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化心  作者: 榛原朔
一章 支配の国
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間話-神獣を求めて

ライアン・シメール、獣の力を宿す青年。

彼は1人で放浪していた時、ある少年に出会った。


彼はその少年クロウと共に旅を始め、辿り着いたのはバラの街ディーテ。

さらにそこで2人の仲間を得たのだが……


「やべ〜‥1人って暇だ〜」


今、彼は1人で馬車を操縦していた。

食料は十分にあり、移動も馬車なため過酷なものではない。


だが彼はクロウ達がいれば、歩きでも食料のない旅でもいいと思っていた。

それほどにこの孤独な旅は、彼にとって辛いものだっのだ。


「あいつ余計な事言いやがってよぉ」


彼が思い出すのは、ボロボロのローブを纏った男。

自らを大厄災と呼び、殺してくれと頼んできた者。


彼の示した道は、西へ神獣を探しに行くこと。


たしかに彼も強くなりたいと思っていた。

そして、彼の呪いは強い獣に会えばより強くなる。

それも分かっている。それでも……


「つら〜……」


彼はぼやくのを辞められなかった。


そもそも、神獣がいるから行け。あの男から聞いたのはそれだけだ。

宛がないにも程があった。


それでも言われた通りに西へ向かっているところに性格の良さが滲み出ている。

その歩みは着実に。彼は神秘へと近づいていく。




~~~~~~~~~~




旅を始めて数日後。

最初に出会った神獣は、猫だった。


彼が訪れたのは小さな森。何千年も昔から存在する神秘の森。


大木は彼が手を広げても覆えないほどに太く、地面も栄養が行き届いている。

小さな湖にはきらめく魚達が泳ぎ、その近くには畑のようなものまである。


奥には洞窟があり、多くの神獣が。

そこに住むのは、ケット・シーという神獣の種族。

個体ごとの強さではなく、種としての強さで生き残ってきた神秘だった。


だが、現在この森には問題が一つ。

泉に巣食った、凶暴な魔獣。光獅子レグルス。






「ほんとにあの魔獣を倒してくれるんだね?」


彼の目の前にいるのは、一匹のケット・シー。

人族の紳士のようにシルクハットを被り、スーツを着る。

さらにはその手にステッキを握っているという、とても神獣には見えないような見た目をした、紳士だった。


「おうよ〜。魔獣なら俺の力になるからな〜」


それに応じる彼はウキウキと森の奥へと進む。

そしてそのケット・シーも、監視するかのように彼に付いて行く。


「それからよ〜。俺がその魔獣を倒したら〜俺を認めてくれるよな〜?」

「そうだね。キミの呪いの力になろう」


その答えを聞き、彼はご満悦だ。

対して、ケット・シーは少し呆れたように言う。


「すごい便利な能力だよね。

その力は、極めたらこの星の王様にでもなっちゃえそうだ」

「俺は〜‥‥はは、仲間と一緒に生きていければそれでいいんだよな〜。だから、心配する必要ないぜ〜?」


そんな話をしている内に、彼らは森の奥へ。

目の前には黒く光る獅子。


「あれか〜?」

「そうだよ。ボクらでも無理すれば勝てるけど、キミが1人で勝てるならその方がいい。よろしくね」

「りょ〜か〜い」


グルル‥‥


彼らに気づいた獅子が唸る。

体を起こし、今にも襲いかからんばかりの迫力だ。


それを見る彼の顔には、笑みが。


"災い呼ぶ茨槍(ボルソルン)"


手には茨の魔槍。

くるくると綺麗な円を描いて回転しており、彼が熟練の槍使いである事を予感させた。


「肩は〜メガロケロス〜。腕、脚はハイエナ〜。知能を持って〜獅子を討つ」


獅子を見据える目は鋭く、その力は魔獣にも引けを取らず、地を駆ける。


獅子の牙爪、彼の魔槍。

それが交錯した後、地に伏すは魔獣。


彼の四肢に傷は無く、人族の超人は遥かな高みへ……





「あっはっは〜、軽い軽い〜」

「へ〜、やるじゃん」


戦いを終えた彼に、ケット・シーが笑いかける。

思っていたより強い、といった様子だ。


「ちょっと待ってろな〜」


それを尻目に彼は獅子の亡骸へ向かう。

そして、それに手をかざすと……


「レグルスの力、獲得〜」


彼の体は眩い光を放つ。

魔となったレグルスは、彼の中で聖なる存在へ。


「恩恵がでけぇ〜な〜」


彼は、呪いの力が強まっていた。

以前は力を得たい獣を全て食べなければいけなかったのが、

倒す、もしくは認められるだけで可能となってる。


力を得て、ケット・シーの元へと戻った彼は、笑いながら問いかける。


「認めてくれたか〜?」

「もちろんさ。ボクの力を持っていくといい。

それから、キミはもうケット・シーの友だ。いつか何かが起こった時、ボク達はキミ達と共に戦おう」

「大厄災の話か〜?」


ケット・シーは笑顔で応じる。

それが肯定か否定かは分からないが、何はともあれ彼は神獣の友を得た。


「ふふ‥‥ケット・シーの力は便利だよ。

火、水、風、色々扱えるからね。補助程度だけど、ないよりはいいだろう」

「助かるぜ〜。俺はあんまりどデケェものを使える気はしねーからな〜」

「確かに、キミはその力だけで大きいからね。

強力すぎる神秘を使うと、体が耐えられなそうだ」

「あっはっは〜、お前らと相性いいな〜」


談笑していると、森の出口まではすぐに。

彼らは立ち止まり、あっさりと挨拶を終える。


「それじゃあね。またいつか会おう」

「じゃ〜な〜」


彼は森を出る。

2つの神秘を手に入れた彼は、明るい表情で馬を御す。

進む先は、変わらず西へ。

大厄災との戦いに向けて、さらなる力を求めて進む。




~~~~~~~~~~




彼は、その後もいくつかの神秘を手に入れた。

そのうちの1つは恐怖の大熊、ヴォーロス。

今までの神秘の中でも、圧倒的な巨体と膂力を持つ獣。




そんな彼の進む道は、少し今までとは違う景色を見せていた。

左手には、死の大地。

草が奥に向かうほどまばらになっていき、遠くには火山地帯が見える。

たまにチラチラと炎が吹き出しているのも見て取れるほどに暑く、乾いた過酷な世界。


それに反して右手には青々と草原が広がり、少し先には大きな川が流れているのも見える。

一目で生命の宝庫だと分かるほどに涼しく、快適な潤った世界。


それは、彼にとってはいい指針になった。


「あ〜‥‥火山って神秘的だよな〜」


生命はないと断じて右寄りに進むか、生命溢れる地には強力な神秘はないと断じて左寄りに進むか。

それは彼の行く末を決める選択……




~~~~~~~~~~




彼が最終的に辿り着いたのは、世界の三つの戦闘民族。

その一つである民が暮らす国、アストラン。

この世界の敵ではなく、だが孤独に生きる一族。


彼は、そんな一族とまたしても仲良くなり、新たな神秘に挑もうとしていた。


彼らは、古の森ミョル=ヴィドとアストランの間に位置する平原へ。

馬車や荷物を彼らの国に預け、徒歩で進む。


標的は銀狼、フェンリル。

アストランの民が先祖代々戦ってきた、戒めの獣。




平原を進む彼の隣には、アストランの戦士の首領。

その周りは、百人近い戦士達が槍を持って歩いていた。


「悪りぃな。手伝わせちまって」


アストランの首領もまたケット・シーの首領のように、にこやかに感謝を述べる。


その言葉遣いは長年の友に向けるようなもので、ライアンの人当たりの良さがよく出ていた。


「いいって〜、俺も助言に従っているだけだからよ〜」

「助言?」

「ああ〜。俺、仲間と別行動中なんだけどよ〜。

仲間の現状を知ってるやつと〜、ここに来る直前に会ったんだわ〜。

そのついでに、最後に行くならここだろって言われてな〜」

「ふーん、俺達の事も知ってるやつって事か……」

「かもな〜」


首領は少し考え込む様子を見せるが、彼は晴れやかな表情だ。

同じ明るい性格でも、しっかりしているかどうかという面では真逆の2人だった。




そんな彼らは、すぐに禁足地へと辿り着く。

国と近いのは、銀狼の行動範囲が広いためだ。


その神秘の強大さ故、アストランの戦士達でさえおいそれと手は出せず、それでもなんとか撃退を続け、国の形を保っているのだった。


「この先からは死を覚悟しろよ?」


首領はライアンに覚悟を問う。

それに応じる彼は、ケット・シーに答えたように。


「おうよ〜」


それを受け、戦士達は死地へと向かう……




~~~~~~~~~~



クロウ達が暴禍の獣(ベヒモス)との戦いを終え、再び北へと向かい始めた頃。

彼もまた、北へと進路を向ける。


クロウ達が呼ぶところのレイス。

その助言者が示した道の通り、彼の身にはいくつもの神秘が。


久々に会える仲間の顔を思い出しながら、彼も北の国ガルズェンスへと……


今更ですが、化心-けしんと読みます。

他も一応いくつか……茨海-ばらうみ、呪泥-じゅでい


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