、人類の守護者となった。

それは私が生まれるより遥かに昔で、どのような道のりだったのか、実際には分からない。


ただ一つ言えることは、あの者はただひたすらに人類の存続を願っていたということ。


現在の形はどうあれ、あの者は確かに人類を2度目の滅びから救った。故に人類の英雄として、世界の維持を……


……


~~~~~~~~~~


……


1人の英雄がいた。かつての大厄災を鎮めた英雄だ。


だが、彼は大厄災と戦った時点で世界を憎んでいたと言う。


何故世界を憎む彼は、世界を救ったのだろう。

彼は何を思って生きているのだろうか……


……


もはや何一つ信じない彼は、救世の英雄。

しかし、彼を知るものはほんの一握り……


……


~~~~~~~~~~


……


1人の少年がいた。なんの変哲もない、心優しい少年だった。

だが、だからこそ彼は、本当の意味で聖人だった。


ひたすらに誰かの幸せのために奔走した。

大厄災に、その身一つで立ち向かった。


それは、己を顧みない蛮勇。

共に生きた全ての者を、悲しませた凶気。


彼は、英雄だった。

英雄に、なってしまった。


ただの少年は、誰に知られる訳でもなく、誰に感謝されるでもなく、永遠にその身を犠牲にし続けた……


……


~~~~~~~~~~


……


多くの勇士が立ち上がった。彼らは命を懸けてこの世界と戦った。

彼らはみな、英雄と呼ばれるべき素晴らしき先人だった。


だがほとんどの者が命を散らし、後世に残る記録はわずか。

私があと少し早く存在していればその全てを語り継げたが、残念ながらそれは叶わなかった。


せめて、私が集められる限りの彼らの勇姿をここに書き記す……


……


~~~~~~~~~~


1人の少女がいた。とても儚い人生を歩んだ少女だ。


だが、その短い一生でも世界を愛していたと言う。


彼女は何を見て生きたのだろうか。

彼女は何を思って人生を終えたのだろうか。


……


もはや誰一人いない世界で彼女は、神話を詠う。

しかし、それを聞くものはほんの一握り。


~~~~~~~~~~




支配の国ガルズェンス


彼の国は氷に閉ざされた。氷雪に生き方を支配された。

神秘は万能なれど全能ではない。

その地は何もできずに、ただ凍えた。


それは大厄災すら上回る、この星の神秘……


……


だが、それに抗い始めた者がいる。

かつて文明を掘り起こし、科学の恩恵を再びこの地へと。


万年氷はいずれ溶ける。開かれた国が見るのは恵みか、乾きか。


選択の時は遠くない未来に……





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