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化心  作者: 榛原朔
滅びの章
2/432

1-少年の孤独

――数年前――

ここは……どこだっけ……?

いや、ここは俺の故郷……のはずだ。


倒壊した家屋。抉れた地面。

もう見る影もない、役割を終えてしまった……村だったもの。


「俺は……何で1人だけ生き残っているんだ?」


頭が痛い。何も思い出せない。俺は……


いや、せめて片付けて供養しよう。

何年かかっても。


そう心に決めて、俺はまず黒い水溜りを埋めようと足を一歩踏み出した。




~~~~~~~~~~




俺は毎晩、夢を見る。何年も何年も、同じ夢だ。


誰かと暖かい家の中で笑い合う夢。

その誰かと別れ、暗い森の中で何かを1人で追いかけ続ける夢。


それははっきりとしたものではなくおぼろげだが、どこか懐かしいような気がする。そんな、心をかき乱す夢。


その終わりはいつも『落ち着け』という声。

多分これは、俺の望みなのだろう。

廃村で孤独に生きる俺の、一番望んでいること。


誰かと暖かい家の中で笑い合いたい。

その誰かのために、狩りや農業をしたい。


家族が欲しい……と。




「ピィ……ピィ……」

「わかった……わかったから……」


俺は朝日が昇るより早く、ペットの小鳥――チルの鳴き声で目を覚ます。

窓の外を見ると、日はようやく森の縁に現れたところだ。

……早いな。


だが、今日は旅に出る予定の日だ。

廃村で迷惑をかける相手もいないので、焦ることはないが早い方がいい。


「ピィ」

「朝食だろ? 分かってるって」


チルが再度鳴き声を上げるので、俺は渋々餌を用意する。

畑で採れた根菜を刻み、貯水タンクから水を汲む。

水はそろそろなくなりそうだが、旅立ち直前なので中々にいいタイミングだった。


それらを小皿に入れて、テーブルに。

するとチルは途端に鳴き止み、空から降りてくる。

催促した割にはのんびりと食べるな……


そんなチルを横目に、俺も自分の朝食の準備を始める。

最近は狩りをしていないので肉はない。

というか、そもそも食料は残り僅かな野菜のみ。


それを塩で茹で、質素な朝食を摂る。

……昼はもっとまともなものが食べられるといいなぁ。


朝食が終わると次は洗面台へ。顔を洗い身支度を整える。

焦げ茶色をした、木の枝のような寝癖を撫でつけ、シワ一つない顔を洗う。


暗い感情も洗い流されるかのような爽快感だ。

自身を見返してくる琥珀色の目もいつになく明るい。


「……ふぅ」

「ピィ」

「チル、ちょっと待ってくれ」


俺は僅かな食料、衣類、水筒などをカバンに詰めていく。

少しの水や火種程度なら神秘で出せるため、荷物は少なめだ。


「よーし、行くか」


俺は、森のそばにポツンと立つ小屋から出る。

周囲にあるのは、俺1人では片付けられなかったような石造りの教会だけだ。


何で滅びたんだろうな……と、俺はこの数年に思いを馳せる。

気がついたら誰もいなくなり、廃墟になってしまった故郷を、1人でひたすら片付け続ける日々……うっ考えるのやめよ。

取り敢えずもうガレキは見たくねぇ……


気を取り直して、右肩に止まる青い鳥に話かけて勢いづける。


「おーし、出発だ。どんな面白いやつに出会えるかなぁ」

「ピィ」


俺は、出会いを求めて旅立った。



0話でも書きましたが、ここが1話なのでもう一度。

神秘≒魔法や魔力のイメージで書いています。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 感想しつれいします 主人公とチルのほのぼのしたやり取りが良いですね 故郷がどうしてこうなったのかが分かるのも楽しみです! [一言] ブクマと評価させていただきました 応援しています!
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