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化心  作者: 榛原朔
二章 天災の国
203/432

177-それが人である証④

――彼女が目を覚ました時、目の前にいたのは険しい顔をした大人たちだった。


――手にはチェーンソー、大ぶりのナイフなどの道具。


――そして、自身は頑丈な鎖で椅子に縛り付けられていた。


「……なに、してるの?」


――彼女が問いかけても反応はない。

後ろには母親や父親もいたというのに。


――この暗い拷問部屋で、鋭い視線に射抜かれ続けるしかなかったのだ。


「わかるだろう? 鬼になったやつらの一部は、逃げ出した。この子も生かしてはおけない」

「……そう、ですね」

「暴れる人も‥」

「人ではない!!」

「……はい」


――彼女を無視して話し合っていた大人たちは、話がまとまると一斉に彼女を見る。


――チェーンソーを起動し、ナイフの刃を光らせ。


「パパ……? ママ……?」

「殺せなくてもいい。暴れないように手足を壊せ!!」

「まって!? いたいよ!? いたいいたいいたいッ!!」


――彼女は切り刻まれる。いや、その体は切れはしないため、刃による苦しみを与えられ続ける。


「いやあぁアァぁアあ……!! 血がッ……血が出るッ……!!

いたいぃぃ……!!」


――逃げ出した同胞に助け出されるまで、彼女は延々とこの苦行を受け続けた。


――両親の虚ろな視線を受けながら。


いやだ……いやだ……いやだ、いやだ、いやだ、いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ……



~~~~~~~~~~




「いやだァァああぁァアァあァァアあァあァァ……!!」


美桜達と戦う崇徳魂鬼は、輝く十二天将に囲まれながら叫び声を上げる。それはさっきまでの狂乱とはまた少し違って、式神に囲まれたことから何かを思い返しているかのようだ。


ほとんどの式神たちは動じることはないが、同時に勢いを増した血と髪に吹き飛ばされ、美桜と紅葉はより恐怖のこもった叫びに顔をしかめた。


「っ……!!」

「……止める、という方針でいいのですよね?」

「もちろんよ〜! だけど、私は式神に力を割いてて自衛もできないから、あなたは全力で私を守ってね〜!」

「了解です、よっ……!!」


美桜に確認を取った紅葉は、暴走している魂鬼が叫び声と共に放った、血で生み出された使い魔や血濡れの髪を防ぎながら同意を示す。


しかし現在、美桜の桜はほとんど存在せず、彼女達を守るのは紅葉の操る紅葉(もみじ)だけだ。


魂鬼を止めるという方針を否定することなく、侵食されながらも懸命に自分達の身を守る紅葉だったが、一息吐いた後、厳しい表情で問いかけた。


「しかし、彼女を止めることは可能なのですか?

式神も吹き飛ばされていますが……」

「任せて〜……ほらっ、しっかりしなさ〜い短気!!」

「ああん!?」


不安そうな紅葉の言葉を聞いて、美桜は自信たっぷりに胸を張ると、魂鬼に吹き飛ばされていた式神の1人に呼びかける。

返事をしたのは、金色の蛇――匂陳だ。


しかし、自信満々な美桜とは裏腹に、彼は魂鬼の攻撃で不格好に吹き飛ばされており、心底苛立った風だった。

地面から岩の柱を生み出して勢いを殺すと、噛みつくように叫び返す。


「だぁれが短気だって、ボス!?」

「そりゃああなたよ〜。ほら、あなたはそんな無様にやられたままじゃ終わらないでしょ〜? 頑張って〜!」

「むぐぐぐ……カァー!! 任せとけぃッ!! 

あんなガキ一匹、簡単に吹き飛ばしたらァッ!!」


勾陳は美桜の短気という呼び方に普通に返事をしているが、相当嫌なのか怒りを彼女に向けていた。

だが、美桜が無様だと挑発すると、瞬く間に怒りの矛先は、無様に吹き飛ばされた原因である魂鬼へと向かう。


誰にとも無く激昂した勾陳は、美桜の応援もあり、速やかに魂鬼に向かって飛んでいってしまった。

彼の士気は上がったようだが、暴走気味だ。

その様子を見ていた紅葉は、さらに不安げに問いかける。


「あれでは無事に止めることはできないのでは……?」

「むふふ〜、大丈夫大丈夫〜。ほら〜、さっさと解いて前線に向かいなさ〜い、天然〜!!」

「ふぇっ!? 私かっ!? すまない美桜さんっ!!」

「カハハ、怒られてやがる!! ほれ、さっさとどけ青龍」


やはり自信満々の美桜が呼びかけると、今度はなぜか騰蛇に絡まってしまっている青龍が返事をした。


どうやら、魂鬼に吹き飛ばされているときにうっかり騰蛇に絡まったらしく、彼は騰蛇にまで叱られながら速やかに解くと、体を建物に擦りながら急いで前線に向かっていく。


青龍本人は至って真面目そうながらも、気の抜けるやりとりに紅葉も戸惑い気味だ。


「あんたもよ〜バカ! さっさと前線に行く!」

「うるせーびびり! 青龍が引っかかってきたんだよ!!

炎も消してやってたんだぜ? すぐに行けるか!!」


続いて、青龍に巻き込まれて注意された騰蛇だったが、彼は他の2体とは違って反発する。

見せびらかすように空を動くと、口をつぐんだ美桜を満足げに見てから炎を纏い、前線へ戻っていった。


「これで、もしも勾陳がやり過ぎそうになったら、青龍が食べてくれるでしょ〜。ほら、おしゃべりも笑ってない!」

「あひゃひゃ。へいへ〜い、主にゃあ逆らえねぇぜ〜。

タフな朱雀さんが通りますよっと〜」

「……食べる?」


朱雀も前線に向かったことで、魂鬼の攻撃を受けても踏みとどまっていた白虎、天空も合わせて、6体の式神が前線に復帰した。


残りの貴人、天后、大裳、太陰は術者なので後衛、六合と玄武は美桜達の死角からの攻撃を守っているため、これで万全の状態だ。


勾陳の暴走対策として出た、青龍が食べるというものに疑問符を浮かべた紅葉だったが、止められるのならば問題はないかと大人しく見守り始める。


そして美桜は、そんな紅葉を気にすることなく、表情を改めて式神たちの指揮をとる。現在の戦況は、白虎に多くの血が割かれ、勾陳が髪の中で大暴れをしているといった具合だ。


青龍もうっかり髪に巻き込まれてひっくり返り、騰蛇が助けているため、動かせるのは空から隙を伺う朱雀か、地上に潜む靄のような不定形の式神――天空。

そこから今回、美桜が選択したのは天空だった。


「確実に止めるには、ある程度は弱らせないとね〜。

ってことで、おばけ! 取り憑いて弱らせなさ〜い!」

「……キヒヒ、あんたに言われるまでもないよ、除霊師。

だけど援護は‥」

「よ〜く見えてるわ〜。おしゃべりが突っ込めば万事解決! さぁ、サボらず働きなさ〜い!」

「あひゃひゃ……主が言うなよ〜。てか、マジでか〜!?」

「もちろん他も動かしますとも〜! この位置からなら、貴人とばぁかな。貴人は少し左へ、ばぁは朱雀に意識が向いた後、援護射撃よろしく〜!」


美桜が次々に命じると、式神たちは一斉に動き出す。

天空は相変わらず靄のままで潜み、朱雀は燃えながら空から魂鬼の背を狙う。貴人は左へ移動してからの攻撃だ。


「ハオ! 今なら全力全開、フルパワーが出せるねー。

いい気分だけど、少し威力を調整してっと……」


"天一神遊行"


彼が手を広げると、数えきれない程の形代が宙を舞う。

そのまま言葉を紡げば、訪れるのは神いぬところの祟りだ。

五行のすべてが魂鬼の血を薙ぎ払い、髪を消し飛ばしていく。


しかし、魂鬼は空から降ってきた朱雀を髪で絡め取っているため、すぐには対応できない。

朱雀の落下後に援護を始めたばぁ――太陰の術もあり、魂鬼はどこに意識を向けるべきなのかと混乱を始めた。


「痛eeqeeqe痛eeqezoe痛euyw@嫌q@s@4dw壊;wb0dws@4itdw助:w……!!」

「くっ……美桜殿!!」


美桜の指揮により、いつの間にやら天空は魂鬼に取り憑いている。だが、それは弱体化よりもむしろ暴走を生み、前衛組は荒れ狂う血染めの髪と血の使い魔に苦しめられることとなった。


しかも、直前の狂乱でもなんとか踏みとどまり、変わらず攻撃を続けていた白虎すらもだ。

すると、そんな彼の声を聞いた美桜は、後衛で美桜達を守っていた小鳥――六合に声をかける。


「た、大変っ……!! ちゅんちゃん!」

「はーい、母さま。ぼう走してると流石に不利になるから、ちゃんとぼくらに合わせられるよ」


"樹戎両天秤"


美桜に命令された六合は、にっこり笑うとパタパタと羽ばたき始める。すると、この髪に包まれた戦場の真ん中には木でできた天秤が現れた。


それはさっきまで後方にあり、美桜達が気がついていなかった攻撃を消していたものと同じもので、小さくもないがそこまで巨大ではない。


だが、魂鬼側に大きく傾いていた天秤が水平に戻ると、荒れ狂っていた血染めの髪と血の使い魔達は、みるみるうちにその勢いを落としていった。


逆に、追われていた白虎や捕まっていた青龍などは力を増し、どちらが優勢ともとれない状況に持ち込まれる。

よく見ると、髪に隠れて木の根も張っていたらしく、それが力を奪い、与え、調和させたようだ。


「はん囲が広いと、二次ひ害がこわいね。だけど、今不利だったのはぼくらだから、おしこむのもぼくらだよ」

「オッケ〜、おばけが与える不調は無関係。一気に髪と使い魔を払っていくよ〜!」


六合が魂鬼と自分達の力を拮抗させると、美桜は式神達に号令をかける。朱雀は髪を燃やして脱出し、同じく助け出された青龍や白虎と共に、血の使い魔や髪を減らしていく。


しかし、急に力が奪われた魂鬼の髪や血の使い魔は、当然その変化についていけない。

貴人たちのような術者の援護もあり、彼らを止めることができないどころか、身を守ることすらできなくなっていた。


「33<uyw@……!? 3qdfqq@<生gweqq@:uki……ezm人f3qdを殺c4sr.yq@……!!

eqeeqeeqeeqeeqeeqeb0eb0eb0eb0e……!! :s@<m4<楽iu;.……」


能力で操っていた髪のほとんどを失い、血の使い魔もいなくなった魂鬼は、狂ったように叫びながら空を見上げる。


目から、口から、自ら引き裂いた手足から血を流しながら。

もはや意識はないのではないかという程、異常に痙攣しながら。彼女にはもう、抵抗する力は残っていないようだった。


「止める……!!」


それを見た美桜は、またしても背後に十二枚の札を浮かばせる。呼び出すべき式神は全員出ているが、手元に戻ってきた札を媒介にして、式神たちに力を与えていく。


その影響で光り輝く式神たちは、円形に。

苦しんでいる魂鬼を囲み、陣を描いていた。


"十二天陣"


神聖な光は、天高くどこまでも。

もはや陰陽など関係ない。

ここには、ただただ神秘的な光景が広がっていた。




~~~~~~~~~~




――我は、我が子を見殺しにした。


――我は、我が子を見殺しにしかけた。


――だが我も、鬼になることができた。


――もう、あの子に合わせる顔はない。


――だが、もう決してあの子を見捨てはしない。


――我は、ただ。


――あの子の、ために……




~~~~~~~~~~




律のあまりのパワーに島から飛び出していた鬼神(きじん)は、2人で夜空を舞いながらその目に強い光を宿す。

愛宕の都から離れたからか、島から離れたからか、同胞から離れたからか、人間から離れたからか。


ともかく彼は、先程までの狂気を収め、自身と同じように足を動かす風圧で宙に浮かぶ律を見つめていた。

だが、その言語能力は相変わらずで、彼らの間に交わされる言葉は、鬼神(きじん)の一方通行である。


「……きみが、何ものなのかはよく、知らないけど。

ぼくがたおさなきゃ、どうにもならないみたいなんだ。

なのに、岩戸にまで、滅亡がいる。それでも、かれはうごかない。何ども体がしんで、もう、ぼくもげんかいだから……

わるいけど、いっしゅんで終わらせるよ」

「我f<貴公kbsf3.wes@dZwe.c@!! 3ZqbsfutZqt@<晴雲t@9h聞tpwh;q!! 5lr<2#ys]<律<l|mr>bk<大陸w@mZsm危険q@s目x;q4人i契約se4縛lを与5q3|h;e?l|\|s@!! 維持s滅亡!! 世界k均衡をqmz大厄災!!」


律が眼下で食い散らかされている岩戸を見つめながら宣言すると、鬼神(きじん)はそれを理解しているのかいないのか、変わらず叫び声で返す。


当然まともな言葉になっていないため、律には欠片も伝わっていないだろう。しかし、それでも彼らはたしかに心を通わせ、対等な敵として見つめていた。


ここは愛宕の上空。人間も鬼人も神獣もおらず、ただ風の吹く音だけが聞こえている。そんな沈黙の、わずか数秒後。

律はその場からかき消えた。


"神槍-アキレウス"


空を蹴って飛んだ律は、いつの間にか鬼神(きじん)の前に。

まるで最初からその場にいたかのような自然さで、ただ単純にその掌を突き付けていた。


「xrt@i速eZ……!! uyse4身体能力q@Z……!!」


そんな彼の攻撃に、鬼神(きじん)はまったく反応できない。防御ができないのはもちろんのこと、回避どころか直前で身を反らそうとすることすらできず、左上半身を消し飛ばされていた。


しかし、律もまた全身が消し飛んでいる。

全身から飛び散った血は彼の進んだ軌道を彩り、神秘で生み出された体が微光を放つように、月明かりに煌めいていた。


「b;t@本物t……!! 大嶽丸s6ud@h<mdm暴走dqoptet@滅2@s警戒x;we.大厄災……!!」


半身を失った鬼神(きじん)はとっさに右腕で払うが、そこに律の体はない。胴体をすり抜けた後に、律がここにあると決めて質量を持った左手で掴まれてしまう。


"神威流-壊拳:連撃"


鬼神(きじん)を捕らえた律は、距離を取ることもできなくなった彼に対して、ない体を破壊しながら殴りかかる。

それは八咫を渦巻く嵐を巻き込んでの、大気を荒れ狂わせる環境を変えるような連撃だ。


もちろん、先程半身を吹き飛ばした、至近距離で一点集中させている技よりも大味であり、簡単に消し飛ぶことはない。

だが、まともに食らい続けた鬼神(きじん)は、少しずつ硬質化した部分を剥がされていった。


「s@4tdwe.Z……!! 我k94i<qq@身体能力t@3.q@:q@se4ki<up@bbjw@圧倒的ukq@Z……!? b;t@3soywErk均衡をqmz4柱……!!」


ついに顔の装甲を剥がされた鬼神(きじん)は、律の攻撃の勢いも利用してどうにか彼から距離を取る。

彼は巨体でひたすらに丈夫であるため、半身を失い、装甲を剥がされてもまだまだ動けるようだ。


赤い装甲を上塗りするように、全身から血を流しながらも、折れた脚で空を蹴ってさらに上空へ。

律を見下ろすような位置から残った右腕を構えた。


「コノ、()ゴと……沈、めル……!!」


"椿説弓張月"


すると、その右腕に現れたのは紅い弓。

不気味に脈打ち、夜空に浮かぶ月のような形でどんどん大きくなっていく巨弓だ。


そして弓に番えられているのは、薄っすらと透けて月を映している、これまた巨大で、震えながら大きくなっていく矢だった。


ついにまともに話した彼の言葉に間違いがなければ、本当に島を沈めるつもりなのだろう。

弓は彼の3メートル以上ある体を超えても巨大化を続け、2倍を超えても巨大化を続け、空を覆い尽くしていた。


「ぼくに、とくべつなのう力は、ない。

ぼくのほんしつは、ただ、折れないこと。だけど、どれだけいたくても、何をしても、折れないのだから。

どこまでも、神秘で強かできる。それこそ、大ばくはつが、おこるくらいに」


鬼神(きじん)が弓に力を込めるのと同じように、彼の下でそれを防がんとする律も、神秘を凝縮してその身を輝かせている。


その表情は至って平静。

矢が凄まじい音を響かせ、天を巻き込んで島を沈めようとしていても、強く輝く瞳でそれを見つめていた。


"ビッグバン"


矢が放たれた瞬間、律は一気に輝きを強める。

彼が島を穿つ矢に対して放ったのは、地上であればそれこそ島が消し飛ぶような、その遥か上空でも愛宕を囲む嵐を一度消し飛ばすような大爆発だった。




~~~~~~~~~~




既に多くの鬼神(きじん)が倒れていた頃。

美桜達もまた、崇徳魂鬼を封じ込め、確保することに成功していた。


もっとも、魂鬼の意識自体はまだある。

しかし、美桜の十二天将による結界で封印され、力もほとんど使い果たした魂鬼にはもはや抵抗などできない。


そのため美桜は、式神にその維持を任せ、紅葉と一緒に休息を取っていたのだが……


"神槍-アキレウス"


「っ……!! 何……!?」


空がまばゆく輝いたかと思うと、彼女達と結界の間に物体が落ちてくる。仮に張り詰めていたとしても、決して彼女達の目では捉えることのできない程の速さだ。


そして、巻き上がった土煙が晴れると、クレーターの中央にいたのは……


「むー……ちゃん……!!」


全身を激しく発光させている少年と、その手に握られている巨大な生首。すなわち、吹き飛んだ体を神秘で代用する律と、矢を防がれたあと逆に襲ってきた爆発、律の掌にとどめを刺された鬼神(きじん)だった。


それを見た美桜達は、信じられないものを見るような目で彼を見つめる。結界の端まで這ってきた魂鬼は、鬼神(きじん)の亡骸を見て悲しげに顔を歪めていた。


「……ぼくは、まだやることがあるんだ」


だが、当の律はそんな彼女達の様子を気にも止めない。

魂鬼をちらりと見たあと生首をその場に落とし、美桜に向かって虚ろな目で話しかけた。


「律、さん……ですよね……? 鬼神(きじん)を1人倒して、まだ何かやることが……?」

「……ぼくには、まだやることが、あるんだ。人が、食べられて、いる。滅亡も維持も、かんけいない。契約なんて、知らない。ぼくは、やらないといけないことが、あるんだ……」

「律さん……?」

「助けろって……弱いって……自分達で、苦しめたくせに……

正しいって……そう在るべきだって……僕は、まだ……こほっ。

ぼくには、やらないと、いけない、ことが……」

「っ……!!」


恐る恐る口を開いた美桜だったが、律がまともに返事をすることはない。

壊れたようにつぶやきながら、ないはずの脚を破壊し、またどこかへ向かって飛んでいってしまった。


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