11. 意味不明の怒り
――その後しばらくして再び陛下から王城への呼び出しがあった。
「アレクサンドル殿。先日はシュカ領と他の地域の水害対策への尽力に感謝申し上げる。おかげで国内の他の地域でもダム作りが着々と進んでおるよ。これで水害に苦しんでいた民も救われるであろう。」
相変わらずふくよかな陛下は、謁見後すぐにアレクに感謝の意を表したけれど。
まだシュカ領のダムの件からそんなに日にちが経っていないのにも関わらず、また呼び出しをするということは何かまたお願いがあるのかと私は身構えた。
「実はな……。国内の各地で疫病が流行っていると報告があり、どうかまたアレクサンドル殿のお力をお借りしたいと思ってな。」
「疫病ですか……。」
「初めに流行したのはカビルの街なんだが、それから色々な地域で同じような疫病が広がりつつあるそうなんじゃ。死者も増えてきており、どうかこの王都まで広がる前に何とかして欲しいのだが。」
この陛下、結局『民のため』って言いながら保身の為なんだ。
水害対策も、『国が民のために対策を行った』っていう実績とシュカ領でとれる穀物のためになんとかしたかっただけなんじゃないの。
なんでもかんでもアレクに頼めば何とかなると思って……。
アレクだって魔法を何でもかんでも無闇矢鱈に使える訳じゃないのに!
「分かりました。それでは疫病の広がっている地域へ行って治療をしてまいります。しかし、なにぶん範囲が広ければ時間もかかり、しばらくの間は王都に帰ることはできません。他の依頼があったとしてもきっと受けられないでしょう。宜しいですか?」
アレクの魔法にも限りがあるから、各地で治療をしていれば他の依頼など受ける暇も余裕もないだろう。
そう陛下へと問いかけた。
「仕方あるまい。今は疫病の広がりを抑えることが最優先じゃ。どうか頼んだぞ。」
なんだか段々とムカムカしてきた。
「ここの人たちはアレクの魔法を頼り過ぎだよ。少しは自分で何とかしようと思わないの。」
口の中で声にならない呟きを吐き捨てたら、傍で控えていたジャンが不思議そうな顔をして首を傾けながらこちらを見た。
王城からの帰りの馬車の中、ジャンは今回の依頼についての予定をアレクに色々聞いたり手配について確認をしていたが、私は無言で外を見つめていた。
「ユリナ。どうした?気分でも悪いのか?」
「大丈夫。」
怪訝そうな顔をしたアレクが声をかけてきたけれど、自分の中の怒りをどうしたら良いか分からずに、つい素っ気ない返事をしてしまう。
アレクはジャンと目配せをして、その後は邸に到着するまで二人は声をかけて来なかった。
私も目をつぶって寝たフリを決め込んだ。




