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トニ「光が闇を照らしたらとには舞い戻る」

タイトルはトニのTwitterの発言より転載。


『光が闇を照らしたらとには舞い戻る』


 それは、この世界がまだ魔王によって虐げられていた頃の物語。



 かつて世界は『完璧淑女の神トニ』が魔王によって封印された事により、深淵の闇に包まれていた。

 空は常に暗がりに閉ざされており、人々は何となくスッキリしない暮らしを送っていた。


 そんな中で『創造神NAN-A』から神託を受けた勇者ジラは、自身の持つ状態変化の魔法を駆使しながら旅を続け、信頼出来る仲間たちと出会うことになる。


 皆を導く賢者、プランデッリ。

 獣人族の少女、ピサロ。

 闇に潜むくのいち、ハツメ。

 世界最強の剣士、アレスロ。

 流音の魔法使い、ルイフォン。

 

 彼女達は長い旅路の末、やがて魔王の城へと辿り着く。

 しかし。


「魔王ってどんな奴なんだ?」


 ジラが首を傾げて尋ねるも、誰も答えることが出来なかった。


 そもそも、魔王を見たことがある者は一人としていなかった。

 話に聞く限りでは、その姿は鮮血のような赤く禍々しい様相をしているらしい。

 膨大な魔力を持ち、1000年もの長い時を生きていると聞く。


「……って事らしいけど。詳しくは私も分からないわね」


 この世のあらゆる事象を知ると言われるプランデッリですら、伝え聞く話を教える事しか出来なかった。

 創造神もトニを救えば平和な世界が訪れる、としか神託を下しておらず、ジラ達は魔王城の入口で途方にくれてしまった。


「とりあえず、中に入りません? ここに居ても仕方が無いですよ」

「ピサロも賛成ですますよ!」


 魔王を倒そうにも、その姿が分からないのではどうしようも無い。

 ハツメとピサロの提案で、とにかく誰かに出会うまで中を探索する方針へと切り替える事にした。


 およそ一時間ほど。

 城の中を歩き回ってみたものの、人はおろか生き物の影すら見当たらなかった。

 ただ異様な臭いが立ち込める空城の中、最後の部屋の前へ辿り着く。

 大きな扉。謁見の間と見受けられるそこは、王が鎮座(ちんざ)するに相応しい雰囲気だった。


「後はここだけだね。さて、鬼が出るか蛇が出るか」

「うーん。出るなら魔王じゃないのぉ?」


 意気込んで剣を逆手に構えるアレスロに、いつも通りのんびりした口調でルイフォンがツッコミを入れる。

 何となく緩んだ空気の中、ジラが巨大な扉を開けた。


 途端。何かが腐ったような悪臭が辺りに広がり、全員が口元を隠す。

 しかしそこには誰もおらず、代わりに小さなテーブルと、ガラスの器。

 そして一つの赤い実が置かれていた。


「アレはまさか!?」


(何故か)その姿に見覚えのあるジラが叫ぶ。

 何でこんな場所にあるのかは分からないが、あの形は間違いない。


 ヴィオラ学園名産、ヴィオラトマト。

 苦味が強く、1000年熟成させると食した物に膨大な魔力を与えると言われる果実。

 ちなみに勝手に食べることは違法とされている。


「……え? ちょっと待って。まさか魔王って、アレの事!?」

「ていっ!」


 アレスロが得意とする大気操作の魔法で臭いを閉じ込めると、全員揃ってそのテーブルへと近付いた。

 そこには間違いなくヴィオラトマトが置かれており、その横には小さなメモが添えられていた。


『トニのもの。食べたらダメ!』


「……おーい。もう1000年経ってるぞー?」


 虚空に向かってジラが呟くと、世界の闇を切り裂いて鮮やかな光が世界に降り注いだ。

 そして光の階段を降りてくるようにゆっくりと、『完璧淑女の神トニ』が姿を現した。


「あら、ありがとうございます。これでようやく念願が叶いますわ!」


 いそいそとヴィオラトマトに手を伸ばすトニ。

 その手を、プランデッリがおもむろに掴みあげた。


「えーと……現行犯ですね。警察に行きましょうか」

「はっ!? しまった!?」


 こうして、世界に再び平和が訪れた。

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