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化心  作者: 榛原朔
二章 天災の国
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間話-始まりのひと、終わりのひと

かつての文明で、獣は人間の下にいた。

彼らは家畜だったり、見世物だったり、ペットだったりと様々だ。


しかし総じて自由がない。

誰も彼も、人の世界で息苦しく生きていた。


あるものは、故郷を追われた。

木々が薙ぎ倒され、森がなくなり、川が枯れた。

安心できる住処は失われ、食料もなかなか調達できなくなった。


彼らは飢える。しかし、それに耐えかねて人から食料を奪えば、どこまでも追ってきて命が奪われるか、首輪を付けられて自由がなくなるかだ。どこにも救いはなかった。


またあるものは、生まれた時点で自由だけがない。

食料は潤沢。寝床はふかふか。

捕食者はおらず、恐怖とは無縁の楽園だ。


だが、そんな彼らの未来はもう決まっていた。

どのように生きようが、最後には食肉になる。

捕食者はいない。しかし、それはすでに彼らが死んでいるようなものなだけだ。


見世物も同じく。

唯一希望があるのは、人間の家族に近い存在になることができるペットだが、結局そこに彼らの意思はない。


その幸せは、本物なのだろうか。

人間が自由に生き方を選ぶ中、彼らが見るのは同じ景色ばかり。


善い人と巡り会えればいいが、そうでなければ決して幸せにはなれない。彼らはどこまでいっても人間頼りだ。

恨むものがいても、おかしくはないだろう。


それが、神獣。それが、魔獣。


では、人は?

人に殺されそうになった人は、どうすればいい……?




あの日、天から数多の光線が降り注ぎ、世界は崩壊を始めた。地は裂け洗われ、一部の人々は、世にも恐ろしき異形へと変化した。しかし、人は人だ。


隣人に否定され、友に否定され、恋人に否定され、親兄弟に否定され。それでも自分は人間なんだと、そう叫ぶ。

たとえ人を殺すことになっても、己こそが人であると……




神獣は既に強く。鬼人は未だ弱く。

力のある神獣は人の形を取れるようになり、鬼人は異形へと変化する。


我は動物。我は人間。

我は神獣。我は鬼人。

我は……人。我は……獣。


――そうか、これが人間か。


――そうだ、それが人間だ。


――なんと美しい世界だろうか。


――なんて残酷な世界なんだ。


始まりの日に。終わりの日に。

神獣という擬似的な人が生まれ、鬼人という真性の人が死んだ。




幾ばくかの生命の立場が逆転した。

方やすべてを失い、方や今までの分を得た。

しかし、今までもこれからも、何1つ失うことなくそのすべてを得る者もまた……いた。


不条理である。


不合理である。


不平等である。


理不尽である。


……苦しい哀しい腹立たしい許せないどうかしている会いたい会わせて痛い壊れるどうにかしてやりたい戻れ壊れろ奪ってやる奪わないで怖い生きたい殺してやる……殺して、くれ。


数々の叫びに、光は気が付かない。

空想の如き力に驚き、異常に怯え、それでもひとまずは……と脅威に立ち向かう。


しかし、それらもやがては静まり、力に慣れてひとの元へ。

何故か争う人々に手を差し伸べる。


『さぁ、我に従え。人であり、神獣である……この我に』


――てめぇは俺らを見捨てただろうが。

人のままで、だが俺らよりも人とかけ離れた化け物が!!


『……ふむ、ならば仕方がない』


――ああ、そうだ。それでいい。


彼らは人で、彼らは獣。

不平等なこの世界で、居場所がほしければ敵から奪う。

人であることを否定された彼らは、もう止まれはしない。




~~~~~~~~~~




燃え盛る屋敷の中で、森の中の屋敷の中で、彼らはそれぞれかつての約束を思いだしてつぶやく。


『――ここからは、神の時間だ』


これで間話は打ち止めです。

投稿再開は早くて2月、遅くても3月になるまでに。

もし病気とか怪我とかしても、4月までに二章完結できるように頑張ります。

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