表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
化心  作者: 榛原朔
二章 天災の国
197/432

171-神の叫び、人の決意・中編

道真と影綱、茨木童子が、己のすべてをかけての最終決戦を始めた頃。


彼らの戦場に乱入していた海音と将門達は、土神の相-戸隠を2度も突き破り、道真の化身を2度も斬り伏せたことがなかったかのように変わらぬ激戦を繰り広げていた。


「ふはは!! 道真の化身を斬ったのには度肝を抜かれたが、流石に限界が近いのではないか!?」

「そこまで鈍ってはいないが、手傷が増えてきたぞ!!」

「……笑止!」

「そればかりになったな、天坂海音!!」


"不動護摩"


口々に海音を煽る将門の1人は、海音が刀を大きく振り抜いた隙をついて攻撃を仕掛ける。


背後には炎の化身、自身の体をもごうごうと燃え上がらせ、炎に触れずとも熱気だけで肺がやられてしまいそうな熱量をもって、化身と本体を合わせた4連撃を。


その攻撃は的確に海音の身を焼き斬る。

筋肉が熱で固まっていき、刀一本では対応しきれずに四肢を斬られてしまう。


"不知火流-漁火"


しかし、海音はすべて受けてしまう前に体勢を整えて反撃に出た。全身から流れ出る血を蒸発させながら、死にものぐるいで連撃を一点に集めていく。


炎と炎の化身を纏った将門の四刀、背後から狙ってきた風と風の化身を纏った将門の四刀、四方八方から襲い来る数多の植物の槍。その、すべてを。


「フゥゥー……!!」

「く、いつの間にすべて……!!」


攻撃を集め、その攻撃をしてきた将門達に隙を作ると、海音は素早く納刀した状態を作り大きく深呼吸をする。

そして、将門達が驚愕しているうちに……


「すべて……斬ります!!」


"我流-叢時雨:逆剥"


キン……という音と共に僅かに手元を煌めかせる。

すると、将門の背後にいる炎と風の化身が根本からかき消え、それに従って海音に向かっていた攻撃も消えていってしまった。


「くッ……!!」

「次は……体です!!」


攻撃をかき消された将門達は、無防備とまではいかないが、本気の一太刀を受けられるような状態ではないだろう。

続いて海音は、何名かの将門の体を斬ろうと刀を構える。


"天叢雲剣"


「させるかぁッ!!」


"滝夜叉"


"怨嗟-皇"


すると、標的になっていない将門達は堪らず援護に向かう。

天が捻れていくのを見据えながら、水流で作られた化身と自身の四刀、ドス黒い闇で作られた化身と自身の四刀を海音に向けた。


「くッ……!!」


天叢雲剣は大気中の水分によって、天で斬る。

そもそも海音は使い所を選んでいるため、本来ならばそう避けられるものではなく、防げるものでもない。

しかし、今回は周りからも将門が迫ってきていた。


これもまた、天叢雲剣と同じようにまともに受けてはいけないものだ。数を減らすことだけを優先して、まともに食らってしまうと、致命傷になるだろう。


そのため、海音はそちらにも注意を向けざるを得なかった。

化身を消され、技を消され、勢いのまま体勢を崩した将門達にかすらせながらも、ぐるりと回転して自身の周囲一帯をねじ切って防御する。


だが、海音が見ていたのは前方であるため、援護に入った将門達を完璧には捉えられていなかった。

天で的をずらすことで致命傷こそ避けていたが、手数が多く、着実にダメージを蓄積していく。


「ッ……!!」


刀は、持てる。走ることも、避けることも、できる。

だが、全力で刀を振るえるかと言われれば迷ってしまうほどには血を流していた。


もちろん、首や手首のような致命傷になりそうな場所は無事だ。しかしそれ以外に関しては、太もも、横腹、腕など至る所から血が流れ出ていた。


対して、本来ならば斬られていたはずの将門達は、損傷が少なかったためもとに戻っていく。

道真の化身と同じく、いくら分身でも完全に破壊されればしばらく使えないはずだが、今回は無傷だ。


それを見た将門は、目を細めながら唇を吊り上げる。


「……卑怯などとは言うなよ? 我は貴様を敵として、見くびることなく、己の力を最大限に発揮して戦っているのだ」

「わかっています。それに、いくら斬られても問題ありません。死んでさえいなければ」

「何……!?」


海音が納刀して全身に力を込めると、斬られて露出していた服の下の傷は、ピッタリとくっついて血を止める。

太ももも、腕も、横腹も、顔も、そのすべてが。


「天后はここにはいないはずだろう……!?」

「筋肉に力を込めれば、ある程度の傷は塞がります」


軽く目を剥いた将門に、海音は至って真面目な調子で告げる。回復は天后に任せきりだった彼女だが、自身のみ、戦闘継続のみに限れば、なんの問題もないらしい。

それを聞いた将門は、額に手のひらを当てて爆笑し始めた。


「ふふ、ふははははっ!! まともなやつはそんなことはしないぞ!? どこまでも頭のおかしいやつだ!! 脳筋め!!」

「常識ですよ」

「常識なものか!! だが、いいぞ!!

我の気が済むまでとことん斬り尽くしてくれるッ!!」

「……全員斬ります。決して皆さんの負担にはさせない……」


笑い終えた将門が化身をもとに戻すと、青いオーラを迸らせた海音と三度、激突した。




~~~~~~~~~~




同時刻。

他の戦場と同じく、鬼神(きじん)である崇徳魂鬼と戦う美桜達は、どこよりも安定した戦いを繰り広げていた。


彼女達の目の前にいる崇徳魂鬼もまた、非力な文官が手強い術者になったように、ただの下男が規格外の剣士になったように、その身を硬質化させてはいる。


しかし、彼女の場合は律のように幼い姿であることに加えて、中身も律や将門達ほどに完成されていない。

どこか暴走に近い形であったため、距離をとって戦う美桜達は危なげなく戦えていたのだ。


"崇徳院廟"


"泣血漣如"


もちろん魂鬼も鬼神(きじん)であるため、実力は折り紙付き。

今も髪で戦場を覆い、血塗られた社から溢れ出す血で、止めどない攻撃を加えている。


しかし、本業は剣士ではないため距離をとっており、数でも翻弄している美桜達には届いていない。

さらには、美桜が雷閃四天王らに貸し出していた式神が返ってきているということも大きく影響していた。


「どんどん式神が増えますね」

「もちろん〜。私はみんなに貸し出していたんだから〜」


冷静に状況把握している美桜と紅葉は、戦闘開始時と同じように、それぞれ桜と紅葉(もみじ)に乗っている。

しかし、その周りにいる仲間の数が大きく変わっていた。


まず、地上の屋根の上では、雷閃のところからやってきた貴人が駆けている。彼もまた術者なので、形代を使った妨害は目を見張るものがあった。


次に、雷閃が回収し、貴人が届けた炎に包まれた翼持つ蛇――騰蛇と蒼い鱗を持つ苔むした龍――青龍。

彼らは空が飛べるため、美桜達よりも近くを飛んで陽動、炎や木のブレスを吐いて攻撃などをしている。


まだ威力は抑えめであるが、それでも魂鬼の血や髪を防ぐには十分な威力だ。


この他にも、影綱のもとからやってきた穏やかな小鳥――六合に厳つい声をした金色の蛇――匂陳、酒呑童子の応急処置を終えてきた天后などもいる。


そしてもちろん、最初から美桜が所持している式神たちも。

全身を炎に包んだ不死鳥――朱雀は、美桜を守る最終防衛ラインになっており、死ぬようなダメージを受けても消えないことをいいことに、体を壁にしている。


地を駆ける白虎は、地上にある髪を噛み切ったり、大地を操って魂鬼に攻撃を仕掛けたりと大活躍だ。

動きの遅い玄武や老人の姿をした大裳も、天后と同じように安全なところから術で援護をしていた。


「あと2人なんだけどな〜……」

「揃ったら何かできますか?」

「……どうだろう〜? ひとまずあれは抑え込めるかもね〜」


ぼやく美桜に紅葉が問いかけると、悲しげに笑う美桜は地上で動きを止めている魂鬼を目で示す。


「う゛う゛、う゛う゛う゛ッ……!!」


"血書五部大乗経"


現在、美桜やその式神――十二天将に囲まれている魂鬼は、血染めの髪を球状に操って攻撃から身を守っている。

その合間から見えるのは、自身の指を噛み砕いて、その血で本に絵を描く姿だ。


最初から血の涙や爪で身を引き裂いて流れた血で戦っていた彼女だが、ここまでくると狂気を通り越していた。

だが、それにも当然意味があり、描かれたものは形を得て動き出している。


美桜のもとに集った式神に対抗するためなのだろう。

血の虎や鷹、猿、牛、獅子など様々な使い魔が生み出されていた。


「早く、止めてあげたい……」

「……しかし、全力で攻撃して彼女の防御を貫けるかどうか。

桜も紅葉(もみじ)も、血と髪に潰されていますし」

「式神の攻撃も防がれてるしね〜」


美桜が魂鬼からその周りに視線を移すと、魂鬼を守る以外の血と髪に蹴散らされる花びらと、同じく防がれている式神達の攻撃で、燃えたり潰れたりしている街、逆に迎え撃つ血の使い魔、次々に斬られて倒壊していく建物がある。


「……あら? 建物が斬られていく……?」

「はぁぁ……!!」

「カァァッ……!!」


"天羽々斬"


"天衣夢想"


今更ながら違和感を覚えた美桜は、顎に指を添えながら首を傾げる。するとその直後、建物を斬り刻みながら海音と将門達が突っ込んできた。


「え、えぇ〜!?」

「あ、あの方は……!!」


これには美桜も驚愕し、紅葉は恐怖で体を震わせる。

将門も魂鬼と同じ鬼神(きじん)ではあるが、その心の強さが違うのだから無理もない。彼女と比べて明らかに格上だった。


「む……!? ふふ、ふはははは!!

貴様、痣丸を持っているな!?」

「ッ……!?」


"天衣夢想"


すると、空を飛ぶ美桜と紅葉に気がついた将門は、5名を海音の足止めに残し、他2名は風の衣を纏って彼女達に接近し始める。


手前には朱雀がいるし、下からも式神達の妨害があるというのにお構いなしだ。


「邪魔だッ!!」

「ぐぁ……!! あひゃひゃ……やっぱ、無理だなぁ……」


彼らは炎、水、木などすべての術を斬り裂いて、朱雀も弾き飛ばし、瞬く間に彼女達の目の前に。


「くっ……」


"花の宴"


"紅葉の帳"


美桜と紅葉は、それぞれ桜と紅葉(もみじ)の壁を瞬時に生み出し守りの体勢に入った。

だが、それでも将門は笑みを崩さない。片方が風の衣を放棄し、もう片方の刀を足場にしたかと思うと……


"不動護摩"


背後に炎で作られた化身を生み出し、全身を炎に包み込む。

下で足場になっている将門の風も相まって、凄まじい火力だ。


いくら神秘であるとはいえ、所詮植物であり、血と髪のせいで数も少なかった桜と紅葉(もみじ)は、瞬く間に焼き消されてしまう。そして……


「よこせ、我の刀をッ……!!」


"天衣夢想"


将門が血走った目で叫ぶのと同時に繰り出されたかまいたちに、2人は為す術もなく地上に叩き落されてしまった。


「う……」


地上に落とされた彼女達は、瀕死まではいかないが息も絶え絶えだ。美桜を庇った紅葉は手足が少し変な方向に曲がっているし、斬られた場所からは止めどなく血が流れている。


もっとも、すぐ側には天后がいるためそう簡単に死ぬことはないのだが……


「返してもらおうか、我の痣丸を」

「っ……!!」


彼女達が治療されている間に、将門は美桜から刀――痣丸を奪ってしまう。


「美桜さんっ……!!」


痣丸を奪った将門は、その刀身を眺めるだけで美桜達を殺そうとしている様子はない。

しかし、ほぼ一撃で仲間を沈められ、その武器を奪い、近くにい続けているというのは誰でも危機感を覚えるものだ。


5人の将門に足止めされていた海音も、歯を食いしばって美桜達のもとへ駆けつけようとする。


「行かせぬ」

「邪魔をッ……!!」


だが、5人の将門達は足止めのために残されているのだから、もちろん彼女を行かせないように立ちはだかる。


式神達が美桜に気を取られているため攻撃の減った魂鬼も、場所を移動し彼女達の間に。

海音に向かって、血と髪の攻撃を繰り出した。


"血染め髪-蓮華"


最初は標的だけに的を絞ったように殺到していく髪は、将門達を超えて海音を目前にすると、花開くように拡散し、逃げ場をなくす。


残った5人の将門も、それぞれの化身をより一層迸らせ、焦っている海音を仕留めるべく一斉に刀を振るう。


"不動護摩"


"滝夜叉"


"尊星王"


"滅桔梗"


"牛刀-蚩尤"


彼らが纏うのは、それぞれ爆炎、激流、星光、大木、岩盤。

肺を焼く炎や体を引き裂く水流、正確無比な光の剣閃、生命力を奪う根に地を割るパワーなどをもって海音を仕留めにかかる。だが……


"我流-霧雨:神逐"


鬼神(きじん)2人による嵐のような大自然の猛攻を、海音は厳しい表情ながらも落ち着いて防いでいく。

力むことなく納刀状態になると、右足を前に出した構えから繰り出される霧のように細かな剣閃で迎撃する。


「う゛う゛、あぁアァあアぁぁあ……!!」

「……!!」


まず、真っ先に自身に牙を向いた血染めの髪は、さっきまで赤く光っていたのが嘘かのように散り散りに。

いくらか向かってきていた血の使い魔も同様に斬り伏せてしまった。


「ッ……!!」

「貴様は確実に……!!」

「殺すッ……!!」


しかし、相対しているのは5人の将門に加えて魂鬼、血の使い魔達と十人以上。将門が魂鬼の髪や使い魔を囮にしたこともあり、圧倒的な手数の差で海音の防御を超えてきてしまう。


水流はすべて弾くも、炎や光を纏った刀などは、海音の体を大きく斬り裂く。それ以外にも、炎を纏った刀が左横腹に、光を纏った刀が右肩、右太ももに、植物の根が全身の至る所に突き刺さっていた。


「海音っ……!?」

「海音ちゃんっ……!?」


これには、美桜に手を出されないように見守っていた貴人や治療をする必要のあった天后も、耐えきれずに声を上げる。

貴人は海音のもとに向かいながら形代を打ち出し、天后は変わらず紅葉の治療をしながらも余力を海音のもとへ。


素早い白虎や騰蛇と共に、将門を止めるべく駆けていく。

しかし、その心配は杞憂だったといえるだろう。


将門に斬られ、めった刺しにされた海音だったが、力尽きるどころか輝きを強めた目で将門を射抜くと、地面についていた刀を渾身の力で持ち上げた。


「この、距離なら……避けられません、ね……?」

「なん、だとッ……!?」

「はあぁぁッ……!!」


"善女龍王"


彼女が自身を勢いづかせるために叫ぶと、その瞬間、彼女を美しく輝く清らかな水が包み込む。


それは体に刺さっている刀を飲み込み、傷を塞いで血を止め、細身で優雅な水の鎧に。

背後には水でできた羽衣も揺蕩いていた。


"天羽々斬-神逐"


流れるような動作で刀を構えた海音は、目にも止まらぬ速さでそれを振るう。放たれたのは天を裂く神聖な水刃。

刀を突き刺した将門はもちろん動くことができず、近くにいたものも避けられなかったため、尽く斬り裂かれていく。


「ガァァァッ……!!」

「2名、真っ二つ……しかしまだ……」

「ぐぅ……!!」


密着していた将門は胴体から真っ二つになっているが、まだギリギリ息がある。復活できるかどうかは別にしても、安心する訳にはいかないだろう。


距離があり傷が浅かった者も含め、確実にとどめを刺すべく海音は続けて刀を振るった。


"天叢雲剣-神逐"


天羽々斬時に刀に纏わせていた水は消え去り、今度は大気全体が揺らぎだす。まだ無事である将門がいる場所を重点的に、水分が動き、天がすべての将門を捻じ斬っていく。


「グアァァァッ……!!」

「はぁ……はぁ……」


流石に膝をつく海音の視線の先には、天叢雲剣の余波で多くの髪を失い、守りが薄れ、無防備に転がっている魂鬼。

そして、痣丸を手に薄笑いを浮かべる将門がいた。


最後の分身は自身の手で始末したらしく、痣丸は怪しく輝き、彼の顔に黒い影を落としている。


彼の背後にはまだ座り込んでいる美桜と紅葉がいるが、痣丸を奪ってしまえばもう用はないらしく、気にも止めていなかった。


「死ななければ死なない……などと言うのだろうな、貴様は。

決着をつけようか、天坂海音」

「望むところです、悪七兵衛将門」


将門が背後に禍々しい光輪を輝かせながらそう言うと、海音もそれに応じて立ち上がる。

水で形作られた羽衣は、将門の光輪に対抗するかのように神々しく。


彼らは、魂鬼や美桜達を放置して激突し、再び斬り合いながら去っていった。残された美桜達は、起き上がって再び叫んでいる魂鬼を見やる。


「っ……私達は、あの子を……」

「いやだ、いやだ、いやだァアぁアあアァあぁあァあ……!!」


海音の攻撃で多くの髪を失った魂鬼だったが、彼女が力を使う限り尽きることはない。

髪は再び長く伸びていき、顔を引き裂いて血の使い魔を生み出していく。


その上刀は奪われ、回復したとはいえ紅葉も重症を負い疲労は溜まっている。彼女達の表情は暗かった。

しかし……


「ここだよ、因幡くんっ」

「わぁ! 美桜、ようやく出会えた! こっちこっち! 

縁結びの白兎大明神から、式神のおとどけだよー」

「因幡ちゃん! 

ありがとう、これですべての縁は繋がった……!!」


いつの間にか姿を消していたロロと共に、全身真っ白い少年――白兎大明神がやってきたことで、表情は一変した。

彼が美桜に向かって投げたものを受け取り、力強い目を宿して立ち上がる。


"招来-十二天将"


彼女の周りには、輝く十二枚の御札が浮かぶ。

さっきまで回復していた天后や立ち尽くしていた貴人、白虎は消失し、それぞれの御札の背後に朧気に。


「刀は失ったけれど、陰陽師の美桜として、あなたを止めるわ! 崇徳魂鬼!!」


すると、同じく立ち上がった紅葉も、薙刀を片手に柔らかく微笑む。その立ち姿は力なく、儚げだったのだが、段々と体を硬質化させていき、細く柔らかくも力強い優美なフォルムになっていった。


"本能解放(リベラシオン)-鬼女紅葉"


「わたくしは丈夫を取り柄としていませんが、己のすべてを振り絞ります。陽動にでも使ってください、卜部美桜」

「了解〜!」

「アァアああぁアあぁァァアぁぁあ……!!」


海音と将門の最終決戦が始まってすぐ。

血染めの髪を振り乱し、血塗れの使い魔を操る崇徳魂鬼と、美しく硬質化した全身という鎧を持つ鬼女紅葉、すべての式神の力を取り戻した美桜もまた、愛宕で激突した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ