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化心  作者: 榛原朔
序章 覚悟
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23-叡智の都

旅はそれから2週間程続いた。

既にソフィアには入り、もうイーグレースも目前だ。


その間の旅は前回と違い、本当に何も起こらない。

真に穏やかな旅だった。

昼はのんびりと進み、昼休憩や夕方に順番で狩り、夜はヴィニーとの修行、という日課のような物ができた程だ。


だが、決して退屈はしない。

常に心踊る事ばかりだ。


夜の修行は言うまでもない。

そもそも学ぶ事が多く、気を抜いてなんていられないのに、退屈だなんて思うはずがない。


そして、何より力を磨くというのは楽しいものだ。

神秘である俺は、多くの人よりも身につけるスピードが速いのでよりそれが実感できる。


一週間での長剣の上達具合は、まずまずといったところ。

取り敢えずはヴィニーとまともに打ち合えるようにはなり、少し本気を出してもらっても、10秒位なら耐えられる。


ヴィニー相手にこれはなかなかのものだと思う。




昼の移動中はもちろん景色。

丘陵という場所は、小山に泉、川、森、崖、谷、実に様々な顔を見せるで目が楽しい。


特に何かが起こる訳では無いが、だからこそいい。




そして夕方の狩り。

これが一番楽しくて、一種の娯楽になっていた。

なぜならリューの提案で、ペアごとに競争をする事になったからだ。


小型1ポイント、中型3ポイント、大型5ポイントでもし魔獣ならどんな大きさでもプラスで5ポイント。

どのペアにも強力な呪いがあるので白熱した戦いだ。


フーとロロのペアは、搦め手がすごくて、小型でも中型でもどんな獣も捕まえてきた。

しかもこの2人は何よりも数がすごいので、他のペアが大型を何頭か捕まえてきても張り合っている。ただただすごい。


リューとヴィニーのペアは、大型をバンバン狩ってくる。

運ぶのもリューの風があり、手間にならない分遠慮がない。

ヴィニーは超人だし、リューはフーと違ってほとんど弱体化していないようだし、まぁ強いよな。




俺達は……まあローズが狩るんだよな……


「前方の川に、猪が5頭いるな」

「あっほんとだ。ラッキーだね〜」


はい、これで終了である。


今いるのは馬車から少し離れた先の谷川だ。

そして俺の幸運で、なかなかのの獲物を3頭見つけたところ。

だがもう既に縛り上げられており、狩りは終わったようなものだった。


いや、もし他の誰かとペアなら習っている長剣やナイフを駆使して大いに活躍してみせるさ。

だけどもローズは……そもそも索敵も茨の範囲内は完璧、攻撃も遠距離からという使いやすいもので、威力も精度も仲間内でトップ。


うん、仕方ないよな。


「いや〜クロウとペアだと狩りが楽でいいね」

「それだけのためにいると思うと悲しくなるな……」

「でも、もしヴィニーやフーとペアでも同じだと思うよ」


フーはロロに付き合って競争に参加しているような節があるからなぁ。


「何にせよ、もっと強くならなきゃいけないのは変わらねぇ」

「そうだね。今度相手してあげようか?」

「いや、まずはリューだな」


あいつをどつく。

最近は仲良くなってきたし、そこまで振り回されても文句はないけど……まあどうせなら。


「程々にね」

「少なくとも到着するまでは挑まないさ」


明日か、遅くても明後日には着くと思うが、焦る必要はない。

むしろ着いた後だって勝てると思えるまで修行でいい。

大事なのは修行の成果の確認だからな……




~~~~~~~~~~




今回の馬車旅最後かもしれない夕飯は、猪の串焼き。

俺が焼いた……


みんなあんなにヴィニーの料理がいいと言っていたのに、何故か試しに焼いてみてくれと言ってきたのだ。

ロロは毎回一言を喋らず食べるし、リューも毎回ヴィニーを褒めているのに、だ。


解せないが、取り敢えず好評だったのはよかった。

一応ヴィニーが見つけてきたという香草は使ったからな。


「お前なかなかやるな〜」

「お前に褒められてもな」


リューが、肩が外れそうな位に叩いてくる。


「お肉また焼いて〜」

「そのベタついた口でまとわりつくなよ……」


ロロは、ニコニコで俺にじゃれてくる。

特に男には大好評だった。

ヴィニーも何故か満足げ……


さらには女性陣も、ロロがいつもより甘えた風でかわいいので笑顔だ。

居場所って感じがして、とても心地良い。


「ちなみに、勝負は俺達の勝ちな」


和んでいると、突然リューが勝利宣言をしてくる。

リュー達は大型を見境なく狩ってくるので、計算するまでもないのだが……


腹立つな。次機会があれば絶対に勝ってやる。

そう心に決めた。

ムカつくから返事はしない。


だけど、俺はやっぱりこうやって生きているだけでいいな……


今日は修行は無し。

俺達は明日に向けて、見張り当番以外は早めに寝床に入った。




~~~~~~~~~~




翌日の昼。

俺達はついに叡智の都、イーグレースに到着した。

アクシデントのせいで2ヶ月以上もかかってしまったが、仲間が増えたから結果オーライかな。


「俺達は大図書館に行くけど、ロロとヴィンダール達はどうする?」


あの男に勧められた道。

その目的地は、ここにあるウィズダム大図書館だ。


だが俺とローズ、ヴィニーは元々向かっていたが、他の2人と1匹は特に行く理由がない。

この街はソフィアの首都らしいし、見て回る方が色々と面白そうだ。

というか、ロロはこの国の建物にはいれるのかな?


「オイラはついてく。文化はあまりきょうみないからさー」

「俺らは……どうする?」

「…………」

「何で行くんだ?」


……何を読み取ったんだ?

リューがフーに聞くと少ししてそう質問してきた。

不思議だ。


「勧められたんだよ……そういえば、彼を何て呼ぶか決めてないですね」

「あっ忘れてた。……じゃあどこにでも現れそうだし、幽霊みたいなローブ着てるし、レイスでいいんじゃない?」


確かにボロいローブだったもんな……

ヴィニーも分かりやすいと言うので、満場一致で決定だ。


あの神出鬼没さからも丁度いいしな……魔法のように何処にでも現れそうだ。

ローズといい、ヴィニーといい、名付けるの上手いのは元上流階級だったからなんだろうか?

とてもスムーズでありがたい。


そんなことを考えていると、リューはどこか不安そうな表情

でさらに重ねて問いかけてくる。

……図書館に行けと勧められただけなんだけどな。


「そいつに勧められた?」

「ああ。大厄災を殺す事を頼まれた時にな」

「は? ……大厄災を?」

「ねー、信じられないでしょ?」

「そうだな……うーん、じゃあ行っとこうかなぁ」


こいつは大厄災を知ってたのか……

今度は少し顔が引きつっている。


まぁそれならそうだよな。

戦わないにしてもここまで身近に感じたら誰でも怖い。


という事で、俺達は5人プラス1匹揃って大図書館へと向かう事になった。

そこで会えと言われた魔人と話して、何か変わるのだろうか……






大図書館に向かう途中に通る道は、一直線だった。

どうやらその建物を中心にしてこの都市は成り立っているようで、四方の門から大通りが伸びている。


俺達もその道を通っているのだが、その道中にあるのも、研究棟のような建物や何かの保管庫、本屋、それらを伝える学園などの知識に関連した建物ばかりだ。

紙の匂いばかりする。


そしてどうやら、造りも利便性がとことん追求されているらしい。

ただし生活のための利便性ではなく、知識のためのだ。


1つの学園の近くに、研究棟などの必要なものが最低でも1つはありそうで、その配置もそれぞれの研究にあった形になっている。

もしそれが動物関連なら保管庫も大きいし、植物関連なら程々といった感じ。


大通りから蜘蛛の巣のように伸びる小道も恐らく、見える範囲だけでなくその全てがサンプルや書物が運びやすいように広め。

大通りなど、大型の馬車が10台は横並びで通れそうなくらいだった。

それも詰めて通るのではなく、ゆとりを持ってだ。


ここまて突き詰めているのは本当に凄いと思う。

もしかしたら魔人や聖人、神獣なんかの書物もあるかもしれない。






まぁ何を探すにしても一番いいのはここだがな。


目的地まで直線とはいっても、ここはかなり大きな街。

俺達は、馬車で数十分かけてウィズダム大図書館にやって来た。


高さは10メートル以上ありそうな程巨大で、敷地も小さな町位なら入りそうな広さ。

黒いレンガ造りで、装飾は派手ではないがその分威厳がある。


しかも、どうやらこの図書館は神秘が濃い。

その上、何故か衛兵がいて誰一人入る者もいないので、図書館らしからぬ雰囲気だった。


「これ入れるか?」

「どうだろ……お嬢、少し見てきますね」

「うん、よろしくー」


そう言うと、ヴィニーは1人で入り口まで歩いていき衛兵に話しかける。

国の中心になっている建物での揉め事は絶対に回避したいが……


彼らはしばらく話をしていたが、上司に確認するらしく、衛兵が1人図書館に入っていった。

しばらくするとどうやら許可が降りたらしく、ヴィニーがお辞儀をして戻ってくる。


「許可取れました」

「ありがとー」

「え、許可制なのか?」

「そう言ってたね」


その厳重さで図書館を名乗るのか……


「まーでも、この図書館の内部は世界の宝だって話だからな」

「内部? てかやけに詳しいな」

「親代わりだったおっさんが教えてくれたんだよ……たしか」


リューとフーの親か。

フェニキアで誰かがそんなような事を言ってたが……

よく覚えてないけど、あれが親代わりってやつなのかな?


「オイラも入れるの?」

「うん。入っていいよって」


獣が入れるのに宝……?

厳重なのか緩いのかはっきりしないな。

入れるのはありがたいけど。


俺達は無事、全員で図書館へと足を踏み入れた。

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